『子供だったから』と言い訳しても 言ってはいけない言葉って あると思う。
・・・なんて 今だって 学生な身分だし 子供なんでしょうけど。
今よりも ずっとずっと小さかった頃 今から思えば とんでもない暴言を吐いちゃったことがあった。
謝りたいのに 謝らせてももらえなくて、相手とはそれ以来会ってない。
毎日じゃないけど 今も時々 あの時のことを 夢に見る。
・・・彼は 今頃 どんな風になっているかしら? と・・・。

 

 

 

 

 

私の名前は ユ・ウンス。
ソウルの郊外にある ユ農場というところが 私の家。
おじいちゃん おばあちゃん、パパとママ、そして私、あと最近産まれた弟の六人家族なの。

パパは ユ・ヨンスっていうの。
格好良くて頭もよくて 運動神経もいい 私の自慢のパパなのよ!
だけど、住んでいた外国から韓国に帰って来た時に 事故に遭って 持っていたものや記憶すら全部なくしちゃったんだって!
だから 本当はすごくいい会社にお勤めできる能力があるけど そういう会社にはお勤めしないんだって ママが言ってたの。


ママは ソン・イェジンっていうの。
パパやおじいちゃんおばあちゃんは『黙ってれば大人しそう』ってよく言うわ。
怒るととっても怖いけれど 普段はよく豪快に笑ってる感じかなぁ?
あ、でも お仕事モードのときはキリッとしてるよ! お医者さんなの。
すんごく痛い注射の仕方と 全然痛くない仕方の 両方できるんだって!
だから とくに注射をするときは ママを怒らせない方がいいんだって パパが言ってた。
そして ママは『大きいウンス』の親友だったんだって!
だから おじいちゃんおばあちゃんのところに会いに来て パパと知り合ったんだって 聞いたの。


『大きいウンス』っていうのは おじいちゃんとおばあちゃんの娘のことなの。
私と同じ『ユ・ウンス』って名前なの。でも 私が産まれて 同じ名前になったから『大きいウンス』って呼んでる。
大きいウンスは ママと高校と大学が一緒で やっぱりお医者さんだったんだって。
でも ある時 真黒な恰好をした男の人に どこかに連れていかれちゃったんだって!
おじいちゃんもおばあちゃんも すごく悲しかったけど、『大きいウンスはきっと幸せに暮らしてる』って信じてるんだって。


そのお話を初めて聞いたとき ちょっと悲しかったの。
わたしは いなくなった大きなウンスの代わりなの?って。
皆 わたしじゃなくて 大きなウンスに会いたいの?って。
でも それは違うんだよ、って パパもママもおじいちゃんもおばあちゃんも 皆言ってくれたの。
皆大きなウンスのことが大好きだったから 生まれてきた赤ちゃんのわたしも 皆に愛されますようにって 名前を付けたんだって。
大きなウンスみたいに ある日さらわれちゃうようなことは 絶対にさせないって。


写真でみた 大きなウンスは 確かにきれいな人で でもすごく大きく口を開けて 豪快に笑ってた。
誰でも好きになっちゃうような ステキな人だったから さらわれちゃったのかもしれない、って ママがポツリと言ってたっけ。
寂しいけど 悲しいけど でも大きなウンスだったら 絶対連れて行かれた先で 幸せに暮らしているはずだって。


おんなじ名前だから ちょっと複雑な気持ちだったけれど、私も 大きなウンスみたいな ステキな人になれたらいいな、って思う。
・・・さらわれちゃうのは嫌だけどね。

 

 

わたしには 幼なじみがいるの。
パパの仲良しの キムのおじさまの息子で 同じ年のヨン。
男の子と女の子なのに おじさまとパパは 自分たちみたいに仲良くなれば、とか言って よく会いに来てくれたり 会いに行ったりしてた。
小さいうちは わたしのほうが背が高くて どっちかというと ヨンと遊んであげてるって感じだったけど、すぐにヨンも対抗してきた。


うん、本当に『対抗してきた』って感じ。
何をするときでも 自分の方が上手くできる、とか そういう感じで いちいちつっかかってくるの。
わたしのお家で うちのゲームで遊んでいるんだから わたしのほうが上手でも 普通だと思うんだけど、ヨンはそれが許せないみたいだった。
でも 特に勉強関係では ヨンは努力するのが嫌だったらしく、わたしのほうが勝ってたと思うの。
まぁ 勉強嫌いで努力嫌いなのに ある程度まではスイスイできちゃうヨンのほうが 素質あるんだけどね。
悔しいから そんなことは言ってあげないんだけど。


