郡中 町家の屋根瓦
見あげてごらん町家の屋根を
日本瓦は、日本家屋の象徴ともいえる屋根材です。昔は日本の建物は日本瓦で守られてきました。しかし最近では、建築コストが高いことや分譲住宅が増加していることなどが原因となり、あまり目にすることもなく、消えつつあります。日本瓦は、メンテナンスしなくても50年以上は持つ非常に耐久性の高い屋根材です。
懐かしの品 日本瓦(和瓦)
①本瓦葺き(ほんかわらぶき)
瓦は屋根材として、火事などの防火対策のために、江戸時代に急増しました。平瓦と丸瓦を交互に組み合わせ並べていきます。古くから使われている方法で重圧感、曲線美などが表現できます。
②軒丸瓦(のきまる)
本瓦葺きの丸瓦の軒部分に葺く瓦のこと。
③桟瓦葺き(さんかわらぶき)
桟瓦を葺くことを桟瓦葺きと言います。本瓦葺きのデメリットである重量が重くなることを解消するために作られた波形の瓦です。
④虫籠窓(むしこまど)
江戸時代後期の天明年間(1781~1789)頃から、町家は二階の天井が通常より低い厨子二階(づしにかい)の窓にすることが多くみられます。役割としては通風や採光、温度調節、防火対策など、堅格子(たてごうし)を土や漆喰で塗り回した土格子の窓を、虫籠窓と呼びます。窓の形が「虫かご」に似ていることから由来して名がつけられました。
⑤鬼瓦(宝珠と波)
鬼瓦とは、寺院や城郭、一般家屋などの日本式建築物の棟端部などに設置された瓦の総称です。「宝珠と波」宝珠を得るとどんな願いも叶い、欲しいと思っている宝物を作り出すといわれています。
鬼瓦裏
また、魔除けや吉祥などの思いを込めた瓦で、当時は贅沢品として扱われていました。向かって右に安政の辰六月、 左側には瓦職人 郡中主人 小田屋金右衛門の名前が書かれています。江戸時代に正岡屋が酒造業をしていた時の鬼瓦です。
⑥「足付」鬼瓦(水)
鬼瓦に「水」をつけているのは、火災除けのお守り。昔は火事の類焼を恐れていたので瓦屋根に防火対策として書かれています。鬼瓦の設置している個所は全て雨終い、つまり雨漏りがしないようにつくられた物なのです。
鬼瓦は魔除け、縁起物など思いを込めて屋根に使われています。日本建築の家は、見上げてみると色々な模様の瓦があり興味があれば楽しめると思います。
⑦「足付」鬼瓦(打ち出の小槌)
「打ち出の小槌」とは振ることにより様々なものが出てくるとされる伝説上の槌(つち)。鬼の持つ宝物とされるほか、大黒天の持ち物であるともいわれ、富をもたらすと言われる縁起のよい鬼瓦です。
⑧「足付」鬼瓦
一般的に鬼瓦と聞いてよく発想されるのが、鬼の顔ををした鬼面です。しかし鬼面の瓦が乗っている一般民家の屋根は、ほぼ見たことがありません。縁起物といわれる、雲や波をあしらった覆輪(ふくりん)という形の物やシンプルな線を描いた物などがあります。
「足付」(あしつき)とは、鬼瓦の頭の部分と足の部分が別れているものを呼びます。昔の人は、家を守る為、家族を守る為に、鬼瓦に願いを託していたのでしょう。
⑨「一文字」鬼瓦
「一文字」とは鬼瓦の下端が一文字(直線)に造られた鬼瓦のことです。下り棟や隅棟などで使われます。
⑩古瓦
古瓦は職人さんが瓦を叩いて音を聞き、使えると判断されると床の下などにしまっておいてくれました。モノを大切に使い続けるという姿勢のあらわれです。いまでは廃れて、見かけることが殆んどなくなりましたが、物を大切にする心がけは受け継ぎたいものです。
現代ではその建築様式の変化からあまり目にすることもなくなったため、鬼瓦と聞いてもピンとこないかたもいるのではないでしょうか。一方でその精巧なデザインが評価され、今や屋根の上から室内のインテリアに置き場所をかえ、注目を集めつつあります。鬼瓦をはじめ、いろんな表情の瓦があります。見あげてごらん町家の屋根や神社の屋根を日本瓦職人の心意気が感じられませんか。