「もし、思いやりが愛なら私は愛です。
間違った道に入らないよう、正しい行いをするように手助けることが愛なら、わたしは愛です。」
「歌おう、感電するほどの喜びを!」より引用。
「そんなの認めないわ!」まるで反射的にアガサは叫んだ。
上の、おばあさんの言った言葉はアガサには重すぎた。
かつて、とてもたくさんの愛を語り寄せてくれた人を死別で失った感情を、彼女は許さないと同時に、愛おしく、かけがえがないことの裏返しに、愛について本当に咄嗟に、反射的に受け入れを拒否した。
こどもだし、で済ませるには、あまりに根源的な心持ちではないか。
いなくなるなんて思いもしなかった別れは起こったし、再びそれを語るものに出会う時に、それをそのまま鵜呑みにすることは、まるでいつかもう一度のかかえきれぬほどの悲観を請け負うことに他ならない。
じゃあ、どうしたらいいんだろう。
この本を読んでる最中に、当時の私は「このテーマに応える答えが、この物語には本当に向かえられるんだろうか」とひどく狼狽し、混乱し、動悸を覚えた。おざなりに、「人生はそういうものよ・・」みたいな、あってもなくてもかまわないような、ありふれた終わり方に誘導されるが為に、今この読書をしてるんじゃないのに、という焦燥が先に立った。
結論だけをいえば、この作品の納め方は実に素敵だった。ストーリーをなぞらえて、解説したって、あの感慨にはおよびもつけやしない。それほどに、私には人生の指針みたいなような「突破」がこの物語にはあった。
以来、私はものづくりの根幹に「童話じみていること」を底に流すことを良しとするように変容したんです。それほどにこの作品は、私にはマイルストーンでした。ブラッドベリのお茶目でチャーミングに人はいていいのだと言い添えてくれるような目線に、私は包まれたいと思ったんだ。