あれは わたしとヨンが 小学校に上がった頃のことだった。
それまでとは違って 小学校って 子供なりに 社交生活が始まる年齢だと思う。
わたしも 家のすぐ近所には 同じ年齢のこがいなくって ヨン以外では 同じ年齢の子と交流が あんまりなかったから、それが友達がたくさんできて とっても楽しい、と思ってた。


でも、週末のどっちかは(どっちも、というときもあった) キムのおじさまとヨンが遊びにきたりして 友達と遊ぶことができなくて わたしはちょっと不満があった。
しかもヨンは わたしが他の友達と遊ぶのを 嫌だと思ってたらしくって、文句をつけたりしたんだもの。
それで 言ってしまったの。 言ってはいけない言葉を。


「ヨンなんて 大っ嫌い!」


言っちゃいけない言葉だったと思ったのは 口から出てしまった直後だった。
あの時のヨンの表情は 忘れられない。


「あっ・・・」


『ごめんなさい』も言えずに クルリと身をひるがえして去ってしまったヨンの背中を 私は見ることしかできなかった。
そしてそのまま 彼に会うことはなかったのだ。


キムおじさまがうちに遊びにくるたびに 『ヨンも連れてきて』と何度お願いしたかわからない。
ヨンに謝りたいって 何度も何度も。
でも おじさまもパパも 困ったように笑うだけで 会わせてはくれなかった。
『時間が必要なんだよ』って。
『ウンスもヨンも どっちも悪い。だからこれは罰なんだ』って。


謝ることもできないのが 罰だって言われると それは納得するしかできなくて、自分で会いに行けるような年齢でもなかったから(キムおじさまのおうちは うちから遠かったし) ヨンに会うことはできなかった。


今も ときどき夢に見ることがある『初恋』未満の 切ない思い出 って とこなんだろうか?
忘れられないけど でも もう面影もおぼろげな ヨン。
いつか会えるのかな?
会えたら もちろん真っ先に謝るけど、何を話そうか?
・・・そんなことを 考えたりする。

 

 

 


「・・・帝国高校?」
「ああ。ウンスは成績がいいから ちょっと遠いけど どうかなって」
「でも・・・」


中学三年になった頃、パパに突然言われたのが 帝国高校への進学だった。
もちろん名前は知ってる 名門高校(っていうか幼稚園から大学まであるけど)で 財閥のお坊ちゃんお嬢ちゃんとか 全国規模で将来有望な優秀な生徒が集まってくる 私立高校なのだ。
それだけの人材を集めるだけあって 施設あすばらしいけれど その分学費も相当お高い学校なのに!


「学費は心配いらないよ」
「でもっ・・・」
「パパに任せなさいってば。娘にそんなこと心配させるほど 貧乏じゃないぞ?」
「・・・弟だっているし」
「大丈夫だってば。そうだなぁ、あの子が大きくなって学費が足りない位だったら ウンスにお願いするかも?」
「もう! パパったら!」


ウンスは ソウル郊外にある自宅農場からほど近い公立の中学へと通っていて そこでは断トツの一番の成績を誇ってはいたが、田舎でどんなにがんばっても 中央のレベルに追いつくのは難しいだろう、とは思っていた。
母イェジンや伯母の大きなウンスのように 医者になりたい、と 思ってはいたのだが、そのために ちょっと遠めの進学高くらいは射程に入れていても 帝国高校までは・・・、と思ったのだ。


「ウンスなら大丈夫だと思ってる。 まぁ いくつか受けるうちの一校だと思って受けてみれば?」
「・・・うん、そうだね」


田舎の中学では一番でも 国でも有数の進学校である帝国高校には 合格できるかなんてわからない。
試しでもいいか、なんて思ってたんだけど・・・。


気づいたら 高校編入試験ではトップの成績で合格してしまっていたらしい。


「・・・うれしいような 嫌なような・・・」


大半は財閥とかの御曹司・ご令嬢で しかも幼稚園からのエレベーター。
人間関係がっすっかり出来上がっているなかに 高校から編入なんて アウェーもいいとこのような気がする。
だけど 難関大学を目指す身としては 恵まれた環境なのは間違いなくて ウンスは 一人『よしっ!』と気合いを入れると 学園の門をくぐって行った。


「・・・お前が ユ・ウンス?」
「・・・ええ、そうですけど」


門から校舎までのアプローチを歩く途中で ウンスはそう声をかけられた。
見れば どうみても『ドラ息子』の類の御曹司(多分)が三人 ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべている。


「へぇ、アンタが ユ・ウンスか」
「・・・なんですか? いきなり」
「いや 別に? 高校からの編入試験でトップだった人の顔を確認しにきただけさ」
「そうそう」
「・・・・・」


