畠中恵、仁木英之、森見登美彦、堀川アサコ
遠田潤子、紫野貴李、石野晶、宇月原晴明
2011年
今年最初に読んだ小説はアンソロジーでした。
名だたる作家さんが短編を発表している
「Story Seller」の番外編。
ファンタジーノベル大賞、または優秀賞を受賞した
作家さんたちが集結しています。
私がファンタジーノベル大賞を知ったのは
第一回の大賞受賞作「後宮小説」をアニメ化した
「雲のように風のように」をたまたま見たのが最初でした。
あれは本当にいいアニメだった。
今でも数々のシーンを思い出せますが
見たのは10歳のときだったんだなぁ。しみじみ。
それにしても「Fantasy Seller」は
とてもとても濃いアンソロジーでした。
それぞれの作品の感想を書いていきたいと思います。
「太郎君、東へ」 畠中恵
太郎君て誰じゃい、と思ったら
なんと坂東太郎、つまりは利根川でした。
その太郎君が荒れているというので
利根川に棲む河童の大親分、禰々子は
人間に成りすまし、その原因を突き止めに行きます。
キャラクターの描写が素晴らしく
河童の世界に存分に浸りながら
面白く読むことが出来ました。
ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した
「しゃばけ」は有名ですが
まだ読んだことがないので
ぜひ読んでみたいと思いました。
「雷のお届けもの」 仁木英之
河童の次は雷さまのお話。
ある出来事により人間界から雷の世界へ
移り住むこととなった董虔。
一人前の雷となるため
王から命じられた初めてのおつかいに挑みます。
ファンタジーノベル大賞を受賞した
「僕僕先生」シリーズのスピンオフらしいですが
初見でも楽しめるようになっています。
子どもも楽しんで読めそうな作品でした。
「四畳半世界放浪記」 森見登美彦
登美彦氏の四畳半世界についての考察。
「四畳半神話体系」のスピンオフ…なのかな?
とりあえずぐだぐだと四畳半について語ってます。
このアンソロジーの中で一番くだらないんだけど
そのくだらなさに笑っちゃうんだよなー。
これが出来るのは森見さんだけだと思うわ。
「暗いバス」 堀川アサコ
時刻表にも乗っていない真夜中に走る一本のバス。
それを利用する主人公とそこに乗ってくる乗客のお話。
これ面白かった!
乗客はみんな主人公に自分語りをするんだけど
みんなミステリアスで魅力的。
そしてその人物たちがどんどん繋がって…
ラストもよかったです。
「水鏡の虜」 遠田潤子
今回いちばん惹かれたのはこの作品でした。
山椒太夫、安寿と厨子王のお話を
新たな切り口で描いた作品。
なにしろ筆力がすごい。
凄すぎて拷問の場面なんか
指の隙間からじゃないと読めない。
でも心を抉ってくるような文章に魅了されました。
やはり私は人間の怖さを描く作品が好きなようです。
2009年にファンタジーノベル大賞を
受賞しデビューとのことなので
これからに注目したい作家さんです。
「哭く戦艦」 紫野貴李
激戦をくぐり抜け
記念艦として余生を送る戦艦三笠。
その三笠が夜な夜な哭いているという。
左手の義手に不思議な力を宿す主人公が
その義手を作った仏師とともに
三笠に宿る船霊と接触する。
前の二作品が好みだったせいか
冒頭からあれ?と首を捻ってしまいました。
三笠に宿る船霊という題材は
とても興味を惹かれたのですが
なにしろ文章が好みでなかったので
入り込めないまま終わってしまいました。
「スミス氏の箱庭」 石野晶
東北の小さな高校に棲みつく
謎の生き物、スミス氏。
彼にお世話係りを命じられた由枝は
いつしかスミス氏と過ごす時間が
かけがえのないものになっていた。
しかし、ある出来事が
スミス氏と生徒たちとの関係を大きく変えていく。
これも面白かったなぁ。
展開としては王道的な感じなんだけど
学校という空間の異質さを
ファンタジックに描いたいい作品でした。
「赫夜島」 宇月原晴明
竹取物語から二百年後
平将門と藤原純友は藤原仲平の命により
かぐや姫が残したとされる
不老不死の霊薬を求め赫夜島へと向かう。
しかしそこは
向かったものが誰一人戻ってこないという
瘴気に覆われた島だった。
まるで大長編を読んでいるような
とても壮大なお話でした。
かなり奇怪な内容ですが
文章が美しく
独自の世界観を確立している
作家さんだなと思いました。
ファンタジーという枠に収まりきらないような
様々なお話が詰まっていて
読んでいてとても楽しいアンソロジーでした。
今回印象深かった作家さんは
他の作品も探して読んでみようと思います。


























