お題;悋気

 

 

 

「・・・・・」


赤ん坊が乳を飲んでいる姿というものは とても可愛い。 それが我が子であれば格別である。


・・・のはずなのだが、高麗の軍神チェ・ヨンは 眉間にしわを寄せて その様子を見つめていた。


「・・・もう! その仏頂面、なんとかならないの?」
「生まれつき故無理だな」
「・・・・・全く」


つい先日、夫妻には四人目の子ヨンスが誕生した。
・・・妊娠前からウンス本人が疑っていた通り 子宮に病変があり、当初は ウンスと共に高麗での手術のエキスパートであるナム侍医が 帝王切開で子を出産させた後で 病変次第ではウンスの子宮ごと摘出するという予定であったのだが、ウンスが産気づく少し前にナム侍医が王族に呼ばれてしまったために それが叶わなくなってしまった。
そこへ現れたのが、ヨンスという名の若者である。 その正体は 今まさにウンスが産もうとしている腹の赤子が成長した姿であった。
産まれてくる子が将来『時の旅人』となることはウンスも承知してはいたが、まさか自分自身を取り上げるとは ウンスももちろんヨンス本人でさえも知るはずもなかったため、かなり驚愕したのだが 旅人ヨンスは母親仕込みの見事な医術を見せ 赤子の自分自身と母親の命を救ったのだった。


上の子供たち三人は自然分娩で産んだウンスだったのだが、残念ながらその豊かな胸元からは赤子の栄養になるはずの母乳はほとんど出なかったのだが、何故か帝王切開であった四回目のお産は違ったらしい。
貴族女性は自らの乳で赤子を育てることはほとんどない、と 最初の子ミギョンを産む前から 夫に言われていたウンスであったが、医員の仕事を止められないため完全に自身の母乳はむりだったとしても できる限りは飲ませるつもりだったのだが、残念ながらそれはできなかった。
それが 四人目にして 機会に恵まれたのだから(子宮摘出も同時だったために安静も長かったため時間もあった) ウンスが喜ばぬはずもない。


んくんく、と母親の乳を含む末息子は可愛い。 ・・・のだが、父親はどうも不満らしい。


「・・・イムジャ、赤子はいつまで乳を飲むのだ?」
「どうかしらねぇ? 個人差があるけど、一歳から二歳の間かしら」
「・・・そんなにか・・・」


眉間にしわを寄せたままのチェ・ヨンは ガックリと膝をつく。 まるでこの世の終わりかのような落胆ぶりだ。


「もう少し 無事にヨンスが生まれたことを喜んでくれない?」
「・・・喜んではいるぞ? ただ イムジャがずっと自身の乳で育てることに絶望しているだけだ」
「・・・・・」


どうやら『高麗の鬼神』サマは 自分のものだと思っていた妻の豊かな膨らみが 一時的とはいえ食料として息子に奪われてしまうことが我慢できないらしい。
それと ウンスの出産と手術をしたのが 成長した息子であるとはいえ、若い男であったのも不満だったらしい。


「・・・いつ 俺のものに戻るのだ?」
「・・・私の胸は私のものよ」
「・・・・・」
「我が子にまで悋気起こさないでよね」

「・・・・・ヨンス、母上の乳は父のものだからな。少しの間其方に貸してやるが、少しの間だけであるぞ」

「・・・貴方・・・」



四人目の子が生まれたばかりのとある夜、高麗の鬼神と名高い男と 天女とも評される医仙の名を持つ夫人が、すごく深刻そうな表情で こんな低レベルな話をしていたとは誰も思うまい・・・。






 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま  熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま  黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま  ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま  牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

 

 

 

 

 

 

打って変わって短い。 内容がないのでこれ以上長くはできなかった模様。

ウンスが悋気起こすほうがあると思うけど、これしか浮かばな(以下略)

 

屋根の上で話を聞いていたテマンやスリバンボーイズが 「ふ~、やれやれ」って肩すくめる感じも考えたのだけど スリバンボーイズの名前や口調がどうだったか忘れてしまっ・・・(ブランク長)