「え?? アンタ、何言ってるの?」
「え? 姉上!?」


何気なく言った言葉に そんな風に返されてしまい、ヨンスの方が驚いて 発言者の姉の顔をマジマジと見つめる。
『顔は父親 性格は母親に瓜二つ』と常々言われるチェ家の末っ子ヨンスであるが、実は彼のすぐ上の姉である次女のヒソンも 相当に性格が母親似である。
『妻命』を公言している 一家の父親チェ・ヨンでさえも 母ウンスと娘ヒソンが口論を始めてしまうと その姦しさに逃げ出すと言われるほどに その特に『口が立つ』という点において 瓜二つなのである。
ヨンスも 母ウンスの影響を相当に受けて『母親似』なのは事実であり 『男のくせによくしゃべる』と父チェ・ヨンに言われているほどであるが、あくまで『男にしては』なので 口で姉ヒソンに敵うはずがなかったのだ。


「え? 本気だったの?」
「は? だから 姉上、意味がよく・・・」
「あらあら。本当に覚えてなかったのね~」


ヨンスの反応が素であり とぼけているわけではなさそうだと判断したヒソンが 自己完結したかのように頷く。
だが ヨンスは全く意味が分からない話のため、姉に食い下がって 話を続けた。


「そうね、あれは・・・ 私がまだ新婚で 近所に引っ越してきたばかりの、アンタは6歳とかの話かしら・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

ウンスは ヨンスを産んだ後の体調不良が長引いたため(どちらかというと 出産時に 腫瘍があった子宮を大きく摘出したのが理由である。しかも ナム侍医が間に合わずに 医員の修行はしたが専門ではない『旅人』ヨンスが執刀したのだから 尚更だ)、皇宮への出仕はずっと見送られていた。
だが ヨンスが幼児から少年と呼べるようになってきたころには 長姉ミギョンが 世子であるモニノ大君へと嫁いだこともあり 『医仙』ではないが 『世子妃の母』として 皇宮へと出かけることもあったのだ。


ウンスとしては (皇宮を出られない身になった)娘ミギョンに会いに来ただけだとしても、そこは 元々王妃様や大妃様の主治医であることから いつの間にやら王族女性とのお茶会になってしまうのが通例で、その日もそうであった。
ヨンスは 近所に引っ越してきたヒソンに預け(というか ヒソンが子守として実家に戻っていただけ)られており ウンスは女同士のおしゃべりと美味しいお菓子やお茶を 心行くまで楽しんでいたのだが・・・。


「医仙様! いらっしゃいますか!?」


怒号のような声が 王妃の住まう坤成殿の外に響いた。


「どうしたの? ウォン?」


駆け込んできたのは 近衛隊員となった長男のウォンであり、ウンスも部屋から顔を出し 気安く声をかける。
一方のウォンは顔色を悪くしたまま、おもむろに膝をつき ウンスに言った。


「つい先ほど チェ家屋敷のほうから伝令が入りました! 突然 厩でチュホンが大暴れし それが騒ぎになっている間に ヨンスがいなくなった、ということです!」
「えええ???」
「ヒソンが 母上に 一刻も早くお帰り下さい、と」
「・・・う~~ん? おかしいわね」
「は? 母上? そんな悠長なことしてる場合じゃないですってば!」


『末っ子のヨンスが行方不明』という、どう考えても緊迫した状態であるはずなのに、全く緊張感がなさげな母ウンスに ウォンのほうが呆れる。
ウンスは 小首をかしげると ぶつぶつ独り言のように言った。


「チュホンが暴れている騒ぎの間に ヨンスがいなくなった? そんなのおかしいわ! チュホンが暴れるんなら 何か理由があるはずだもの」
「母上! そんなことをおっしゃっている場合ではっ」
「あっ! そうよ! そうだわ!」


ウォンの怒鳴り声に近い声など 全く聞こえていない様子のウンスは 納得したように ぽん、と手を叩くと 大きく頷いた。


「母上? なにがお分かりになったのですか?」
「ミギョン、聞いて頂戴! チュホンが暴れている間にヨンスがいなくなったんじゃないわ! ヨンスがいなくなったから チュホンが暴れたのよ!」
「チュホンがですか? 何故です?」


世子妃となったミギョンは あくまでも優雅に、だが(母ウンスとの付き合いがウォンよりも長いだけあって)話を聞き出すのが上手い。


「ヨンスを追いかけるためよ! だから脱走したんだわ!」
「・・・確かに チュホンなら ありえますね・・・」
「でしょう!? あ、そうだ! ウォン!」
「は、はい! 母上っ」
「あの人は どこ!?」
「父上には 先にお話して 皇宮をお出になられました」
「あ、そう。じゃ あの人も分かってるわね~! 私はここで待ってるわ!」
「えええ!? 屋敷に戻られないのですか? 母上」
「だって あの人 こっちに連れて来ると思うし」
「そ、そうかなぁ・・・」


ウォンとしては 屋敷のヒソンから『母上に戻ってほしい』という伝言をもらっているわけで ウンスに戻ってほしかったのだが、ウンスは ヨンスのことを心配する素振りがあまり感じられない態度で ミギョンと連れて一度部屋へと戻って行った。
(王妃様の居室である坤成殿での話だったので 王妃様に状況を報告し 暇乞いをしていたらしく、礼儀としては正しいのであるが 母ウンスらしいとは思えなかった、と ウォンは思ったそうである)


「じゃあ、私は 典医寺で待機してるから! ミギョン、見つかったら報告させるから 心配しないで待ってなさいね~」
「はい 母上」


どこまで本音なのかはわからないが ウンスは長女のミギョンにそう言うと 典医寺へと向かったのだった・・・。


それから どれくらい時間が経過しただろうか・・・?


