o side
「おーちゃん、どしたん?」
「どうもしない・・・」
ほんとはどうもする。めちゃくちゃどうもする。
おいらはつっぷして顔を、頬を机に乗せていた。
もう、大分、飲んでんだよ。
多分、悪い酔い方の方だよ。ぜってー。
この人、コイツの前だと、なんか気を許しちゃうんだよな。
最近、よく一緒に飲むし、ふたりだし。
それに、こないだ翔ちゃんもおんなじこと言ってたし。
孫とか・・・。
孫とか・・・。
孫とか・・・。
なんか、ますます滅入るような気がする。
「ほら、言ってみなって。何、悩んでんのよ?」
「なんか、と、友達としっくりこないっていうか、なんか様子がおかしいっつうか・・・」
カズが・・・よく分からない。
何がなんだか自分でも分からないんだから、説明のしようがない。
ただ、ふたりでいる時はとても静かで気持ちが凪いでいるのが普通なのに、やたらざわざわするんだよ。
それに、なんとなく、なんとなくだけど、ほんの少しだけど、避けられてるような気がする。
だからって聞くん?おいら?
『最近、お前なんかおかしくね?俺のこと避けてんの?俺以外に好きなヤツでもできたん?俺のこと、好きじゃなくなったのかよ?』
・・・とか?
いや、聞けねー。
聞けねぇわ、んなん。
どう考えたって聞けねぇし。
「友達ねぇ・・・」
俺はそう言う彼と眼を合わせられなくて机に顔を預けたままだった。
「好きなんでしょ?その友達のこと」
「・・・」
答えるかどうか迷った。
迷ったけど言った。
「好きだよ。多分、どうしようもなく好きだよ」
言いながら鼻の奥がツンと痛んだ。続けて言った。
「その人がいないと生きていけないってぐらい好きだよ」
涙が出そうだった。
彼があぐらを組み直す気配がした。
「じゃ、結婚でもすりゃいいじゃん」
「それは出来ない」
「(笑)何?人妻ぁ?」
「ちげぇし!!んなんじゃねぇし!!」
「ごめん、ごめん。おーちゃんの立場だったら、結婚なんて難しいもんな」
「そういうんでもねぇもん。ねぇんだけど・・・」
彼は次のおいらの言葉を待つみたいにしばらく黙っていたから、おいらは身体を起こした。
「おーちゃんは、その人のことがすっげぇ好きなんだな」
おいらは頷いてうなだれた。
けど、
だからって・・・。
そっから先、続く言葉が出てこなかった。
「このまんま、ずっと一緒になんかいれんのかなって不安になってんだよ、多分、おいら」
ルーティンみたいになってる仕事、増える個人仕事、出来上がった距離感。
現状維持を毎年、目標に掲げるおいらは、おいらたちはそれが簡単なことじゃないぐらい分かってる。
現状を
これから先どれぐらい維持できるんだろう。
一緒に居るために『トップになる』とかいう目標があったのか
その『トップになる』って目標のために一緒にいるのか、
そのどっちもなのか
土台、おいらにはその目標も、ほんとうはよく分からなかったかもしんない。
皆の、ちょっと後ろを歩きながらついてきたら、いつの間にかこんなとこに来てたって感じだ。
最近ではいよいよもうよく分からない。
「アイツが何考えてんのか分かんない・・・」
おいらは独り言みたいに言った。
そうは言ったけど、自分自身も良く分からない。何を考えてんのか。
ただ、人は
そうやって、色んなことをちょっとずつ積み上げて
ひとはひとを縛っていく。
自分も縛って行く。
離れられなくしていく。
そういうもんだと思う。
翔ちゃんや松潤も言ってた。
「一緒にいようと思わなきゃ、一緒になんかいられない」
現状を維持しようと思わなきゃ、現状維持なんて出来ない。
多分、同じ目標がなければ、こんなに長くは一緒にいられなかった。
目標もなく、ただこんなに長く誰かと一緒にいることなんか誰にも出来ない。
おいらの気持ちは
それがありがとうだったり、大好きだったり、一緒にいれば安心するとか、一緒に居ない時、何してるんだろうって気になったり・・・何より、一緒にいたいとか、そういうの全部、全部!!全部だよ!!
でも、けど・・・!!
もう、大声で叫びたいような気持ちだった。
心の中で叫んでた。
意味も分かんないけど、自分で。
この先一緒にいれる保証なんかどこにもない。
一緒にいたところでどうなるんだろう。
目標は?目的は?ここまで来て、この先見る先の風景が違ってきたら、ふたりはどうなるんだろう。
何をしてやれるって言うんだろう。
「言えねぇよ、好きとか・・・。好きとか、すぐ、言っちゃうけどな(笑)」
おいらは自分が可笑しくて笑った。
「けど、もう、そんなんじゃ済まなくなっちまってるよ。とうの昔に」
酔えば酔うほどにこぼれる本音。
これが、これが今。
もしかしたら
もう、とっくに、とうの昔にどん詰まりなんじゃねぇのかよ。
なぁ、カズ
お前はとっくの昔にこうなることに気づいてたんじゃねぇのかよ。
