愛、ゆえに(お芝居”BIG BIZ”の感想) | アメブロなpandaheavenブログ

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(いつかの21世紀初頭のエッセイです)

 

大阪にいってきました。お芝居を見に行くためです。「BIG BIZ」というお芝居だったのですが、これには松尾貴史さんことキッチュですとか、ナイロンの松永玲子さんですとか、パンチの効いた役者さんがいらっしゃってるなかなか豪華なお芝居なんですが、まぁそこに「後藤ひろひと」さんという小太りの恰幅に、カイザーひげクルン!で高速なウンチクトークの上手な方が脚本・出演ででていらっしゃるというので、こいつは放っておく手なないぜ!とやけに気合い入りまくりまして、鼻息ムフーで大阪にいってしまいました。

もともとはまぁ地元の役者W山くんの貸してくれたビデオに、チョイ役なのに、どーしても見過ごせない芝居をやってるオジサマがいたなぁ、と気になってる程度でしたが、その脚本能力やら、どの芝居にあっても同じテンションの演技をしつつも、どーも飽きがこなくて、やーけに次に飛び出すものが期待しちゃえる豊かな「隠し玉」ぶりに、ムムム、ではひとつ生でみてやるかい!と鼻息ムフーになりました。

さて、お芝居そのものを上手にショートカットして語ってみたところで、見てない人には「イミねー」かと存じますので、そいつぁ、ハショリまして散漫に書き連ねてみます。ですので、そんでもかまわねー、方のみこのエッセイをお読みくださいましよ。

松尾さんの芝居をみるのははじめてでしたので、期待もソンケーもしていないのですが、声色の多彩さは面白かったです。場内アナウンスをモノマネではじめて、土井たかこ先生やゴン太くん、しまいには「ノッポさん」までが「館内では携帯をお切りください」アナウンスに乱入してくるあたりが、すでに芝居前にウキウキしまくれました。
皿袋さんに突っ込まれてからの「カッ・・・・・ツゥ~~~~~ン」とノックアウト状態の時のパントマイムの絶叫のアホさ加減には「あっ!力づくで頑張って、なおかつアホ!」ってアクティブな笑いが素敵でした。

松永玲子さんはついこの間「フローズンビーチ」をみたトコでしたので、「お、また先回りされてる」って感じでしたが、いやぁ、ナイロンの役者ですね。あのしおれた感じのギャグと間、台詞づかいと繰り返しのうまさ、舞台にたってる時の「居る」ときと「居ない」さ加減の巧みさはビビリました。

ゴージャスでデカダンでワンダホーなキャラに変身してからの、芝居そのもののボリュームは時々「あ、役者だ」って感じてしまったのですが、やはりそこいらの役者より5枚も6枚もザブトンいっぱいもらってる感じでした。「量」のある芝居をみせる人ってそうそういないんですよ。「小技」でフイフイみせてくる「器量良し」程度の芝居までなら誰でもそこそたどりつきますが、そこに「たっぷりした」ものを感じさせてくれる人は、いよいよホンモノだと思うのです。

他にもふたり、大変役者なれされた方がでていらっしゃって、やはり上手ですが、このたびはワタクシが吸引されまくった後藤氏の話に突入するために遠慮躊躇することなく割愛します。

さぁ、後藤ひろひとさんです。
役どころは「ヨーロッパ帰りの絵描きで、フランクシナトラの歌を聞くと性格が豹変してたちどころにゴージャスな社長さんモードに入る」というありきたりで済まされがちなものが、あまりに後藤さん本来の持ちキャラにぴったりすぎて、もう、かえって放っておけなくなって、是非みさせてください、な役どころでした。

ご当人は大変ウンチクが上手で、言葉まわりが速く、自己弁護も他人弁護も潔くテキパキ始末できて、頭がキレてるのにみすみす些末で些細なことにそれらの力を集中させてくる快感があるのです。
もう、みてて、盗みたい芝居がもりもりなんです。今どき「エセインテリ」なトニー谷テンションをみすみすみせてくるベタさを、堂々とやってくるセンスもまた、いいじゃないですか。

そしてあきらかに「うさんくさい」口ひげ。それも両端がくるん、と上に不自然に巻上がってる。くるんと巻上がってるヒゲをするひとにフツーの人はいません。あきらかにマンガの中の人です。
マンガの中の人なら一安心ですが、今そのときは芝居の舞台の上にやけに軽妙な足さばきでスイスイ立ち回り、「アデュー!」を連呼し、イタリア語に激昂し、「・・・・・やってしまいました・・・」と呆然とされたりすると、もう、もう、なんたるうさんくささか!と感動を覚えるのです。

つまりは、わたしのあこがれる大人の形をしてる人がいた訳です。
ああ、こんな、いても居なくても、あんまり周りがかまわないのに、平然と邁進してて、うれしそうで、こっちが見逃せまい!と追っかけていくしか見続けられない人がいる!と痛切に愛を覚えた訳です。

「BIG BIZ」という戯曲を書いたのも後藤さんですが、その本が感じさせてくる姿勢は「ビッグにいこう!うまくやろう!」であって、登場人物に苦労とか紆余曲折は一応させてるけど、基本的には「横入りした挙句うまくやりおったわい!」で鼻息ムフー!な楽天的大笑い万歳芝居なのです。

