O side
「カメラのないとこで話すのと、あるとこで話すのと、あんま変わんないね、俺たち」
相葉ちゃんが笑顔で言った。
「確かに。よしんば、ここにカメラがあったとしても、最早、何も思わないかも」
翔ちゃんが言った。
「皆さぁ、何飲む?何がいい?」
松潤が冷蔵庫を開けながらこっちを見て言った。
「なんでもいいよ。あるもんで」
カズが少し声を張って言った。
「とりあえずその辺に座ってよ」
松潤の言葉においらたちは部屋の真ん中にわらわらと進んだ。
「松潤の部屋っておっしゃれだねー?思わない?皆」
相葉ちゃんはせわしなく翔ちゃんを見て、カズを見て、おいらを見て言った。
「流石、МJですよ。こんなの当たり前。だって、МJだもん」
カズは大げさに言った。
松潤の部屋は、おいらの部屋と違って、モノがいっぱいある感じがした。
松潤らしい家具、インテリア、置き物や照明ひとつにしても、松潤がひとつひとつ選んだ感じがするし、全部がちゃんとバランス良く、居心地良く、あるべき場所みたいにソコにあった。
「これ、なんの毛?」
リビングにあるお洒落な椅子の表面は、なんかの毛皮っぽい。おいらはそんなことが気になって、独り言みたいに言った。
「なんだろね、牛の柄っぽいけど」
カズとおいらは、さわさわその椅子を触った。
「ハラコなんじゃない?」
「多分、そうだよ」
相葉ちゃんの意見に翔ちゃんが頷いてたけど、『ハラコ』がまずわかんねー。
ま、いいか。
「にの、ごめん。このグラス、そっちに運んで」
松潤の言葉に、にのとしょうちゃんがキッチンの松潤の方へ行った。
おいらと相葉ちゃんは、その椅子に座ってみたり、視界に入る新しいものに笑ったり喋ったりしていた。
「すげぇじゃん。バカラばっかり?」
声のした方を見ると、グラスを持ちながら翔ちゃんは少し目を大きくしていた。
「ほとんど貰い物かもしんないな。結婚式の引き出物?お返し?」
「ああ、そのパターン割とある。結婚かぁー」
翔ちゃんはグラスを運びながら割と大きな声で言った。
「周りは皆、結婚してるもんね」
相葉ちゃんが相槌みたいに返事した。
「同級生が結婚したって聞いて、そしたら、年賀状で、いつの間にか当たり前に子供とかいるしさ」
「あるある。写真の子ども、可愛いよねー」
「なんの話になってんのよ?」
松潤がそう言いながらピッチャーやビール、ウィスキーや炭酸水の瓶をローテーブルに並べた。
カズは率先してそれを受け取る。
「結婚とか子供とか、カメラあっても一緒とか言いながら、カメラの前で全然話せないこと話してるよ。この人たち」
カズがグラスを皆の前に置きながら言った。
飲みの準備が整うのと一緒においらたちも全員、リビングのテーブルを囲んで座った。
「翔ちゃん、子供何人ぐらい欲しいの?」
「俺、自分が三人兄弟だから三人ぐらいは欲しいかな?」
「雅紀は?」
「えー、どうだろ。何人とかは分かんないけど賑やかな方がいいよね」
相葉ちゃんはニコニコしていた。
次に言った。
「にのは?」
おいらは咄嗟みたいにカズを見た。
ちょっと、ドキッとした。
「俺ぇ?こどもあんま得意じゃないんだよね」
カズはマドラーでグラスをかき混ぜながら言った。
「そう?俺、企画モノとか見てて、にの、子供の扱いうまいよなぁって思うよ?」
翔ちゃんが言った。
「あんなの番組だからだよ」
「いやいや、んなことないよ」
翔ちゃんは続けた。
「俺の親とかさ、一応、俺の立場も理解してくれてるから、早く結婚しろとは言わないんだけど、言わないんだけどさ、思うところはあるだろうなって、思うわけよ」
翔ちゃんの話は
どっかで聞いたことのあるような話だった。
こないだ友達と飲みながらした話に違いなかった。
「親孝行かもしんないね、確かに」
カズは静かに言った。
「そういうのも幸せかもしんないね」
そういうカズの横顔は何を考えてるのか、おいらには全く分からなかった。
カズの子供
そりゃ可愛いだろうな・・・。
そんなことを普通に思った。
そう思う自分を不思議なような不思議じゃないような、自分でもよく分からなかった。
けど、カズは笑ってる。
笑ってるから、幸せそうだから、ま、いいか。
いいよな。
いいんだよ、きっと。
皆、くつろいで楽しそうに笑ってる。
「リーダー、グラス」
カズがおいらに手を伸ばしていた。
おいらを見る眼はとても穏やかだった。
「え?ぁあ」
おいらはカズに空いたグラスを渡した。
渡すとき、ちょっと、その手にいつもみたいにわざと触れた。
離れるときは、少し名残惜しいような気がした。
「ハイボールでいい?」
「うん・・・」
やっぱり、見つめ合っても、カズが何を考えているのか、おいらには読み取れなかった。
それでも今は時間がとまればいいのにな・・・そんなことを考えながら、おいらは、ただ、ここに座ってることが温かいような気がして楽しかった。
だって、みんな笑ってるから。
だって、幸せな気がするから。
