闇夜に浮かぶ光る船。
無数に並ぶ小さな丸い窓。
カラフルできらびやかな光がまたたく中に、思わず自分の姿を探してしまう。
そこにあるのは過去の姿?
未来の自分?
いずれにしても出迎えの、旅立ちの、帰還の標としての巨大客船。
残すものを惜しむ顔。
新たな期待に輝く顔。
愛しい人との特別な時間の共有に満ち足りた顔。
今か過去か未来か
どこかに思いを巡らせ思考にどっぷり沈み込んでいる顔。
無数に並ぶ窓に浮かぶ、無数の顔。
たとえそのどれか一つに私がいるとて
ここにいる私は彼女の船出を祝おう。
前進を。
進むべき場所へ。
何度目かになる船出を見ながら
帰ろう、と思った。
帰ろう
私が行くべき
待っている人がいる場所へ。
新たな始まりの待つ場所へ。