芝居ってなにかと「ドラマ」たろうとして、「葛藤」を生みだして、「困難」を突破し、「助け」あい、「機転」を効かせて、「なんとか」フィナーレに向かいがちになる、という、誰もが辟易(ヘキエキ)」としがちなあたりにおさまりをみつけがちなものです。そんなのにはもうとっくに、とっくに「見切り」が観客の方につきまくっているのに、まぁ今、まだ、そんな芝居はもりもり量産されております。
立派すぎるのです。立派で、しっかり人達が、さんざん頑張って切り抜ける芝居なんてみせられても、「立派でなく、しっかりもしきれない」人にはスタートラインが「他人ごと」になってしまうものです。

が、後藤さんのこの戯曲は「ヘラヘラしてるだけじゃん」なアウトサイドした連中が「オレたちドリームチームじゃん」とまでのたまい、一番のまともで被害者に向かって「ここまでなにもしてないの・・・おまえだけじゃん」とまったく容赦なく、カンプなきまでに「普通の人」をたたきのめして大笑いさせます。今、そこで起こっているアブノーマルな事態の中で、むやみにあせったりせず、逐一「それっぽく」ながし受け、「テキトーぶり」を発揮し、なおかつでっかく「バンザーイ!」とナンセンスナンセンスのゴリ押しで、ラストのラストで「しんみり」とも
させず、「さぁ、笑っていけ!派手にやらかしてゆけ!小さなことはシラン!シランけども、まぁ、いけ!」ってドーンと背中を押してくるような豊かで愉快で大きくって、いい気分のままでいられる芝居をみせてくれます。

小さいころ、学校で習った「道徳の時間」では「いけませんね」と諭されるものばかりで構成して、積み上げた挙句「うまく」いき、そして「大笑い!」というあっちゃなんねーもの、その「バカフィクションてんこ盛り」を丼ものでドーンと完食!的爽快さは、今の時代に一番ほしい気持ちです。

そう、今、一番ほしい、一番感じたい「突き抜けたところにある感情」に手が届くのです。悲しい事件や犯罪、不況などで、世の中はすっかり色でいうところの「グレー」です。ハッキリしない上、解決もしない。

今後もたぶん起きるだろーな、とガックリくるもの中で、この後藤さんのお芝居は「赤!」「青っ!」「ドピンク!」のように、鮮やかな原色で「ヘイ!お待ち!」と威勢良くカウンタごしにドカーンと投げてくるオイシくってゴージャスなモノなのです。
「未来はきっとダイジョーブ、オレサマのために、乾杯!」的オレイズムが潔く、かつまた本気で、カモンレッツゴー!と駆け出していくのです。

芝居に、なんか、いろんな「元気」をもらいにゆくことがあるのですが、ホントはある程度、見る側に元気がないと、芝居って見通すことができないものでもあります。自分の今、もってる元気ぶりに自信がちょっぴりないときに、ふりしぼった「残り一滴」の元気で芝居にかろうじてたどりつき、挙句「モノスゲー面白い」芝居であったときの、あの元気100倍返しのようなうれしさは、いったい他のなにで替えがきくでしょう?あれは芝居ならではのものです。ウハハハハ!と劇場を出てすぐに大笑いしたくなるようなうれしさは格別のものです。ソーカイです。ツーカイです。

期待してたものを大阪までみにゆき、こしゃまくれた予想をキチンと裏切り、ボリュームも笑いも容赦なく投げ込んでくる芝居を目のあたりにできて、この上ない幸福感を脊髄のあたりに感じました。その芝居のあとにたべたご飯も大変おいしかったです。その翌朝の目覚めも素敵になりましたし、天気までよかったです、とつまりまぁ、「全部、後藤マジックね!」とまるで「水晶パワーのおかげね!」「ピラミッドパワーのおかげね!」的うさんくささ前提の「ヤッホゥ!」な気分でパンパンになりました。

このごろは、こうした気持ちを映画やテレビであまり感じられなくなってきてたのですが、こちらにそうした「楽しみたい!」気持ちはやはり根付いたままであって、テレビや映画の方がガッツを失っていたんだね、とやけに冷静な暴言を吐いたりできるようになります。これが元気ってもんです。
これがうれしい、ってもんです。こちらから出向いてさえいけば、世の中はたんまりおかしくって、たのしくって、もりもりたっぷり気持ちを拡張増強させてくれるものです。だから、それを見付け出す気持ちや、心のアンテナをビンビンギュンギュンゆわせておくことです。そしてそうしたものに気持ちをひかれていそうな人に注目をしておくのです。

部屋に鎮座して、元気になんかなりません。
仕事に精出してて、ガッツなんてわいてきません。
やさしくて、いい人なままではなににもなりません。
つまりは、自分の期待してるものへは、近づいていくほど元気をもらえます。
たっぷりの「好きなもの」を想い、わずかの「わがまま」を小脇に、あなたの「愛」をとっつかまえにゆくのです。そいつぁ、スゲー、楽しいことです。スゲー、モノスゲー、楽しいです。

・・・とこんなのをパントマイムで見せる松尾様の魅力十分。
続編『BIGGER BIZ』も期待できまくり!!ハウ!