「世の中にはあんまりいいことがなくて、それが普通でだからあんまり人生に期待してはいけない、って人を少しでもはっとさえたいじゃないか。そう思わないか?」
「残念ながら」
繭美はむすっとしていた
「まったく思わねえ」
伊坂幸太郎「バイバイ、ブラックバード」より抜粋。
伊坂作品のフツーの人が、その実それほどフツーでもない暴挙に出たときには、フツーの人なのでそれほど大仰な冒険譚にはならないんだけど、その小さな弾み車が、大きな大車輪をぐるぐる言わせるものに至る。
最初は「はっとさせたいじゃないか」くらいの、正直なスケールが、人を今と違うところに立たせる。