P43 長い間、フランスパンを焼く仕事に携わってきた分、勤めた店ごとにさまざまなレストランと取引がありました。パン屋の安サラリーではすべての店を訪れるというわけにはいきませんが、厨房にいながらにして、評判の良いお店の力量やこだわりを感じるシーンはあるものです。


3日分、中には一週間分のバゲットをお買いあげ。それを冷凍して必要な分だけ焼き直して使うところ。


「あなた達パン職人さんの仕事を切り売りするのは忍びない。すべてが完結しているモノをぜひに。」

と、かたくなにシャンピニオンだけをお使いになるお店。


ランチで使う分と、ディナーで使う分を、午前と午後二度取りに来られるレストラン。


パンを管理するフロアのスタッフやソムリエがパンを大切にしてくれるところは、まず間違いなく評判の良いレストランのようです。

中には、パンを取りに来られる折、前日のお客様がとてもパンを褒めていたことを必ず伝えてくれるところもありました。
「フレンチのお店には、お客様は大枚はたいて、もてなしと料理の非日常を求めて来られるものです。それなのにパンを褒めるというのはよほどのこと。厨房のコックたちが悔しがっていましたよ。」
そんなことをニコニコ話せるオーナーの器量と、向上心あふれるキッチンの活気を感じたものです。 パン衛門