中学2年の女の子がひとり、職場体験をしにやってきました。「せっかくの機会だし何でも聞くといいよ。どんなに忙しくても耳と口は空いてるからさ。」
「ええと、ええと。パン作りに向いてる『人のタイプ』ってありますか?」
「そうだなあ・・・。たとえて言うと、小さな子と長い時間遊んであげられるような人かな。」
「言葉で自分の気持ちを伝えられないぐらい小さな子供たちを、心地よく過ごさせてあげるにはね、こちらが五感を働かせて、何をして欲しいのか、どうしてほしいのか、ずっと見ててあげなくちゃいけないよね。」
「はい。」
「そうして、思い通りに過ごさせてあげることができれば、むずがらずにニコニコしててくれる。まちがってもこちらのスケジュール通りに、思惑通りになんてさせてくれないんだよ。」
「ふうん。」
「パンは途中途中で、その色、艶、匂い、触感、弾力、さまざまな手段で、どうして欲しいかをちゃんと伝えてくれるんだ。それをきちんと感じられるかどうかが、その人の『感性』と『経験』。そして伝えられた要求に的確に答えてやれるかどうかが『技術』。覚えようとして身に付くものと、身に付かないものが、確かにあるのかもしれないなあ。」 ぱん衛門