勿論 上には上がいて 自分が一番だとは全く思わないけれど。

一応 名門と呼ばれる貴族の家の長男で
『王の盾』と呼ばれる 高麗の精鋭部隊の近衛隊の一員で
顔だって まぁ悪くはなく
身長だって 上から一二を争う方だ。

・・・なのに 何で 自分はモテないのだろう・・・?

 

 

 


「そりゃぁ、お前はパボだし」
「おいっ!チュモ!」


近衛隊の現副隊長であるトクマンは 同じく副隊長を務めるチョモに向かって そう突っ込んだ。
そんなことを考え始めたきっかけは 多分チュモにある、と トクマンは自覚している。


前隊長であり 現在は大護軍であるチェ・ヨンといい、現隊長であるチュンソクといい、近衛隊の彼の周りは 貴族にはあり得ないが『恋愛結婚』である。
心から好き合って結婚して 幸せそうな上司たちの姿を見ているせいか いつのまにか彼自身も 『恋愛結婚主義者』になっており 『素敵な女人をみつけて・・・』と夢見がちなことを言っていたのだったが、相方のチュモはとても現実的だった。
知り合いにあっせんを頼んで 見合いをし、その中の一人(数回見合いをした中の最初の人だったそうだ)と結婚したのだ。
真面目で地道な彼らしいと言えばそれまでだが、やや面白みに欠ける と内心トクマンは思っていたのとは裏腹に、チュモ夫妻は大変順調のようで 先日子供が生まれたのだ。


『・・・・・』


大事な仲間であり 好敵手でもある。
自分の方が背が高いために手も足も長いが 向こうの方が動きが早い。
隊長であるチュンソクの補佐を二人で務めていることもあり 互いのことは大体わかっている。
向こうの方が真面目であるが 自分の方が要領がいいと(あくまでトクマンは)思っている。
行動範囲もほぼ同じだし 一体何が違って 今こうなっているのだろう・・・?

 

 

 

 

チュモを前にしても 疑問は解消されるどころか深まるばかりで 俺は話し相手を変えることにした。
『何故女にモテないのか?』というのが目下の疑問なのだから 女人に聞いてみるのもいいのかもしれない。
ただ そういうことを聞ける相手は そういないのだけど。


「ふふふ、だからって それ 私に聞くの?」


上司である大護軍チェ・ヨンの奥方さまであり きさくで話しやすいという意味では間違いない医仙は そう言って笑っていた。


「医仙しか 聞ける相手がいません」
「またまたぁ」
「本当ですって! 職務のことで女官や武閣氏と話すことはあっても 俺なんて皇宮の兵舎暮らしですから 女人と全然親しくなれないんで」
「ん~・・・、トクマン君って モテそうなのにねぇ」
「いえ 全くなんです・・・」


そう言って デカい身体を縮ませてショボンとしている様子は それなりに母性本能をくすぐるさまであるが、残念ながら相談相手であるウンス以外の目に入ることはない。
決して存在しないはずの (垂れている)三角の耳とふさふさの尻尾が 見えるような気がするほどなのだが・・・。


「医仙・・・、俺って 隊長やチョモに比べて どこがどう劣ってるんでしょうか・・・」
「え~~? そうはいっても 二人とは タイプが違うし」
「『たいぷ』とは 何でしょうか?」
「え? ああ・・・、そうねぇ 分類?」


つい出てしまった天界語をごまかすように ウンスは『う~~ん』と首をかしげて悩んだ様子のあとで 呟いた。


「チュンソクさんは・・・そうねぇ、『落ち着いた大人の男』って感じじゃない? うちの旦那様が仕事を丸投げしても 涼しい顔で片づけてくれてるけど 実際はかなりの大変さだと思うのよ」
「あ、それは そう思いますっ! 隊長のお仕事は 俺とチュモが二人がかりでやっとなんとか、って感じです!」
「でしょう? その大変さを出さないけど 凄腕なのよね~! チュンソクさんって」
「それは納得です」
「そお? 納得してもらえたならよかったわ」
「ですが・・・、チュモは?」
「チュモ君?」
「はい。あいつは真面目だけど 小柄なのに・・・」
「う~~ん、それは・・・」


トクマンの言葉に ウンスは困ったように笑ってから言った。


「チュモ君はトクマン君から見れば小柄なんでしょうけど、実際 高麗では『大女』扱いされる私より 背が高いのよ?」
「え? そうでしたか?」
「ええ。 うちの旦那様も 私のこと華奢だの小柄だの 『何言ってるの?』って感じだけど、トクマン君はあの人よりも更に背が高いものね~、そんな風に思っても仕方がないか~」
「・・・医仙」


