良い料理とは客とサービス、調理場、経営者の真ん中に浮かぶスープのようなものです。
まっすぐこぼれないことこそが健全であり、均衡を失ってどちらかに傾いてスープがあふれるようではいけないのです。本来お店とお客は対等な関係です。普段の人間同士の関係と同じです。」
土井善晴「一汁一菜でよいという提案」より
こうも続きます。
「食べ物は食べ物として差し出されている以上、安全で安心であることは当たり前です。
家庭では、そもそも子供たちが食べ物に疑いを持つことはなく、無条件で信頼しています。」
「何も言わなくても、親のすることはみんなお見通しだと思います。なぜなら、それまでにお父さんやお母さんが頑張ってきたおかげで子供たちは多くのことを身につけてきた。
だから気づくようになってきたのです。そして何も言わない方がよいことも、今もお父さん、お母さんが一生懸命してくれていることも、子供たちはちゃんと分かっているのです。」
常に美味しいものを食べる、のではなく、「飽きないで食べ続けられること」を大事にしようねと言い、食べるということが生きる時の秩序の最初であると説くこの本は、もはや哲学の書でした。