世界に誇れる日本の下駄 ②
美しい姿勢へ導く木の履物
下駄は、江戸時代以降、昭和30年代頃までは多くの家庭で日常履きとして親しまれてきました。今でこそ夏に履かれる履物ですが、足袋に下駄ならよそ行きにもなり、一年中履くことができます足をのせる木製の台に歯をつくり、三つ孔に鼻緒・花緒(はなお)をすげた(通した)もので、足の親指と人差し指の間に鼻緒(花緒)を挟んで履きます。国産の桐を使用した下駄は、丈夫で長く使えます
懐かしの品 下駄と鼻緒(花緒)
①籐表(とうおもて)の下駄
台に籐皮で編んだ畳表を貼りつけた下駄。さらっとした柔らかい履き心地で履いていくうちに足に馴染んで履きやすくなります。表付きの下駄は正装履物の中で最も格式高い履物が畳表を使用したものです。清潔感がある籐表です。
籐表
手で編んで作ったとても貴重な物現在、籐を編める職人さんが日本全国に数人しかおらず、しかも高齢化によってこの技術を継承する人物がいなくなっており、そのため、貴重な履物になっております。足元が「ひんやり」した感覚が味わえ、足が蒸れにくく快適な逸品です。
籐表の裏側
昔の籐表の裏側を見ると一本一本結んでいるのが分かりますか?この結び方は「かえるまた」と呼ばれる結び方で、漁師さんが切れた網を補修する時に結ぶ仕方だとお聞きしました。現在はこの編み方ではございません。100年先も優しく寄り添う籐表
②畳表(南部表)母親と女児用の下駄
畳表の素材は、イ草ではなく、竹皮です。編み方は「南部表」→目が細く詰まっており、編み目が真横真っ直ぐに近い形、そして踵の部分に「ヘソ」があります。畳表を貼り付けた、ワンランク上の華やかな下駄です。
③畳表(南部表)子供用下駄
竹の皮を丁寧に裂いて色むらが無いよう仕上げている畳表を、台にを貼った男児・女児用の下駄です。一度きりの贅沢小さい頃から本物を・・・そんな親御さんが履かせたい下駄かもしれません。また、最大のこだわりは編み目が細かく滑らかな表面で、リッチ感が味わえる畳表の台です。
④本天(ビロード)太鼻緒
ベルベットのようなビロード素材で柔らかで上品な手触りと深い光沢感が特徴です。歩きやすい幅広タイプは男女関係なくお揃いで作ることができます。大人物鼻緒を短くして、子供用の台にすげることもできます。
⑤本天(ビロード)鼻緒(花緒)
ビロードのことを本天(ほんてん)と呼びます。本天=ビロード=裏毛 ビロード仕上げになっているため、足触りが優しくソフトです。鼻緒は左右1セットで1足です。鼻緒の「鼻」は先端のこと。「緒」はひものこと。
⑥合皮鼻緒(花緒)
ナイロンやポリエステル生地の上に、ポリウレタンをはじめとした樹脂層をコーティグして作られます。天然皮革と比べ取り扱いやすいのが特徴です。色とりどりの鼻緒があることから「花緒」とも書きます。最もファッション性のある大事な要素が鼻緒です。
⑦鼻緒の材質
緒の材質は様々で、古くは麻、棕櫚、稲穂、竹の皮、藁などに、中綿(灰色)がしっかり入り、固い紙芯のまわりに薄紙を巻いて、これを表布で覆って仕上げていました。現代の鼻緒の既製品は、麻縄を芯にして心材とクッション材を巻きつけたものが一般的になっているようです。
⑧下駄の前金(まえがね)と下駄の先の補強
前金とは下駄の鼻緒をすげた時に、前ツボの部分を隠すために被せる金色(こんじき)に輝く金具のことです。昔はアスファルトの道ではなく、土の道だったために、下駄の裏側の前ツボ部分がよごれないようにとか、鼻緒部分が擦り切れないように保護するためにつける金具です。又、下駄の先が擦り減る(ちびる)のを防ぐために皮を貼って補強しています。昭和の時代は、下駄屋もたくさんあり、大切(だいじ)に下駄を履いていました。
⑨男物下駄(紳士下駄)
下駄の天板の形について(見た目の形)、向かって左が大角(おおかく)下駄で最も幅広い下駄の形です。いわゆる下駄と聞いて思い浮かぶ形です。右側の下駄の名前は大下方(おおげほう)下駄と言います。大角の幅を詰めた形で、爪先側よりも踵(かかと)側を絞ることでほっそりと見せる形です。
⑩足駄(あしだ)
歯の部分が高く「高下駄」と呼ばれたり、「雨下駄」とも言われます。お寿司屋さんや割烹料理屋さんの板前さんなどが履いているイメージがあるかもしれません。
⑪女物下駄(婦人下駄)
向かって左側の2足が小判形下駄で右近下駄や舟形下駄といった台に採用されることが多く、女性らしい丸み帯びた形です。右の天板の形は芳町(よしちょう)下駄と言い、もともと日本橋芳町の芸者さんが好んで履いたことからこう呼ばれるようになったそうです。細見に見せる形です。
⑫女物褄皮・爪革(つまかわ)付き下駄
下駄などの先端に雨よけや雪よけのために付ける革やビニールの覆いを爪先に掛けます。防寒のためにも使用することもあり褄皮(爪革)と言います。女物は、先革(さきかわ)の覆いにゴムひもをつけ後歯のところで止めます。
⑬桐下駄歯の補強
歯の部分に別の材木の丸い芯が差し込んである下駄を見たことがありますか?高級な桐下駄には、すり減りにくくするために、強度を高くする補強がしてあります。
⑭差歯下駄(さしげた・さしばげた)
台に別に作った歯をとりつけものは「継歯(つぎは)」「挿し歯(さしば)」と呼びます。台の歯の樹種(カシ、ホウ、ブナなど)があり、歯に柔らかく粘りの強い材を使ったものもあります。
国産の桐で下駄を採ろうとすると30年位の丸太を切ります。良い桐下駄であれば60年は掛かるそうです。気が遠くなってしまう話ですよね。いきなり製材してしまうと狂いが生じるので、伐採して丸太の状態で1年。乾燥させ、あく抜きをして1~2年かけて加工へと移っていきます。あらためて下駄を大切に履きたい気持ちになります。
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