ある程度、先生の形相を見たときに覚悟はしていた。
しかしこうやって現実を突きつけられると、自分の体が想像以上にショックを受けているのがわかった。
「脳梗塞…」
「とりあえずもう今日から投薬治療するみたいだから」
「え?手術とかじゃないの」
「手術はしないらしい」
「そうなんだ」
「担当も神経内科になるって。その場で言われた」
「そうなんだ」
もはやそうなんだしか出てこない。
「画像見せられてさ。これです、ここですって言われた。もうこれ以外考えられませんっていうくらいハッキリしてるらしい」
「そうなの?」
「で、ここですって言われたとこを見ると、お父さんがが見ても、ここだなっていうくらいの」
「まじで?」
「で、ちょっと部位が特殊だったみたいだ。倒れた日にMRI撮ってもきっとわかんなかっただろうって。3日目くらいで診断が付いたのも運が良かったのかもな」
「…そう」
やはり脳梗塞の診断は覆りそうにない。少しだけがっかりしつつ、ほっとした。倒れた日に感じた自分の予想は当たっていたということだ。
しかし頭痛は感じなかった。どこが痛いのかと言えば、ずっと首と肩が痛かった。
倒れたときも痛くなったのは首だった。でのこのときは深く考えるのは無しにした。
とりあえず彼女に連絡しなくちゃ。それに会社にも。
自分はなんとなく会社よりも彼女に連絡してしまった。
「…脳梗塞だってさ」
しばらくの無言状態。どうしよう。
「とりあえずカラダ中検査してもらったら」
「…うん」
会社にも連絡をした。店長は予想外の病名に驚いたようだった。
「とりあえず治療に集中しろ、仕事のことは忘れろ」
「ありがとうございます」
泣くかも、と思ったが、別にそこまでの切羽詰まった感情は湧き上がってこなかった。
しばらくして夕飯が運ばれてきた。少しだけ口をつける。味、よくわからん。
それが精神的なものなのか、脳梗塞の症状なのかはわからなかった。
どっちでもいいから今日は早く寝たい。ずっとそれだけ考えていた。
家族が帰ると、入れ替わるように神経内科の先生が入って来た。