「心理的安全性」という言葉、聞いたことありますか?
企業組織で人をマネージする立場にいる人なら、少なからず耳にしたことがあるのではないかと思う。グーグルが手がけた「プロジェクトアリストテレス」という社員の生産性向上の分析で一躍有名になった言葉。
でも実はこれ、グーグルが創ったわけではない。グーグルがプロジェクトを開始する10年以上も前、1999年にハーバード大学で組織行動学・心理学博士号を取得したAmy Edmondson氏が行った研究が最初の発端なのである。それなのに、なんだかグーグルの専売特許みたいに扱われて、孫引きみたいな解説ばかりが横行していたのは、Edmondson氏自ら執筆した書籍が、日本に紹介されていなかったから。
それが、ようやく、出た! この3月。
「恐れのない組織~『心理的安全性が学習・イノベーション・成長をもたらす」
ただ、この手の本にありがちなのだが、ちょっと研究者チックな部分があって、ケースが色々盛り込まれてるのはいいけど「結局、だから何なの?」部分もなきにしもあらず。
というわけで、じっくり本を読んでるヒマのない皆様のために、さっくりしっかりわかる「心理的安全性」の基本、以下の5つのポイントからご紹介いたします。
(1)心理的安全性とは何か?(定義)
(2)心理的安全性があると、どんなよいこと(成果)があるのか?
(3)心理的安全性は、なぜ大切なのか?
(4)心理的安全性が高いかどうかは、どうしたらわかるのか?
(5)心理的安全性は、誰が何をすれば醸成できるのか?
2番目については、グーグルのおかげで明らかかもしれないが、それ以外については意外に知られていないのではないか。特に(5)については、本書以外の研究論文も参照しながら解説しますので、乞うご期待。
ということで、最初は定義から…。
(1)心理的安全性とは何か?(定義)
心理的安全性の定義は、シンプルである。
「対人関係のリスクをとっても安全だと信じられる職場環境であること」
もちろん、なんとなく「心理的」に「安全」で、不安とか心配事がない、というぼんやりした意味ではない。
まず第一に、ここでモンダイとしているのは、職場における人と人との関係性である。自分が担当している業務をうまくこなせないんじゃないか、といった自分自身の不安や悩みがあるかないか、という話ではない。上司から嫌われるとか、職場でイジメに遭うとか、最悪メンバーの不興を買ってクビになるとか、そういうリスクのことである。
第二に、「対人関係のリスクをとっても安全」とは、例えば、会議で決まりかけた結論に関して問題点を発見してしまったとき、「今更こんなこと指摘したら、ふつーなら袋叩きに遭うかも」と思ったとき、勇気をもって発言しても、つまりリスクをとっても、実際には「袋叩きに遭わない」という意味である。
「ふつー」の定義は難しいが、乱暴に言えば、自分が何か意見を言おうとして、「ん? これ言うと、KYって言われるかも」「〇〇さんの顔をつぶすかも」「しかとされちゃうかも」みたいな気が、ふと頭をよぎるような、そういう場合のことである。
第三に、「信じられる」ということは、文字通り、自分がそう心から信じられる、という意味である。言い換えれば、上司がどんなに「ふつーならリスキーだけど、ここでは何言っても大丈夫だから、袋叩きにしないから、安心して何でも言ってね」と猫なで声を出しても、その言葉を信じるか否かは受け取る側次第。「んなこと言って、後でハシゴ外すんだろー」とアナタが思うなら、「心理的安全性」が確保されているとは言えない。
そして第四に、「職場環境」、つまり「ふつーなら袋叩きに遭いかねないような発言をしても、実際は大丈夫さ」と、アナタだけではなく、他の人たちも皆信じていること。職場全体として「大丈夫さ」という雰囲気があること。そういう「環境」が整っている、風土が醸成されている、ということである。
・・・その2に続く。。。