突然空が暗くなり ドカーンと近くではあるが おそらく皇宮の外に 雷が落ちたような音が響いた。


「・・・あら」
「どうかされましたか? 母上」
「ねぇ、ウォン。 今の 父様かしら? ヨンスかしら?」
「え? 母上??」


結局 『屋敷には戻らない』と言った母ウンスを 典医寺とはいえ放置しておくことはできず、ウォンが引き続き護衛を務めていたのだが 長男の心情を知ってか知らずか 母ウンスは暢気にそんなことを言う始末である。


「・・・父上じゃないですか?」
「まぁ ヨンスだったら これで居場所がわかっただろうし、父様だったら ヨンスを捕まえたってことよね!」
「・・・はぁ」
「よかった! すぐに帰ってくるわね!」
「・・・・・」


自分の母親のことを ウォンは知っているつもりであったが、それはとんでもない間違いだったようだ。
激動の高麗時代において 『鬼神』と呼ばれる男の妻を 長年務めているだけあって 母ウンスは実に肝が据わっているようである。


そして 本当に彼女の言った通り、ほどなくして 次男ヨンスを連れた父チェ・ヨンが 皇宮へと戻って来たのだった。


「おかえりなさい!」
「イムジャ、ヨンスが・・・」
「あれ、ヨンスだったの? じゃあ 力を使い果たして眠っちゃってるのね?」
「ああ」
「そっか。 チュホン、ヨンスがいなくなったから 探してくれてたの?」
「ぶるるるる!」


ウンスは 意識を失っているヨンスの頭を撫でるとすぐに 愛馬へと意識を向けたようである。


「え? ヨンスが抜け出したのではなくて さらわれたんだったの?」
「ぶるるるる!」
「そっか! チュホンのおかげで 助かったわ! ありがとう チュホン!」
「ぶるるるる!」


何度見てもウォンには謎なのだが、チュホンの『ぶるるるる』にしか聞こえない嘶きにも 種類があるらしく、母ウンスにはそれがわかるようなのだ。


「チュホンが目立つように嘶いたりしながら追ってくれた故 誘拐犯にはすぐに追いつけたのだ」
「やっぱり! ヨンスだけじゃなく チュホンもいなくなったって聞いたから そうだと思ったわ!」
「ぶるるるる!」
「チュホンは ヨンスの恩人(馬?)ね!」
「ぶるるるる!」


どうやら チュホンのほうも まんざらではなさそうである。


「・・・イムジャ、俺には何もないのか?」
「・・・貴方も ヨンスの親なんだから お礼を言う方だと思うんですけど?」
「・・・・・」


なんだか 『自分にも抱きついて礼を言って欲しい』と思っていたらしい男のアピールがあったようだが、思いっきりウンスにスルーされたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま 熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま 黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま 牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨンス誘拐事件(ただし 両親心配せず)真顔 兄や姉のほうが心配してくれてたよ編滝汗

(酷い両親なのではなく、それほどチュホンを信頼してたってことなんですがw)

 

ウンスの中では 『大人ヨンス』に会ってるからっていうのもあるんでしょうね~・・・。

あ、冒頭の ヒソンとの会話で ヨンスがその時のことを覚えてなかったのは ウンスがヨンスに『怖い夢でもみたのね~~』と のちのち洗脳したからです真顔

 

(はじめ書く気があったのだけど 超が取れそうなのでバッサリとカットゲッソリ

 

でんべさんが チュホン書け~~と言うので 当初予定になかったチュホンが活躍しました。

したがって 書ききれなかったのは、ヨンスは遊んでいるときに『母上のところに行こうよ!』と誘い出されて誘拐されたんですが、チュホンだけが気づいて脱走して追いかけた、という。

んで 母上のところに連れてってくれない、と大騒ぎして チュド~~ンと雷功(無意識)。

(馬車の後ろを 馬が嘶きながら追いかけてたら 目立つでしょうね~)

チュホンは 自分が救った、って自負があるから ウンスにお礼されてご満悦(笑)

ヨンは・・・ アナタもヨンスの親だから 助けるのは当然です真顔

(とかいいつつ 夜にご褒美があったかもしれませんグラサン

 

 

 

アベマTVのMTVでクイーン特集やってたので 見てたら、すっかり時間がすぎていた(始まってた) 『さらんさんのアメンバー申請時間』滝汗

教えてくれた でんべさんに感謝!ラブ

そして さらんさんに『可愛い』と言ってもらえて ちょっと調子にのってるカエルが 自分を出せとうるさいのであった・・・真顔 ださね~よ!てへぺろ