香取慎吾NIPPON初個展 BOUM!BOUM!BOUM! 行ってきました。楽しかった!!きっと子供から大人まで誰でも楽しめると思うので、たくさんの人に見てもらいたいと思いました。会期は6月16日まで→ https://boum3.com/
とても興味深く感じたのは、パリで見た時と印象が違って見える作品がけっこうあったこと。会場の雰囲気や照明、展示順、展示方法などいろんな要素があると思うけど、シンプルなタッチのポップな絵が今回はとても面白く感じた。パリの会場はルーブルの中世の城壁の遺構にネオンでつくられた現代アートが飾られているという、かなりクールで重厚感のある場所だったので(確かに通路でもあるのだが「シャルル5世ホール」と名前がついているだけあり単なる通路では全然ない)、そこに展示されている慎吾くんの作品は、明らかに異物として場所との対照を良い感じに成していた。今思えば、そのような状況下では、強度のある作品がより際立って見えていたのだと思う。今回は、劇場という場所、ステージ照明、スモーク、座席に座ってオープニングムービーを見るなどショウアップされた雰囲気があるので、美術館でファインアートを見る時のような厳粛な気持ちにはあまりならないし、ファインアートに対するポップアート、とかいうような余計なことをこちらが勝手に感じることもなくてすむ。言ってみれば、慎吾くんが歌い踊るのを見る時にいちいち「この人は正規の舞台教育を受けていない」とか考えたりしないでわくわくするのと同じような感じで「どんな面白いものが見られるのかな!?」と素直にわくわくする気持ちで作品を鑑賞できる…ような気がする。素敵な照明に彩られた作品たちは水を得た魚のようにいきいきと、堂々として見える。
過去の作品たちを見たらきっと誰もが、30年間休む間もなく活躍してきた彼が皆の知らないところでこんなエネルギーに満ちた作品群を発表のあてもなく描き続けてきたという事実自体に驚嘆するだろう。そして陰のある作品たちやそのキャプションからは、パブリックイメージにはない繊細な一面や、今になっても誰も真実を語ることのできないSMAPをめぐる諸問題についての当事者の思いを読み取ることもできるかもしれない。ここには誰も知らなかった香取慎吾の姿がある。もしかしたらスキャンダラスともいえるかもしれないレベルで。でもこの個展はそこを主眼にはしていない。おそらく彼の作品を初めて見る人は「あの香取慎吾が絵を描くとは?芸能人の趣味程度のものなんじゃないのか?」という疑念が心の中にあるだろう。でも爆発的なエネルギーと強烈な創作衝動に突き動かされ、自分の描きたいものを心のままに描いた大量の作品群を見ているうちにそんなことはすっかり忘れてしまうだろう。この個展のキャッチコピーに丸裸がどうとかいうのがあったけれど、香取慎吾が丸裸というよりも、見ている側の邪な考えやごたごたしたものが取り除かれ気づいたら妙に素直な気分になっている。丸裸になっているのは我々の心の方なのである。
既発表作品にも好きなものがたくさんあるけれど、私は最新作のオブジェが最高に良いと思った。「オブジェを作っているときは攻撃的な気持ちになる」とかキャプションに書いてあったけど、攻撃的なオブジェをこれからどんどんたくさん作っていってほしい。異様にカラフルな踊る土偶(アクセサリーがいっぱいついててかわいい)「SPACE DANCE」、とげとげした謎の物体「Shut Up」、マウスピース型を拡大した「カムカム」素晴らしかった。おそらく本人の鼻を型取りしてキャンバスに貼り付けてある「福鼻」も良かった。常に死ぬほど忙しそうなのによくこんなものが作れるなと不思議でならない。いつ寝ているのか。本当にどうか健康には気を付けて欲しい。慎吾くんが倒れたらとてつもなくたくさんの人が途方に暮れてしまう。なんならこの個展の企画で人間ドックとか行ってほしい。結果を発表しろとまでは言わないから。w
あとブログの絵も良かった。本当に小さい紙に書いてあるの。よくなくさないでいられるなっていうくらい。でも、いつも唐突に送られてくる頭のおかしな友だちからの頭のおかしな私信が急に公になってるみたいな感じがしてちょっと動揺した。私の中ではあのブログは本当に心の中でこっそり読んでる感じのものだからw これが最後に飾られてるところもなんか良い。友だちに会ったみたいでほっとして親密な気持ちになる。
