お題:『閨』の予定だったんだけど 『子供』のほうが近い? それとも『嫉妬』?

(結局どれなんだよ!??)

 

当ブログの読者さまではない方へ

設定は話の中で出てきますが この話はウンスとチェ・ヨンの息子ヨンスが主人公です。

ヨンスは ウンスと同じように天門を潜り 現代ソウルにたどり着いて ウンスの実両親ユ夫妻の養子になっています。 嫁はウンスの親友イェジン(医者)です。

愛娘の名前もウンスですが 紛らわしいのであんまり書かないようにしています。

 

 

 

 

 

 

 

「ママ~~~!! おかえり~~!!」


繋いでいたヨンスの手を離し、幼い娘は帰宅した母親の元へと駆けていく。
『普通逆では?』と言われることが多いが、ソウル郊外にあるユ農場では 父親であるヨンスが自宅で農場を営み(事業主はヨンスの養父であるユ夫妻であるが)母親であるイェジンが医師として近所にある医院を手伝っているため ごくお馴染みの後継なのだ。


高麗から『時の旅』を経て 現代の(血縁上は実の祖父母にあたる)ユ夫妻の元に落ち着いたヨンスと ウンスの大親友だったイェジンが結婚して五年、二人には 二人のキューピッドの生まれ変わりである『小さなウンス』が生まれて 家族で幸せに暮らしている。
ユ夫妻の養子となり 二人の所有する農園の今では実質的には経営者でもあるヨンスは、徒歩圏内とはいえ敷地外へと通勤しているイェジンよりも 未就学の娘と過ごす時間は必然的に長くなるため、こういう時は 完全に敗北するのだ。


「ただいま」
「おかえり 奥さん」


駆けだした『小さなウンス』を抱き上げて戻ってきた妻に ヨンスも挨拶代わりのハグをする。
高麗武士であるヨンスの実父チェ・ヨンがもし見たら 眉を顰めるかもしれない仕草だが、彼は元々父親不在がちの家で 下の姉ヒソンと母ウンスにフェミニズムを叩きこまれて育っているので 現代に順応したというよりも元々の性質であったようである。
さすがに幼いとはいえ育ってきた娘の前では控えているものの、少し前まではハグだけではなくキスもしていたのは さすがに娘には内緒だ。


愛する妻と可愛い娘。そして優しい養父母。
実の両親には見せてあげられなかった妻子だけど、実の母親ができなかった親孝行を 彼女の代わりに今できている、と思う。
幸せだな、と思う。それは間違いない、のだけど・・・。


「・・・どうかしたの? ヨンス」
「いや? 別に」


ユ家の養子になった頃、(時を超えて高麗から現れたユ・ウンスの息子という)ヨンスの素性を話して信じたユ夫妻は ウンスの部屋を片づけてヨンスの部屋にしようとした。
それまでは いつか帰ってくると信じて、手をつけなかった部屋を。


だが、ヨンスが止めたのだった。
そして 代わりにその隣の客間として一応あった狭い部屋を 自室としてもらったのだ。
標準よりも背が高いヨンスに 狭い部屋は、とユ夫妻も言ったのだが、ヨンスにしても『実母の思い出』が残る部屋をすぐに片づけてしまうのは忍びなかったのかもしれない。


だが、そうしているうちに ウンスの学生時代の親友のイェジンが 留学先から戻ってきて ユ家に顔を出したことがキッカケで 最初は『飲み友達』から始まった二人の関係は いつの間にか恋人へと変わっていた。
トントン拍子に結婚が決まり、ウンスが江南に持っていたマンションで新婚生活を、とユ夫妻が勧めたのにも関わらず ヨンスとイェジンはユ家での同居を選んだのだ。
・・・残念ながら 増築がしにくい関係で 旧ウンスの部屋とヨンスのいる客間を合わせて大きな部屋にすることしかできず、ウンスの部屋はなくなってしまったのだが そこは『双子』と異名をとるほどにウンスと仲が良かったイェジンは、ウンスの好みを最大限に生かした部屋をつくり 新しい夫婦の部屋にしたのだ。


今では 二部屋つなげたせいで それなりに広い部屋になってはいるのだが、それでも部屋にはそぐわないほどに大きなベッドが 部屋を占領している。
大柄なヨンスでも身体を十分に伸ばせるように、という理由もあるが、ヨンスの実の両親 そして養父母にも共通する 『夫婦は同じベッドで』という決まりのためでもあるのだ。
・・・今は 愛娘と川の字なのだが。


「ん~、父上の気持ちが ちょっと分かったかも?」
「なによ それ?」


キングサイズのベッドのど真ん中で すやすやと眠る娘は 確かに可愛い。
が、ど真ん中で寝られてしまうと いくら器用なヨンスといえども 最愛の奥様とイチャイチャしたいけど いかんともしがたいのだ。


「父上がいるときは 両親の部屋には入っちゃダメだったんだ、うち」
「・・・え・・・?」


ヨンスが『父上』というのは 実父チェ・ヨンのことだ。
現代での父は 血縁上は祖父だが、養子に入ったため『父さん』と呼んでいる。


「それでも俺には甘かった、って 姉上は言ってたけど。 そういや兄弟のなかで俺だけ母親の母乳だったんだって」
「え~? 他の兄弟は?」
「三人のときには ほとんど母乳がでなくて、乳母がいたんだ。 俺の時は 三人とは年の差があったこともあったけど、母乳は出たケド体調もあんまりよくなくって産休を長めに取ったから ずっと見てもらえたんだって聞いてる」
「そうなんだ」


母ウンスの『三度の毒』の話は ユ夫妻にもイェジンにも 正確には話してない。
『実際目にした話じゃないから』と自分に言い訳しているけど、単に彼女が高麗で酷い目にあったことを伝えるのは 一つでも少ないほうがいいと思っているからだ。
母ウンスが ヨンスの出産前後に体調が悪かったのも 若い頃の毒のせいだと思われているが、現代のように機械での診断がつけられるのとは違って あくまでも推察にすぎない。
ヨンスが実母の母乳で育てられたのは(ヨンスにとっては記憶がなくても)幸せなことだったとも思うが、父チェ・ヨンには迷惑だったんだろうな、と ヨンスは今になって思い知ったのだ。


「子供はさ、母親が大好きなのは当然と思うし 分かってるんだけどね~。 どうしても イェジンには俺のことも構ってほしいな~って思うわけ」
「・・・・・」


呆れたような表情で夫を見るイェジンだが、実際のところ 耳が赤くなっているので 夫の溺愛もまんざらではないらしい。


「もう、子供みたいなこと 言わないでよ」
「奥方溺愛体質なだけだよ、父親似なもんで」
「・・・・・」


イェジン的には『チェ・ヨン=高麗の偉人』なのだが、ヨンスに話を聞くたびに そのイメージはどんどん崩れていく。


ヨンスいわく、『偉人』だの『鬼神』だの言われていた男だって 最愛の妻の前では 一人の男だったんだよ、ということらしいが。
そんな男に愛された親友が 誇らしくも羨ましくもあり、でもイェジンの目の前の夫も ほぼ同類らしいのだが。


ヨンスに拝み倒されたイェジンは 月に数回 平日の愛娘が幼稚園に行っている時間に早退して 夫と二人きりでデートすることになった、という話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま 熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま 黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま 牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま 

 

 

 

 

 

 

 

 

年越し準備をしながらなんとか完成 ゲロー