中皮腫という病気は早期発見も難しく病理診断も非常に難しいとされています。

診断が難しいがゆえに何度も生検をされている方もいらっしゃいます。


そんな中で少しばかりの朗報がウインク


発表の概要

アスベスト(石綿)(注1)を吸い込むことで発症する中皮腫は、アスベストによる代表的な健康被害として、国際的にも大きな社会問題となっています。中皮腫は有効な治療法と診断法が確立されていないため、中皮腫を早期に発見し的確に判断できる診断法の開発は、より有効な中皮腫治療のための第一歩となります。

この度、神奈川県立がんセンター臨床研究所 辻祥太郎主任研究員と今井浩三顧問らのグループは、中皮腫の的確な診断に有用な新しい中皮腫がんマーカーを発見しました。今回発見された中皮腫がんマーカー(シアル化HEG1)は、新たに発見された、ほぼ中皮腫細胞でのみ存在する細胞膜蛋白質です。シアル化HEG1を検出することにより、これまでの診断法よりも中皮腫細胞を的確に発見し、診断することができるようになると考えられます(図1)。また今回の研究で、シアル化HEG1が中皮腫の増殖に関係する可能性も見いだされました。


説明図・1枚目(説明は本文中に記載)図1:シアル化HEG1を検出することで中皮腫を的確に見分けることができる


今回の研究成果を活用し、シアル化HEG1の検出抗体を中皮腫の診断に用いることで、中皮腫の的確な診断が可能となり、中皮腫の早期治療や、アスベスト健康被害に関する迅速、適正な労災認定が可能になると考えられます。また、中皮腫に対する高い特異性を利用した分子標的治療への応用も考えられ、治療困難な中皮腫に対する新たな治療法の開発に繋がる可能性があります。

現在、株式会社LSIメディエンスと共同で中皮腫診断への適用、実用化の検討を進めています。

本研究成果は平成29年3月31日に“Scientific Reports”誌に掲載されました。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)および日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて行われています。

研究の背景

悪性中皮腫(中皮腫)は過去のアスベスト曝露により発生するがんで、5年生存率(注2)が7.8%(全国がん(成人病)センター協議会調査)と極めて難治性のがんであり、アスベストによる健康被害の一つとして大きな社会問題となっています。日本では過去のアスベスト使用量の増加と平行して発症件数が増加しており(図2)、現在、年間1,400人前後の方が中皮腫で亡くなられています(厚生労働省大臣官房統計情報部 人口動態・保健社会統計課調査)。

中皮腫は化学療法や放射線療法に抵抗性を示すため、現状では、早期発見と早期手術が唯一有効な手段です。そのため、特異性(注3)と感度に優れた中皮腫がんマーカーを用いて、精密かつ早期の発見を可能にすることがより有効性の高い中皮腫治療ための第一歩となります。しかし、早期発見を可能にする中皮腫がんマーカーはなく、中皮腫の早期発見は極めて困難というのが現状です。加えて、中皮腫は胸膜に転移した他のがんや良性の反応性中皮細胞の増殖と病理学的に類似(注4)することがあり、中皮腫自身も様々な組織型(注5)に分かれるため、鑑別診断(注6)が困難になることがあります。特異性の高い中皮腫がんマーカーの開発が続けられていますが、様々な組織型の中皮腫を幅広く、かつ精度良く見分けることができるマーカーは開発されていませんでした。

説明図・2枚目(説明は本文中に記載)

図2:中皮腫による死亡数の年次推移(都道府県別)

研究成果の内容

神奈川県立がんセンターの研究グループは、中皮腫の細胞に結合するモノクローナル抗体(注7)を多数樹立し、その中から中皮腫に極めて特異性の高い抗体(SKM9-2)を同定しました。130症例の中皮腫の病理組織切片を使用して解析したところ、SKM9-2抗体は上皮型、肉腫型、線維形成型など様々な組織型の中皮腫に幅広く結合し、感度は92%と算出されました。これは既存の中皮腫の診断マーカー(78~87%)を上回る値でした。また、肺がんをはじめとする様々な中皮腫以外のがんに対しては、SKM9-2抗体はほとんど結合せず、中皮腫に対する特異性は99%でした(図3)。さらに、正常な臓器の細胞にもほとんど結合しませんでした。これらの結果から、SKM9-2抗体は中皮腫に極めて特異性が高く、中皮腫の病理診断を精密に行う上で非常に有用な診断薬になりうることが分かりました。また、その高い特異性を利用した分子標的治療(注8)や体内診断薬(注9)への応用も考えられます。

説明図・3枚目(説明は本文中に記載)

図3:シアル化HEG1は優れた中皮腫特異性を示す

中皮腫細胞からSKM9-2抗体が結合する分子を精製し解析したところ、SKM9-2抗体が結合している分子は、シアル化(注10)HEG1という蛋白質であることを突き止めました(図4)。シアル化HEG1は、これまでに中皮腫のマーカーとしての報告はなく、機能もほとんど分かっていない分子です。そこで機能について解析を行ったところ、中皮腫細胞のシアル化HEG1の合成をsiRNA(注11)で阻害すると一部の中皮腫細胞の増殖が強く抑制されることが分かりました(図5)。この結果から、一部の中皮腫ではシアル化HEG1に依存してがん細胞が増えていることがわかり、シアル化HEG1を標的とした中皮腫治療薬が開発できる可能性が考えられました。

図4:今回発見された新しい中皮腫がんマーカーが「シアル化HEG1」という蛋白質であることを同定

図5:一部の中皮腫ではHEG1に依存してがん細胞が増えている可能性がある

今後の展開

今回の研究で、「特異性と感度に優れた新しい中皮腫がんマーカー」としてシアル化HEG1を発見しました。研究成果を活用し、シアル化HEG1の検出抗体(SKM9-2)を中皮腫の診断に用いることで、中皮腫の的確な診断が可能となり、中皮腫の早期治療や、アスベスト健康被害に関する迅速、適正な労災認定が可能になると考えられます。また、中皮腫に対する高い特異性を利用した分子標的治療への応用も考えられ、治療困難な中皮腫に対する新たな治療法の開発に繋がる可能性があります。






お馬鹿な私には読んでいても何の事だかさっぱりわからない箇所も多々ありましたが、このシアル化HEG1が新しい中皮腫がんマーカーとして認定されれば現状よりも診断がつきやすくなり患者に対する負担も軽くなるということですよね??



1日も早く治療を受ける為また労災認定や救済法の認定を受ける為にも早期の的確な診断は必要不可欠です。



また新たな治療法が開発される事により私達患者としては一筋の希望の星になるかもしれません。





より早く確実に現実のものとなる事を願います。