薄緑の絨毯の向こう側 | 東京の高級アンティーク家具店パンカーダのブログ

薄緑の絨毯の向こう側

パンカーダ田園調布があるのは、皇居を中心とした東京の環状線のひとつ、環状八号線沿い。




日々、多くの車が行き交う幹線道路ですが、この時期、街路樹が可愛らしい花を咲かせます。



ごくごく小さな花は、散るとまるで粉のようになり、薄緑の吹き溜まりがあちこちに。




この街路樹は、「えんじゅ/槐」。




英語では、「Sophora japonica L.」といいます。


中国原産なのに「japonica」となっているのは、命名者であるスェーデンの植物学者、カール・フォン・リンネ/Carl von Linne(1707-1778)が、得たエンジュの標本が日本産のものであったから、とか。




とても強い木で、街路や公園によく植えられており、自然の樹形が美しく、そのまま成長しても姿はあまり乱れずよくまとまるといわれていますが、環八のエンジュはばっさりと枝を切られて、ほぼ真っすぐの姿ばかりとなってしまっています。




もちろん、日本各地にのびのびと成長したエンジュはきっとあると思うのですが、とても美しく古いエンジュがヴェルサイユ宮殿にあること、ご存知でしたか?


それは、プチトリアノン、王妃の村里/Amourの入り口あたり。




1772年頃に植えられた、とヴェルサイユの庭師だったアラン・バラトン氏が著作で語っています。






1772年はルイ15世の治世。


ポンパドゥール夫人は既に亡くなり、マリーアントワネットがこの領地をもらったのが1774年ですので、その狭間の期間でしょうか。



それからなんと、今年で244年。


人間の寿命をはるかに超えるエンジュの古木はまわりで人間たちが演じてきたドラマを、どんな風にみてきたことでしょう。




数人でないと囲めないほど、どっしりとした太い幹。


プチトリアノンの瀟洒な建物を背景に、のびのびと張った枝。



環八のエンジュ達も、枝を好きに伸ばすことができるなら、このような美しい姿になるのでしょうか。





ちょっと探してみてください。


貴方の周りにも、ちょうど今が花盛りのエンジュがあるかもしれません。



そしてそれは、薄緑色の絨毯のむこうで、遠いプチトリアノンのエンジュと繋がっているような気がします。




by N