『母性』 湊 かなえ/著 | パンダの日記「パンダ日和」 by pandaosaco

パンダの日記「パンダ日和」 by pandaosaco

何が必要で、何が大切なのか――?
時に初心に立ち返り、自身の傲慢・慢心へ問いかける。
それが全ての糧となると信じて (C)Pandaosaco

 
 引きこもっていた年末年始に読んでおりましたよ。


お、重い……


 湊かなえさんの本を選んだ時点で、「重い話なのだろうな」とは思っていましたが、想像の斜め上の重さで、息苦しくなりました。


 自殺未遂を図った女子高生(娘)の、その置かれていた環境について、

母親は神父に告白する形で、当事者の娘は独白する形で、また母親のインタビューをみた第三者はその不自然さを語る形で、多角的視点で語られます。


 幼い少女のままに、一人娘で育った母親は、一人娘の母親になりました。

 無償の愛を与えられて育った母親ですが、その思考は歪んでおり、(過度なマザーコンプレックス)、全ての事をややこしくしていきます。

 自分の母親(娘にとってはおばあちゃん)を喜ばせる事を、何よりも優先させたいのです。

(但し、おばあちゃんはそんな事を望んではいない。
 無償の愛を与えられる穏やかな人です。)


 ある強い台風が襲った夜、おばあちゃんは、孫娘を助けるために、自らの命を犠牲にし亡くなります。

 これが母親の『理想の家』の崩壊でした。

 娘によって語られた、自身が行った虐待行為(気に入らないことがあると暴力を振るう事も)は、母親サイドから神父には決して語りませんが――…
 果たして無自覚だったのか?

 兎に角、この母親の、上っ面を撫でるように、神父にさえ媚びを売るように、選んだ言葉で語られる打ち明け話は、読む事がとてもしんどかったです。


 娘はこんな環境で、よくぞ素直に育ち、命を磨り減らし、頑張った。

 虐待にはいろいろな形があるけれど、それでも尚、母親に愛されたいと願う心理は、本当になんなのだろうと哀しくなります。

 『母性とは何か?』と思うより先に、『アイデンティティーとは何か?』と、憤りの中で考えました。


ちなみに、父親は、偉そうにするばかりで何もしない、情けない男。

 出てくる大人は、みんな自分勝手だったなぁ。

 女子高生の命が繋ぎ止められた今、母親は自分の罪に気付いているのかな?

 子どもが子どもらしく居られない事、これ、本当にダメですからね。

 てか、これを読んでも『母性』が何であるかの答えはでません。


 そんな風な、年始早々に、重いお話でしたよ。