ステージBの「弱き強さ」と「Lie.ARIGATO」は、パリの時はけっこうメインを張っていたと思うのだけどw、今回はマネキンとドーム型オブジェの後ろに控えている感じになっていてちょっともったいないような。この2作品は私の中では今のところ代表作ぐらいのすごい作品だと思っているので、もっとバーンと出して欲しいのだが。でもマネキンを見て「わぁ!」って言ってる人もたくさんいたのでそれはそれで良いのかなぁとも思ったり。
でも考えてみたらこの個展は「NAKAMA de ART」ではないんだね。そのタイトルではNAKAMAじゃない人にアピールしなそうだから?「弱き強さ」は「NAKAMA de ART」の理念を表しているような作品で、派生作品であるブロンズ「&」やキャプション、最後に撮れる写真(来場者が「&ボーズ」で写真を撮れる)などを含めてとても感動的なのだけど、この個展ではそこをことさらに強調してはいない。そしてたしかに、それが今回のメインテーマというわけでもない。さらに言うならこの個展はテーマの柱を「香取慎吾の身体性に起因するアート」と謳っていて、確かに身体性をテーマにした新作もあるけれど、もともと慎吾くんの創作の重要なモチーフとして身体性は存在していて、今回の個展に際して新たに取り組むテーマということでもないと思うし、新作ももともとの傾向を素直に伸ばした延長線上にあるものという感じがする。
基本的に慎吾くんの作品にはそれほど特別な仕掛けがあるわけではない。レアというかロウというか、ローファイというかローテク、アンプラグドな感じなんだけど爆発的なエネルギーがあふれていて、カラフルで多種多彩でユーモラスで光と影に満ちいきいきとしたパワーを放っている。エンターテイナー香取慎吾の表現よりも混沌としていて、素直な感情を感じ取れたり、内面の声が聞こえるような気がして身近に感じられたり、一方で本人にも説明不能な作品があったり、他人には理解できないような側面があったりして謎が深まったりもする。その面白さを、とくに背伸びしたり整理したりせず、ありのままに会場いっぱいに広げてみたよ、っていう感じの個展だと思う。全く気負いがない。むしろ一ファンである私の方が無駄に気負っているかもしれない。w
図録の対談もとても良かった。横尾さんや会田さんのような偉大な先達がお話ししてくださること自体慎吾くんにとっては大きな励みになるだろうし、横尾さんの「このエネルギーとこの無頓着な多様性」「クルマにたとえると全部交通違反」、会田さんの「度胸のある、恐れ知らずな、大胆なタッチ」などという評価も本人にとってはとてもうれしいものだと思う。私は香取慎吾ファンである以前に美術鑑賞が趣味なので、美術愛好家として慎吾くんの作品は良い!と思ってはいるのだけど、いかんせんファンなので客観性に自信がない部分もあるw。でも、お二人の慎吾くんの作品についての言葉を読んで、やっぱり私の感覚は間違ってなかったと思えた。対談のダイジェストだけでも雑誌かネットで発表して欲しいと思うくらいに素敵な対談だったな。。 オープニングムービーは、初見では「言いたいことは分かるけど、慎吾くんの作品を見に来たのに急に他人の作品を見せられることに脳がうまく対応できない」って感じだった。でも慎吾くんの作品をはじめて見る人にとっては、ああいうのが緩衝材的な役割になってよいのかなぁ。もはや私にはよくわからないw 私としては、慎吾くんにあの劇場の特性を生かしたムービーを作って欲しい気がする。あんな風に分かりやすく綺麗な、プロっぽい作品じゃなくていいから。まぁそんな時間ないかもしれないけど。
とにかく作品自体が面白くてわくわくするからみんな是非見に行って欲しい。他の場所で個展を開くことは今後あると思うけど、この特異な劇場で見られることはもう二度とないと思うし、最初に書いた通り、会場によって作品の見え方が変わるので、もし同じ絵を見られたとしても今回のような体験はもう二度とできないから。もちろん、行きたくても行けない人もたくさんいるだろうけれど、何とか行ける人は何とかして見に行って欲しい。そして可能であれば、2回見て欲しい。情報量が多すぎて、多分1回目は途中で頭が容量オーバーになるはずだから。会期は6月16日まで→ https://boum3.com/















