同室のおばあちゃん達はみな元気になって、私よりも先に退院していった。93歳のおばあちゃんも、自宅に戻ったら娘さんに世話になりながら畑の野菜の世話をするのだと元気に帰っていった。野菜を作ることが生きがいなんだと言っていた。
もう会うこともないと思うけど、そろそろ収穫の時期かな、元気かな〜なんていまも時々思い出す。
数日後、気胸になった右肺が空気で膨らみ、管が外され、一時退院できることになった。
家族が退院の手続きをしてくれているのを病室で待っている間、たまたまネットで見つけた「悪性リンパ腫」の記事を読んでいた。“病気がわかったきっかけは、偶然鎖骨に触れた時にピンポン玉のようなしこりに気付きー”という内容で、私も何気なく鎖骨に触れてみた。
すると、指にコリコリした小さなものが触れた。
自分にもある。しこりのようなもの。
小さい1cmくらいのもの。なにこれ。
私も悪性リンパ腫?それともこれは転移したがん細胞?肺?婦人科系?転移だとしたらステージは?
一気に頭の中を駆け巡り、動悸がした。
確認したいけど、主治医は不在。
その日の担当をしてくれた看護師さんは初めて見る人で、なんとなく聞けなかった。
どのみち数日後にはPET検査を受けるのだ。
慌てなくてももう少しで答えが出る。
私はそのまま不安な気持ちで病院を後にした。
……………
退院後の一週間のあいだに病状は急速に悪くなっていた。すぐに息が上がってしまい、苦しくて歩けない。眠りたいけど息苦しくて眠れない。
やたら背中が痛くて、起床時は夫に体を起こすのを手伝って貰っていた。
PET検査は、それまで受けた検査の中で一番怖かった。退院時にみつけた鎖骨のしこり。明らかにどんどん体調も悪くなっている。
40分ほどの撮影中、それでも“どうかどこも光りませんように”とずっと祈っていた。
さらにその数日後、PET検査の結果が病院に届き、家族とともに主治医の診察を受けに行った。
主治医 panさん、おそらく悪性腫瘍だと思います。画像を見る限り肺がんの可能性が高いです。転移もある。ただ、生検で結果が出ない限り治療をはじめることができません…。やはり肺のリンパ節に多くの集積が見られます。首にもありますね。骨にも集積が見られるので骨転移している可能性もあります。
背骨、肋骨、坐骨…それを確認したいので生検の前に骨シンチ検査を受けてください。それからMRIも…
主治医の声が遠くなる。
肺がん…骨に転移…
背中の痛みはそのせいだったんだ…
骨転移って…
改めて主治医のPCに映し出された自分のPET検査の画像を見る。
たしかに光っている。
自分の想像よりも病気はずっと進行してしまっていることがわかった。