医仙が 女官たちと並ぶと下手すれば頭一つ違うほどに背が高いのには気が付いていたのだが、自分の中で『小柄(チビ)』と思い込んでいたチュモが 彼女よりも背が高いことには正直気が付いていなかった。


「だからね、チュモ君は 高麗の一般的な女人から見ても 背が低いなんて思わないってことよ」
「そうですね」
「だとしたら 真面目で有能だし 実直な近衛隊の副隊長ですもの。モテないわけがない」
「・・・じゃあ、俺って 何なんでしょう・・・?」
「トクマン君? 背は高いし 名門の家の出だし 近衛隊の副隊長だし、・・・なんでだろうね? もしかして 背が高すぎる??」
「え? それは・・・、俺が努力しても治りそうにないですね・・・」


背が高いのが美点の一つだと思っていたのだが、高すぎてもダメなのか? と トクマンは衝撃を受ける。


「だって 他は『正統派』だもの、モテない要素がないのに」
「医仙、その『正統派』とか?」
「ん~、たとえば 天界でのモテ要素は 『高学歴』『高収入』『高身長』だったのよ! そのすべてに当てはまるし顔だっていいから トクマン君は正統派だと思うんだけど~」
「医仙から見て 俺は 好ましい男ですか??」
「トクマン君、私人妻なんだけど そんなこと聞く?」
「あ、もちろん大護軍に敵うなんて思ってないですよ! だけど 一人の男として俺って どうなんでしょう・・・」


ウンスにとって トクマンは『愛すべき弟』みたいなポジションなのであるが、何となく本人には言いにくい。
だって トクマンは(というか近衛隊員は)初めの頃から彼女に好意的に接してくれていたけど、彼女が真っ先に出会っているのは『彼』であり 自覚は全くなかったが 彼以上の存在には誰だってなれないのだ。


「・・・あ」
「え? どうされましたか 医仙」
「・・・何となく わかっちゃった気がする」
「え??」


トクマンの目が期待にキラキラと輝いているのが分かるが、残念ながら 良い結果ではない。


「ねぇ、トクマン君」
「はいっ!」
「トクマン君は さっきから言ってるように 『正統派』だと思うわ。背が高いし 近衛隊の副隊長だし 名家の出だし 顔だっていい」
「ありがとうございますっ!」
「・・・でもね・・・」
「え・・・?」
「・・・トクマン君の身近に もっと正統派な男がいるのよ。・・・私が言うのもなんだけど」
「えっ!??」


トクマンは 目の前のバツが悪そうに笑っているウンスの表情を見て なんとなく分かってしまった。
彼の身近にいる 彼よりも名家の出で 彼よりも強く上司でもあり 顔もいい男・・・。
背だけは若干勝っていると思うのだけど それさえ『若干』だ。


「・・・分かった気がします・・・」
「トクマン君はいい男だと思うんだけどね、ごく身近に似た感じがいるから トクマン君のすごさが霞んじゃってるのかも・・・」
「・・・・・」
「・・・何かゴメン」
「いえ、医仙が謝ることじゃ・・・」


いくらその『超ハイスペック男』が彼女の夫だとしても それを彼女が謝ることではないだろう。
彼はトクマンの目標であり (決して口にはだせないが王よりも)忠誠を誓っている相手だ。
役に立ちたくて 近くにいたくて そばにいることが 自分を霞ませているのは 自分のせいだ。


「タ、タイプを変えてみる?」
「え~と、さきほどおっしゃった『分類』ですよね? 変えるとは?」
「あの人と 分類が一緒にならないようにするってことよ!」
「・・・はぁ」


大護軍と分類がかぶらないようにする、というウンスの言葉を トクマン自身がどう解釈したのかは謎であるが、その後 トクマンは 愛用の槍の前の持ち主の性格を真似するようになったらしく、女人とよく話す姿は見られるようになったのだが 結婚という文字からは相変わらず遠かったようである。


そして トクマンと二人だけで部屋にこもって それなりに長い間話し込んでいた、という事実だけを 夫にバレてしまったウンスは 心の狭い夫に 散々仕置きされたというのも お約束のようであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま 熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま 黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま 牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GW 花まつりに参加したかったのですが 全く思い浮かばす・・・

何となく使えそうなネタを思いついたのは 終わってからです・・・ゲロー

 

そして20時には間に合わないけど 21時なら・・・と思ったのに それすらあと数分・・・