南へ走れ、海の道を! | pandachioの好奇心ブログ

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(ネタバレしています)
「ヤマトンチューはヤマトンチューと思うちょりますよ」

劇中、室田日出男が、訪問してきた広島ヤクザ役の萩原健一に言うセリフ。

ヤマトンチューと、「チュー」と伸ばすと、「バカ共」の意味を持つとの事。
つまりこの映画では、沖縄ヤクザは広島ヤクザのことを快く思っていないのだった。

この映画は、学生の頃名画座でよく観た大好きな作品で、沖縄を舞台にしている。終始ギラギラと照りつける真夏の暑さを始め、不思議な異国感が、映画を見終わった後にこれまた不思議な爽快感を与えてくれる。

主演が岩城滉一と安田成美というのも、今考えれば意味深である。
(おっと危ない)

監督は今や「相棒」のメイン監督、和泉聖治。
銃の特殊効果はBIG SHOTが担当しており、手抜きなし。

(ストーリー)
富島哲(柳葉敏郎:若い!)は、沖縄でプロボクシングの新人王。
仲睦まじい恋人の礼子(安田成美)とアパート暮らしをしており、その夜も仲間たちとワイワイやっていた。

すっかり酔っ払った米山善吉、小沢仁志(!)らは帰って行くが、酔った勢いで、繁華街に止められていたベンツに「きーーーーっ」とコインで傷を付けるという、トンデモナイ行為に出る。

当然のごとくヤクザにボコボコにされ、さらに事務所に連れて行かれて半殺しにされてしまう。ドサクサに紛れて逃げ出した米山善吉は、助けを求めて柳葉敏郎のところへ行く。安田成美は買い物に出て不在だった。

柳葉敏郎は暴力団事務所に掛け合いに行くが、相手にされず、更には死にかけた小沢仁志らを見るにつけ、怒りが爆発して大暴れ。

ブラックダイヤ室田日出男の「楽にーしちゃれやー」という命令で、片桐竜次(今や相棒の刑事部長)が柳葉敏郎を射殺する。

米軍基地に一人の日本人が降り立った。富島哲の兄貴、富島亮(岩城滉一)。

弟の死を知り、更にはその理由を知って、単身復讐を誓う。

岩城滉一の手助けをする旧知の仲のアメリカ人、マックス(スティーブ・ヴィラ)。さらに巻き沿いになるのが安田成美。

スティーブ・ヴィラはしっかり銃も密輸しており、オートマグ、メーカー不明のサタデー・ナイト・スペシャル、そして最後に取り出したのが、45オートだった。

岩城滉一が的に掛けたのは、柳葉敏郎を殺すように命じた暴力団琉球連合会長の室田日出男。

岩城滉一はクルマで移動中の室田日出男、睦五郎、片桐竜次を襲撃する。バイク自損事故を装い、先ず様子を見に来た三下を射殺。次に運転手を撃ち、睦、片桐と血祭りにあげる。弾は室田の心臓に命中したが、何と室田は防弾チョッキを着ており、助かってしまった。

岩城滉一の手際の良さ、ただの報道カメラマンではあるまい。室田が防弾チョッキを着ていなかったら、ここで話が終わっていた。

室田は警察とも内通しており、暗闇指令長門裕之が、ネタを提供に来る。そこで岩城滉一の存在がバレてしまった。

安田成美のアパートに、刺客の手が伸びる。先ずチンピラ2名を岩城が射殺。日本刀を手にグルグル巻きに縛り付けて切り込んでくるのが眉毛を剃った志賀勝。安田成美は足に被弾、そして夢中でガバメントをぶっ放し、チンピラ一名様を射殺。志賀勝もドサクサで首に刃が当たってしまい、刺客ご一行は全滅した。

安田成美の足を治療に来たのが、ムツゴロウ先生。「わたしが獣医であることを忘れるな!」というセリフで、劇場では「クスッ」と笑い声が聞こえたものだ。

ぎこちない日本語のスティーブ・ヴィラは、とにかく一所懸命演技するのが微笑ましい。不用心にクルマでほっつき歩き、アジトまで琉球連合に後をつけられてしまう。そこで銃撃戦となり、オートマグをぶっ放して応戦するが、結局殺されてしまう。

スティーブ・ヴィラの使用するオートマグのプロップは、「クライムハンター怒りの銃弾」や「ベイシティ刑事」でハント敬士が使用し、ご丁寧にジャムるシーンもそれぞれやっていたものだ。本映画では、快調にブローバックしている。バレルをオリジナル通りに延長し、メッキを掛けてある。

ここから、岩城滉一と安田成美の逃避行が始まる。

敵討を遂げたら、「クルーザーで、一緒にフィリピンへ行こう」と岩城滉一は安田成美に言う。これが、「南へ走れ、海の道を!」となるはずだったが・・・。

この後色々あって、唐突に始まる殴りこみシーン。

岩城滉一は、被弾しながらも、チェンバーに弾を残したまま次々にマガジン・チェンジをしていくという、正統派のコンバット・シューティングをやってみせる。弾数をきちんとカウントしているのだ。
(「ドガドガドガン!チャキッ!」ってところが最高にシビれます。観ればわかるけど。)

この辺り、フィリピンから帰ってきたこの男が、タダモノではなかったことを表現している。こういう演出って好き。

岩城滉一は室田日出男を追い詰めるが、ここが優しい男!

室田には小学生の息子が2人おり、その写真を目にしてしまったのだ。自分と弟を連想してしまい、室田の命を奪う事をやめたのであった・・・。

結局この後、フィリピン行きは無くなり、安田成美自身がカタキを取って「ああ、スッキリした!!」という形で終わるのだが・・・。

ラストで掛かる名曲、「愛だけあれば」は素晴らしい。当時テープで買ったよ。

ちなみに原作の単行本も読んだけど、佐木隆三の小説は独特な文体で、映画の印象とは結構異なる。小説では礼子が琉球連合会長を射殺した後、最後にセリフをいう。

「遅版の礼子よ!」

意味の分からない方は、小説を読むと、実は色々な伏線があることが解かるのですが・・・。

もうお目に掛かれないよね、昔の小説だし。


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