↓ ナショナルジオグラフィック公式日本語サイト より
アメリカのネバダ州で魚竜の新種化石が発見された。
最新の研究によると、海洋生物としては地球史上初めて、自分と同サイズの生物
をエサにしていたという。
この新種に相応しい学名、「タラットアルコン・サウロパギス(Thalattoarchon
saurophagis)」が選ばれた。
「トカゲ種を食べる海の支配者」を意味する。
研究チームの一員で、ドイツのベルリンにあるフンボルト博物館(自然史博物館)
のナディア・フレビッシュ(Nadia Frobisch)氏は、「全長は8.5メートル以上で、
およそ2億4400万年前の三畳紀の海に生息していた」と話す。
魚竜類は、恐竜時代の海洋に君臨していた海生爬虫類で、イクチオサウルス類
とも呼ぶ。
タラットアルコンの化石は非常に保存状態が良く、頭蓋骨、ヒレ、脊柱全体などが
発掘されている。
「このサイズの動物としては極めて異例だ」とフレビッシュ氏は話す。
化石の一部は1998年の段階で発掘済みで、当時、発掘最終日に発見された
恐ろしい歯の化石が研究チームを更なる追求へと動かした。
2010年、フレビッシュ氏の研究チームは再びネバダ州の発掘現場を訪れ、残りの
化石の捜索を始めた。
その結果、巨大な頭蓋骨とアゴの骨を発見。
「口の中は、鋭く巨大な歯で埋まっていた。相当なサイズの海生爬虫類を細かく
切り裂くことができたと考えられる」とフレビッシュ氏は話す。
↓ Chicago Tribune より
タラットアルコンは、現代のシャチやホホジロザメに似たタイプだったようだ。
いずれも、自分と同サイズの動物を狙う海のハンターとして知られている。
◆生態系の回復力
フレビッシュ氏は、「生態系が秘める回復力を示す好事例だ。極めて深刻な
大絶滅の後でも、生態系は新たなバランスを取り戻す」と、発見の成果を語る。
「タラットアルコンが登場したのは、地球史上最大の絶滅事件、ペルム紀
(二畳紀)末の大量絶滅のわずか800万年後だ。当時は、海洋生物の95%が
滅んでいる。その後、海は住人のいない広々とした場所となった」。
ただし、その状況も長くは続かなかった。
化石記録によると、すぐにさまざまな種が空白を埋めている。
この時期にタラットアルコンのような最上位の捕食動物が登場したとすれば、
比較的短期間で生態系の構成要素がそろったことになる。
海洋の生態系は、食物連鎖の下から上に向けて構築されるからだ。
つまり、最上位の捕食動物は、膨大な数の「エサ」の上に成り立っている。
「したがって、タラットアルコンの存在は、生態系の完成を意味している。構成要素
は違うが、現代の地球と同じパターンだ。生態系の構造自体はその後変わって
いない」。
およそ1億6000万年の繁栄の後、タラットアルコンや近縁の魚竜類は謎の絶滅を
遂げる。
魚竜種は今や存在しない。
「白亜紀が終わりに向かう頃、魚竜類はしだいに数を減らしていった。多様性も
失われて、最終的に1匹も残らず消えてしまった」。
爬虫綱魚竜目(Ichthyosauria)は、英名にもある様に、イクチオサウルス類とも
呼ばれます。
しかし、タラットアルコン・サウロパギスは、体長:2mで直径10㎝程の巨大な眼を
持つ種としてのイクチオサウルスとは、あまり近縁とは思えません。
↓ Wikipedia より イクチオサウルス復元想像図
復元図を見る限り、イクチオサウルスなどが持つ強膜輪(眼球を保護する薄い
膜状の骨)も有るのかどうか・・・?
魚竜の中には、体長:15mも有るショニサウルスのような種もいることから、現代
の海棲哺乳類やサメの生態的位置を占めていたのでしょうが、発見されている
種は少なく、体系的な研究は進んでいません・・・
なお、イクチオサウルス、イルカ、サメの様に、同じ生態的地位についた時、似た
ような形状に進化する事を収斂(しゅうれん)進化と云います。
参考記事:「モササウルスの新種=パンノニアサウルス発見:初の淡水棲」
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