彼は約束した時間に待ち合わせ場所に
行ったのに、私がいなかったため、
後で電話をくれた。
私はバツの悪いまま、
『恥ずかしくなったから帰った。
失敗作だけど、待ち合わせ場所に
お菓子を置いて来た』
と伝えた。
電話の後、彼はもう一度待ち合わせ場所に
行き、私が置き去りにしたお菓子を回収
して、ちゃんと食べてくれたようだ。
後で味の感想を教えてくれたかな?
記憶にない。
クラスの女子からは、
『◯◯◯君は気に入らない女子からの
チョコレートは受け取らないらしいよ』
そんな話を聞いた事があった。
だから、私の下手くそなお菓子は受け取って
くれたことが有り難かったのだけど、
それ以来、私は体裁悪さに卒業するまで
声をかけられなかった。
卒業式数日前に、彼は私とは違う高校に
進学してしまうとクラスの女子から聞いた。
もう話さないだろうと思っていたけれど、
勇気を振り絞って、彼の制服の第2ボタンを
貰いに行った。
『制服の第2ボタン欲しいんだけど、
誰かにあげる約束している?』
『いや、していないけど。
実はこれ、高校の制服だから第2ボタンは
渡せないんだ』
『え、そうなんだ
』
『でも、スペアボタンでよければいいよ』
と言って、制服の内側からボタンをちぎって
渡してくれた。
『ありがとう
』
確かこんな会話を交わした。
地方なので多少の方言が入っているが。
最近テレビでよく見る
ガー◯ミルクチョコレートのCM。
広◯すずのストーリーを見てドキドキした。
私のバレンタインデーの記憶をたどって
いたら、思い出した青春の一コマ。
今、その彼は私鉄沿線にある大学の
教授をしていることを何年か前に
インターネットサーフィン中に知った。
顔写真はあの頃の面影を残し、
素敵なおじさんになっていた。
