P55 お釜の中の炊きたての真っ白なごはん。

 その一部がわずかでも茶色ければ、

「あ、焦げてる。」

 それが、日本人の、加熱した食品の色に対する捉え方の基準だと感じます。


 パンで育った欧米の友人たちは異口同音に、

「パンはね、焦げる寸前ぐらいが一番おいしいんだよ。」

そう言います。私もそう思っています。


 我々日本のパン屋の商い。

「一部の例外(札幌など)を除いて、都会ではしっかり焼いても売れるけど、地方へ行くほどよく焼いたものは売れない。」

そう言われ続けてきました。


 さて、ここ静岡で開業することになった私の店。どうしましょうか?

自分の感じる美味しさを基準に、みーんなしっかり焼いちゃうことにしました!

このあたりでは一番焼いているパン屋かもしれません。「黒いパン」と呼ばれることもあります。その「まるで焦げている色」に閉口して、二度と寄りつかない年輩のお客様もあります。地域の嗜好に合わせた商売をすれば、もっと売れるのかもしれません。

 

 でもね、

 でもね、


そんな「黒いパン」を、

「どこよりもおいしい。」

そう言って下さるお客様もいます。そんなお客様のおかげでうちの店は成り立っています。

 だって、パンを買う用のある人以外の通行人が、せいぜい一日に3人ほどしかない道路に面した店なんですから。 パン衛門