「あぁ、まぁな。そりゃ、なんかあったら剃っけど」
と彼は俺が手渡すそのカップを取りながら答えた。
そして
「別になんもねぇしな」
と続けた。

「アイスの方が良かった?」
俺はきいた。

「いや、大丈夫」
彼は答えた。






「調子はどうっすか?」
俺もマグのコーヒーに口をつけながら、そのまま彼を見て様子をうかがった。

「えぇ?どうって・・・、お前、昨日の今日だろ。どうもしねぇけど、まぁ、ぼちぼち・・・」

ほらほら、また、あんま笑いもしないで、首すじを触ってみたり、あごのあたりを触ってみたり、この人がこういう仕草を見せる時って、落ち着かない証拠みたいなもんだよねぇ。皆さん。

「あのよ、なんか、その、上がってよかったんか?俺」

「いつでも大歓迎です」
俺は即座にきっちりきっぱり簡潔に答えた。

「そういうんじゃぁねくてよ」

「実家に何日か里帰りしてるんで大丈夫だよ」

「・・・う」

う?う?うってなんだよ。と思った。
彼は言葉通り、何かが喉に詰まったような顔をしている。

何か、この状況に、俺を訪問するのに、やましさみたいなもんでもあるんだろうか。この人の中では。

まぁ、それでも、何かしら、何かしらの落ち着かなさや、気まずさ、うっ・・・と口をついて出るような気持ちにはなると・・・。


なので俺は言った。

「別に、あっちの部屋でもリーダーの部屋でも良かったのに」

あっちの部屋とは、あっちの部屋です。言わずがもな、「あっちの部屋」です。

「あぁ、けど、お前スマホないと困んだろ」

ですね。

「ありがとう、朝イチで届けてくれて」

俺の言葉に彼の表情が少し緩んだような気がして俺はホッとした。

昨日の深夜、帰り道、スマホを忘れたのは早い時点で気づいていたけれど、引き返すにはタイミングが遅く、俺は家に帰ったのだ。


だって、寝ちゃってたしね。




沈黙が苦になるような付き合いではない。

彼が特に話そうとしなかったので、俺も黙ってコーヒーを飲んだ。

コーヒーってのは、どうして、同じものを飲んでもその時々で味が違うんでしょうかねぇ。

今日は、今は、正直、味がよくわからなかった。