編入試験の受験者は 相当数いたのだが、合格したのは ウンスを含めて五人だけだった。
だからといって 高校の中でも優秀な成績をとれるとは 彼女は思っていない。
目の前の どう見ても幼稚園からのエレベーター進学らしき人物もいるだろうが この高校はこの国屈指の学園なのだから。


「なんだよ その顔!」
「編入試験トップだからって ここでやっていけると思うんじゃねぇぞ!」
「・・・ご忠告どうも」


どうせ愛想よく微笑んだところで ヘラヘラするな、と言われるだろう。
ウンスは内心ウンザリしつつも それ以上彼らに何の反応をすることもなく 脇を通り過ぎようとした。


「おい! 待てよ!」


無視された三人組が なおもウンスに絡もうと手を伸ばしてくるのを ウンスは『いきなり暴力沙汰なんて起こしたらまずいわよね』と思いながら とりあえず躱そうとしたのだが・・・。


スッと彼女の背後から伸びてきた手が 三人組の手をパシッパシッと叩き、ついでに彼女の腰を引き寄せた。
ウンスは 父ヨンスから適度に護身術を習っていたため それなりに動ける自信があったのだが、背後の気配には全く気付くことができなかった。
呆然と引き寄せられたまま 身体を強張らせていると 背後の男は ウンスではなく 三人組へと視線を向けた。


「お前はっ!」
「・・・俺の婚約者に 何してくれるんだ?」
「え?」
「え?」


ウンスがその男の言葉に 弾かれたように顔を上げると、端正な でもどこか見たことがある容貌がそこにあった。


「やぁ ウンス。久しぶりだね」
「・・・ヨン?」
「ああ、ヨンだよ。 会いたかった」


背後から抱きしめられたまま ちゅ、とこめかみへと唇を落とされる。
それは 会いたくてでも長いこと会えなかった かつての幼なじみだった。

 

 

 

 

 


「チェ・ヨン?」
「ああ、母方のじーさんの養子になったんだ。字は違うけど 昔の大将軍と同じ名前って 恥ずかしいけどな」
「・・・昔も そんなこと言ってたね」


あれから あわただしく新入生としての行事をこなしたのだが、ウンスはほとんど覚えてはいなかった。
授業が終わるや否や 彼女の前に現れたヨンに さらわれんばかりに 二人きりになれる場所へと連れてこられる。


そうして ポツリポツリと 会えなかった間の話をした。


ヨンは 勉強も努力もしない男がウンスを幸せにできるわけがない、と実父キム刑事やウンス父であるヨンスに 散々しごかれて 運動も成績もとんでもなく上がったらしい。
それはそれでよかったのだが、ヨンが優秀なことに目を付けた母方の祖父が 養子になってチェ財閥を継ぐように、などと言って来て 悩んだ結果 それを受けたのだという。


「チェ財閥って・・・」
「そ。ここの理事長 うちのじ~さん」
「・・・もしかして だから 『学費の心配はいらない』ってこと!??」


ヨンの変化に大きな役割を果たしたヨンスならば 当然ヨンが帝国高校へ入学することも知っていただろうから 初めから再会させる気で ここへの進学を勧めたということなのだろうか。


「会いたくてさ、もう限界だったんだ 俺」
「ヨン・・・」
「ウンスは ウンスママさんみたいに医者になりたいって聞いたから 大学の学部はどう考えても一緒にはなれないだろ? せめて高校だけでも 一緒がよかったんだ」
「・・・わたしも 会いたかったよ ヨン」


言ってはいけないことを言ってしまってから ずっと会いたかった。会って謝りたかった。


それは叶ったのだけど、予想以上にいい男になっていた幼なじみに また改めてドキドキしちゃってる。


・・・すごく驚いたけれど(そしてキムおじさまとパパに からかわれた気もするけど!) 高校の三年間は なんだか勉強だけじゃない ドキドキな時間になりそうな気がする・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま 熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま 黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま 牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨンスの娘のウンスちゃんと 幼なじみヨン君の 甘酸っぱい(??)青春話笑い泣き

 

どうしても途中気に入らなくてずっと止まってたんですが滝汗

無理やり仕上げ真顔

 

いつも通りの『それから五年たった』の予定だったのですが 再会は高校にしたかったんだけど 十歳くらいで『大っ嫌い』じゃ アホすぎるかな~と 八年ほどに変更・・・

ヨン よく耐えたな・・・って思ったでしょ?

多分 ホームビデオとか ヨンスに見せてもらってたんだと思うよニヤニヤ

 

婚約者っていうのは 本当だと思います(笑)

ヨンスも チェ家じ~さまも 了承済みなんじゃないかな~?グラサン

 

ちなみに 超短文の容量を超えちゃっているのですが 治すのめんどry