翌日、両親と紹介先の胸部疾患専門病院へ行った。
夫は仕事だし肋骨のあたりの痛みがまだ続いており、自分で運転ができそうもないのでお願いした。この歳で親に病院へ付き添ってもらうなんて本当に情けないし、申し訳なかった。

実はこの病院へ来るのは二度目だ。
昔、仕事の関係で来たことがある。あの時は、数年後にまさか患者として来るなんて思ってもいなかった。

だいぶ待ってから名前が呼ばれた。
院長は呼吸器内科の院長より少し若い印象。

院長 ああ、〇〇さんの紹介ですね。喘息と言われて肺炎を繰り返しているのね。たしかに肺炎の跡があるね。でも、同じ場所で肺炎を繰り返すなんておかしいね。繰り返すの場合は、アレルギー性肺炎の可能性があります。何か心あたりはあるかな?
念のため、明日から検査入院をして詳しく調べましょう。気管支鏡検査というものを受けてもらいますね。

気管支鏡検査…???

痛いのは嫌なので帰宅後ネットで詳しいことを調べたら、医師が受けたくない検査ナンバーワンだった。とにかく、めちゃくちゃ苦しいらしい。
…ああ、見なきゃ良かった。

入院中の担当は、若い女性医師に決まった。

それから、血液検査とレントゲン撮影、呼吸状態の検査を受けて帰宅した。(※CTも撮ったが、入院前後のどのタイミングで撮影したかは忘れた。)

……………

次の日、入院の手続きを済ませて病室へ行くと、いきなり気管支鏡検査を受けるよう指示があった。

え、いきなり?
着替えを済ませ、少々ビビりながら検査室に移動。

待っている間に手前の部屋で霧のような麻酔を吸い込むが、咳がひどくて上手くできない。看護師さんにサポートされながら何度か繰り返していると、女性医師が到着した。
私の主治医の先生だ。先生にも手伝ってもらったが、やはり咳き込んでしまい上手く吸えなかった。

主治医 うーん、若いと反射が強いから多少苦しいかもしれないけど、検査中も麻酔を追加できるからまぁ大丈夫かな。

私 え、本当に?だだだ大丈夫ですか?

この場から逃げ出したいくらい嫌だったが、ついに順番が来てしまった。奥の部屋に入ると看護師さんや別の数名の医師が待機していた。モニターらしき物もちらっと見えた。

ベッドに寝て、目にタオルを掛けられ、口にマウスピースのような何かをはめられる。他にも手首や足首によくわからない装置をつけられたような気がするけど、よく覚えていない。

主治医 じゃあ、はじめますね〜。

カメラが喉に入ってきた。

ボエーッ!

めちゃくちゃ苦しい上に、聞いたこともないようなすんごい声が出てた。自分の声なのに、ちょっとショックを受けた。

検査中はまるで終始溺れているような感覚だった。本気で窒息して死ぬんじゃないかと思った。何度か意識が遠退いた。麻酔も何度か追加してもらったはずだが、よく覚えていない。

看護師 panさん、大丈夫ですか?鼻でゆっくり息を吸いましょうね。

そんなこと言われても涙と鼻水が出てきて鼻で息が吸えない。そう、伝えたいけど話せるわけもなく、出るのはボエーッ!というあの声だけ。

でも、看護師さんは検査のあいだぎゅっと私の左手を握っていてくれた。そのおかげで少し平常心を取り戻すことができた。少しだけ呼吸のコツを掴んだ。

しばらくすると、主治医たちの話し声が聞こえた。

医師 塞がってますねー。先に進めない。病変ではないみたいだけど。

主治医 擦りましょう!

それから再び何かを口の中に入れられ、苦しくてどのくらい経ったかわからないが、もう限界だと思った頃に主治医の声が聞こえた。

主治医 もうすぐですよー。あとはキレイに流して終わりですからね。

口からカメラが出され、やっと検査が終わった。
陸に上がった魚はさっきと同じくらい苦しいんだろうか。いや、多分もっと苦しいんだろうな。死んじゃうくらいだし。

手前の麻酔の部屋では次の患者が待機しているのが見えた。待ってる間にあんなおぞましい声聞いてしまい、さぞかし怖かっただろう。恐怖を与えてしまってごめん…。

車椅子で病室へ向かう。

検査は終わったのに、苦しくて咳が止まらない。
顔は涙と鼻水でもうグチャグチャだった。