世界に誇れる日本の下駄 ③
下駄職人の道具
下駄は、草履と共に日常生活の主役でしたが、靴の普及で使用される機会が少なくなりました。下駄磨きや鼻緒をすげる時に使用する道具は、履物屋専用の道具であまり眼にする機会がないと思います。古い道具は昭和初期・中期から使用している道具で、今現在入手不可能なものがほとんどです。下駄職人独特の道具は多いのが特徴で、一人前になるのは10年位かかると言われています。道具の呼び名は地域などにより違うようです。
懐かしの品 伝統工芸の下駄づくりを習得する道具類
下駄仕上げ(磨き)
①紙やすり
基本的には職人さんが仕上げてくれていますが、木地を整える時、細かい気になる部分に紙やすりを当て研磨することで、仕上がりに違いが出てきます。
②浮造り(うずくり)
桐下駄の仕上げに台の表に砥粉(とのこ)を塗ります。「浮造り仕上げ」とは、かるかやという植物の繊維を筒状に束ねて作った「うずくり}という道具で表面をこする仕上げ方法で、白木の木目を浮かびあがらせるために使います。
③瀬戸玉(たま)
下駄の表面に「天然の蝋」を塗ってうづくりで艶を出し、「玉}と呼ばれる瀬戸物で丹念に磨きをかけることで、より木目の美しさを引き立たせることができます。
鼻緒(花緒)をすげる時に欠かせない道具
(履物は、鼻緒のすげ方次第で履きやすくも履きにくくもなります。)
④金槌(かなづち)
鼻緒の先を金槌でたたき、下駄台の穴に通し易くしたり、前緒の鼻緒の所に、前金(中央の金色金具)を打ちつける時に使います。金槌のサイズも色々あります。
前金
⑤鑢快り(やすりくじり)・ガンギリ
下駄のツボ(鼻緒を通す穴)に差し入れて穴を広げ鼻緒を通し易くする道具です。表面の穴が開いていないときは、くじりで開けます。やすりくじりは、穴に差し込む部分がヤスリのようになっています。昔の鍛冶師の細かい作業に、すごさを感じる下駄用道具の一つです。
⑥快り(くじり)・くじり目打ち
穴を開けるキリに似た道具で穴を開けたり、結び目をほどくのに使用する先のとがった道具のことです。鼻緒の端を処理するときや、鼻緒の麻紐を操作・調整するときにも使います。これは鉄製ですが、今でもステンレス製などで作られ売られています。
⑦緒伸ばし・鼻緒引き
鼻緒の前緒をすげて前坪を引っ張る時に使用する道具です。ツボ引き(緒のばし)ともいうようです。古い下駄道具で、今では手に入りませんし、使う下駄職人も少なくなっています。
⑧小型ペンチ・やっとこ・ラジオペンチ(先端が細い)
物を挟んだり、曲げたりする際に使う工具。また、前金を釘で打ち損じ、釘を引き抜く時などにも使います。細工用
⑨木鋏(はさみ)
自分の手に合った使いやすいもの。刃持ちや切れ味良く、重さも程よく使いやすいはさみです。竹の皮や麻紐(前尾・後緒)など自然素材の不要部分を処理する時に使います。
⑩指ぬき金具
針練り作業をする人にとって、指を保護する道具です。今では作られていない珍しい金属製の道具です。昔は指を守る道具として鍛冶屋さんが作っていました。
下駄屋で使う道具ではございませんが、有ると役に立ちます。
⑩千枚通し
手を使って小さな穴を開けるための文房具です。
⑪竹尺等
和裁ものさしでが、下駄の寸法などを測る時に使います。
⑫木槌(きづち)
木釘・竹釘などを打ち込むための工具。木製なので金属に傷がつきません。
⑬鉈(なた)
昔の刃物は鋼(はがね)が丈夫で、良いものが多く研ぐことで、ずーっと長く使い続けることができます。
⑭手ぼうき・ちりとり
掃除道具。狭い場所で塵をとる時に、埃が経ちにくく軽くて便利です。室内掃除用に最適な手ぼうきとちりとりです。
下駄を履くことが、ほとんど無くなっています。下駄は履きごこちが良く、木の板で圧迫されるので血液の循環がスムーズになり、脳の働きがよくなる。そして姿勢もよくなると言われています。下駄専門店では、台と鼻緒をそれぞれ選んで自分だけのオリジナル下駄を作ることもできるので、自分のセンスを発揮する楽しみもあります。下駄の良さを知って履く人が増えたらいいなと思います。