最終的に、自分は50mを10秒台で走れるところまで回復した。
ジョギングだとちょっとバランスを崩すことはあるけど、全力で走っている方が体が安定していることにも気づいた。
結局思いっきり体に力を入れないと、本来の動きができないのは最後まで変わらなかった。
退院の日も午前中はリハビリだった。
「本当にありがとうございました」
泣きそう。
すると療法士さんは
「実は…最初に転院してこられてたとき、ここまで動けるようになるとは思ってなかったんですよ」
「え?」
「正直なとこ、若い方、特に30台前半でこのような病気で入院される方は年に2〜3人いるかどうかくらいです。しかも転院してきたときには、自力で歩いている方も結構いるんです。転院してくるときに、患者さんの情報が送られてくるんですが、リハ室でそれを知ったとき、これはやばい患者だなぁとちょっとざわついたんですよ」
「そんなだったんですか」
「そんなだったんです。実は。そこで基本的に重症の患者さんほど、リーダー格の担当者を当てるんですが、あ、僕こう見えても結構偉いんですけど、そういった人員で対応していこうということになりました。作業療法だけは若い担当者でしたが、それを私と言語の担当者、あ、あの子もリーダーです。で、カバーすることで進めていく計画になっていました」
「・・・」
言葉が出ない。
「なのでリハビリの計画書をお見せしたと思うんですが、退院までに杖で自立歩行、もしくは手ぶらで自立歩行くらいの計画しか立てていなかったんですよね。僕ももう何年かやっているので、ある程度最初の状態を拝見しただけでどのくらいの期間でここまでくらいの回復かな、という目処がつくようになりますから」
「それをここまでにしていただいて…本当にありがとうございました」
「いえ、あとは本人のやる気次第ですから」
握手をして全てのリハビリが終了した。