近頃、金魚が売れない、という話を耳にした。
お祭りの金魚すくいでも、みんな持ち帰らないのだという。
持ち帰らないゲーム用のポイの紙はちょっと厚めになっていて、
金魚すくいを長く楽しめるようになっているそう。
なんだか、ぬるくてやだなー。
そうだ、金魚を飼おう。
夏だしな。
なぜか我が家に金魚鉢はある。
いいな金魚。
昔、熱帯魚に凝っていた先輩がいる。
(便宜上ここではクマイチロー先輩という名前にします。)
先日会った時に
パンダ 「家の中が寂しいから、金魚でも飼おうかなと思ってるんすよ」
という話をしたら、
クマイチロー 「金魚ならぶくぶくもいらないし簡単」
と言いながら、ちょっとニヤリとした。
(うわ、寂しいなんて言ったから同情されちゃったかな?)
次に会ったのは、クマイチロー先輩行きつけの飲み屋の個室だった。
待ち合わせの10分前に店に行くと、先輩はもう来てて飲んでた。
横になんだか大きな紙袋が置いてある。
「今日はいいものを持ってきたよ」
クマイチロー先輩、気を遣う人(その昔はすごく怖い人だった)なので、
(うわ、もしかして水槽持ってきてくれちゃったのかな?・・)
と、ちょっと戸惑っていたら、
中から取り出したのは 盆栽。
平たい皿状の石に、ヒバみたいな植物が載っていた。
「金魚もいいけどさ、盆栽もいいよ」
と彼は言うと、
「水やりも簡単だしね」
と言いながらコップの水をそれにかけて
「これだけでいいんだ」
と言って笑った。
正直、盆栽なんて枯れたじじいの趣味だと思ってたんだけど、
このまま侘び寂びも解らずにじじいになるなら、
その前に理解しておきたい(笑)
いい機会である。
その日もたくさんビールを飲んで、気がついたらもうこんな時間。
店を出て並んで歩く。
もちろんぼくの手には大きな紙袋。
ところが別れる間際になって、
どさっという音がして袋の底が抜けた
今思えば、店で水をあげたので紙袋がふやけたんだと思う。
「あ~、新しい袋あげるからうちにちょっと寄って」
幸い、クマイチロー先輩宅のそばで飲んだので
ご自宅までは歩いて1分の距離。
「なんだかすみません」
新しい袋(今度はビニール)を二重にして、盆栽を入れ、
丁重にお礼を言って彼と別れる。
どんなものでもそうだけど、特に興味のある物をもらうと
帰る途中もなんだか気になる。
ちょうど隅田川にさしかかった時、何気に袋を覗いてみた。
すると・・。
あれ? 入っていたはずの盆栽の植物の部分が 無い!
袋の底をごそごそやってみたけど無い。
土台の石はあるんだけど、植物だけが無くなっている。
そして袋には石が破いたと思われる穴・・。
どこかに落としてしまったようなのです。
結構、歩いた距離が長かったので、
もはやどこで落としたのか想像すらつかない。こまった!
気休めにちょっとだけ戻ってみた。
ただでさえ夜道は薄暗いので見つかりそうもない。
手元に残った石・・。
なんだか急に重たくなってきた。
目の前には隅田川が流れている。
やけくそになって、川に投げちゃおうか・・と思った。
月夜の晩、川のほとり、袋から取り出してじっと石を見る。
結局、石を袋にしまったぼくは、そのまま家へと向かった。
そしてまず、クマイチロー先輩に落としてしまったお詫びのメールを打った。
するとすぐに
「受ける~(笑)」 ←たぶん裏声
という返事が送られてきて、この盆栽事件はひとまずおしまい。
せめてもらった時、店で写真でも撮っときゃよかったと思った。
とりあえず今は、何もないベランダに石だけ飾って
意味なく霧吹きで水をかけてみたりしてます。
けっこう尖がってる右肩のところが今回の犯人だと思う。
(つづく)
お祭りの金魚すくいでも、みんな持ち帰らないのだという。
持ち帰らないゲーム用のポイの紙はちょっと厚めになっていて、
金魚すくいを長く楽しめるようになっているそう。
なんだか、ぬるくてやだなー。
そうだ、金魚を飼おう。
夏だしな。
なぜか我が家に金魚鉢はある。
いいな金魚。
昔、熱帯魚に凝っていた先輩がいる。
(便宜上ここではクマイチロー先輩という名前にします。)
先日会った時に
パンダ 「家の中が寂しいから、金魚でも飼おうかなと思ってるんすよ」
という話をしたら、
クマイチロー 「金魚ならぶくぶくもいらないし簡単」
と言いながら、ちょっとニヤリとした。
(うわ、寂しいなんて言ったから同情されちゃったかな?)
