香取慎吾明治座公演 さく咲くわいわいがあまりにも素晴らしすぎて、いまだにうまく言葉にすることができないのだが、何とかしてそれを言葉にせねばならない、あの素晴らしい公演を見た私にはその義務があるという強迫観念に駆られてこれを書いている。
私は香取慎吾は比類なき天才だと思っているが、彼の才能の本質はSMAPの活動でこそもっともよく発揮される種類のものだとも思っていた。つまり新しい地図の彼の活動は、その才能の一番の発露の場を失った状態でスタートしたと思っている。並みの天才なら潰れてもおかしくないところだが、彼は新しい環境で新しい活動を次々とはじめていった。アート、ファッション、演技、そしてソロの音楽活動。その全てにおいて、彼はこれまでのSMAPでの経験を活かしつつ、新たな世界を切り開くことに成功している。アーティスティックな感性を、新しい環境のもとでさまざまな現実的な条件と折り合いをつけて形にしていくこと。彼が自然にやっているからそんなものかな?と思ってしまうが、本来は、かなり特別な能力の持ち主にしかできない離れ業だろう。
さく咲くわいわいは、そんな彼の全ての活動のエッセンスが注ぎ込まれた総合芸術になっていた。もちろん、ステージ作りも現実的な条件との折り合いの連続だとは思うが、そこで表現されていたものは完全な自由を感じさせる美しさに満ち、天才のひらめきがそのまま形になった新鮮さに溢れていた。それだけでも驚嘆だが、ここが一番肝心なところ、その中心にある慎吾くんのパフォーマンスが完璧と言って良いほど素晴らしかった。いや、ダンスも歌も彼が本気を出したら素晴らしいことは知っていたが、それを両方、ここまで完璧に、しかも約3週間に及ぶ長丁場の公演で、たった1人で休むことなく90分、毎回表現できることに心から驚いた。この感動は、例えて言うなら一流のアスリートが心身ともに最高に充実して発揮するトップパフォーマンスの美しさを目撃した時の感動に近い。そのような瞬間を見られることは、ファンならずともとても幸運で貴重なことであり、ファンにとっては一生忘れられない宝物のような体験である。
もともとSMAPは表現力に長けたグループで、彼らのパフォーマンスはお茶の間の門外漢の心を揺り動かす力があった。その一員だったのだから彼に力があるのは当然だが、それにしても、あれだけ多種多様な音楽で、歌い回しなどかなり難しい難曲を、全て見事に歌いこなし、一つのステージとして表現できることには本当に驚いた。私は2016年来ずっと「香取慎吾は宇宙一の天才である」と主張して来たのだが、そんな私ですら心の底から驚いた。そしてあのステージに立っただけで会場の全てを支配できる圧倒的なオーラ。あの存在感は天からのギフトとしか言いようがない。しかも彼はその使い方を誰よりも理解していて、完璧にコントロールし、自分の表現に活かしている。彼は天から与えられた天才の持ち主だが、その才能を自分でコントロールすることができる、世にも稀有な天才なのだ。彼はステージに立つために生まれて来た人間であり、更にその才能に相応しい場所を、他でもない当の本人が作ることができる。そのことがよく分かるステージだった。
公演を見ていない人は、いったいどんな内容だったのかと思うだろう。まずベースとしてはアルバム「20200101」があり、最新曲「Anonymous」を加え、更に彼の出演CMや主演作品、YouTubeでの活動に関する音楽にも楽しく触れながら展開する、緻密に構成されたショーである。「20200101」はさまざまなアーティストとのコラボ曲で構成されているのでバラエティ豊かだが、歌われているテーマとしては「香取慎吾」であり、彼の内面がさまざまに表現された作品といえる。その曲たちを、一つ一つの世界観に合わせたステージ演出で、三面のモニターに映される映像、ダンサー、そして本人のパフォーマンスで表現していく。(一部生演奏もある。)道具立てとしてはかなりシンプルだが、表現内容はとても濃密で、つなぎの部分も含めて一瞬たりとも退屈する瞬間がない。MCは基本的に彼がスマホで打った文章がモニターに映し出される。観客が声を出せないこのご時世に対応したユニークな仕掛けである。曲中のモニターでの演出に彼のアート作品が使われたり、途中で彼のファッションブランドのファッションショーが入ったり、ステージ下の通路に彼の生み出したイマジナリーフレンドである「黒うさぎ」がいたり、音楽だけでなく、彼のさまざまな活動が活かされている。自分を1人で表現するソロステージだが、ひとりよがりになることは一切なく、ユーモアと愛に満ちている。そのバランスは彼が芸歴30年で培って来た、私たちがよく知っているものでもある。本人は「この世にはない何かを作ろうと思った」と言っていたが、まさにそこで展開されていたのはステージ芸術としか言いようのないものだった。ファンだから大袈裟に言っているのではない。千秋楽にゲスト出演したKREVAさんが「近年見た中で余裕でトップ5に入る素晴らしいエンタテインメント」と絶賛していたが、決してお世辞ではないだろう(そもそも氏はそんなに簡単にお世辞など言う人ではない)。 #さく咲くわいわい はポップを愛する全ての人、ステージ芸術を愛する全ての人に向けて神が天才を通じて与えてくれた贈り物である。DVDも発売される予定だが、あの素晴らしいステージを1人でも多くの人に見て欲しい。香取慎吾=可愛い末っ子キャラの女子供向けアイドルといまだに思っている人も多いと思うが、本当は実際に見るとめちゃくちゃ怖い。大抵の日本人なんか簡単にひねりつぶせるであろうあの巨大な体躯にオーラを纏った姿。もはや鬼である。映像からでも十分確認できるあの怖さだけでも一見の価値があるので是非見ていただきたい。そして機会があるなら是非生で見て欲しい。