次に会ったのは、クマイチロー先輩行きつけの飲み屋の個室だった。
待ち合わせの10分前に店に行くと、先輩はもう来てて飲んでた。
横になんだか大きな紙袋が置いてある。
「今日はいいものを持ってきたよ」
クマイチロー先輩、気を遣う人(その昔はすごく怖い人だった)なので、
(うわ、もしかして水槽持ってきてくれちゃったのかな?・・)
と、ちょっと戸惑っていたら、
中から取り出したのは 盆栽。
平たい皿状の石に、ヒバみたいな植物が載っていた。
「金魚もいいけどさ、盆栽もいいよ」
と彼は言うと、
「水やりも簡単だしね」
と言いながらコップの水をそれにかけて
「これだけでいいんだ」
と言って笑った。
正直、盆栽なんて枯れたじじいの趣味だと思ってたんだけど、
このまま侘び寂びも解らずにじじいになるなら、
その前に理解しておきたい(笑)
いい機会である。
その日もたくさんビールを飲んで、気がついたらもうこんな時間。
店を出て並んで歩く。
もちろんぼくの手には大きな紙袋。
ところが別れる間際になって、
どさっという音がして袋の底が抜けた
今思えば、店で水をあげたので紙袋がふやけたんだと思う。
「あ~、新しい袋あげるからうちにちょっと寄って」
幸い、クマイチロー先輩宅のそばで飲んだので
ご自宅までは歩いて1分の距離。
「なんだかすみません」
新しい袋(今度はビニール)を二重にして、盆栽を入れ、
丁重にお礼を言って彼と別れる。
どんなものでもそうだけど、特に興味のある物をもらうと
帰る途中もなんだか気になる。
ちょうど隅田川にさしかかった時、何気に袋を覗いてみた。
すると・・。
あれ? 入っていたはずの盆栽の植物の部分が 無い!
袋の底をごそごそやってみたけど無い。
土台の石はあるんだけど、植物だけが無くなっている。
そして袋には石が破いたと思われる穴・・。
どこかに落としてしまったようなのです。
結構、歩いた距離が長かったので、
もはやどこで落としたのか想像すらつかない。こまった!
気休めにちょっとだけ戻ってみた。
ただでさえ夜道は薄暗いので見つかりそうもない。
手元に残った石・・。
なんだか急に重たくなってきた。
目の前には隅田川が流れている。
やけくそになって、川に投げちゃおうか・・と思った。
月夜の晩、川のほとり、袋から取り出してじっと石を見る。
結局、石を袋にしまったぼくは、そのまま家へと向かった。
そしてまず、クマイチロー先輩に落としてしまったお詫びのメールを打った。
するとすぐに
「受ける~(笑)」 ←たぶん裏声
という返事が送られてきて、この盆栽事件はひとまずおしまい。
せめてもらった時、店で写真でも撮っときゃよかったと思った。
とりあえず今は、何もないベランダに石だけ飾って
意味なく霧吹きで水をかけてみたりしてます。
けっこう尖がってる右肩のところが今回の犯人だと思う。
(つづく)