夏であるはずのその夜は


地軸が気まぐれをおこして反対側に傾いてしまったのではないかと思うくらい


しみいる空気が、冷気が街をすっぽりと隙間なく覆い


その下ですべてが息を潜めてあたりの様子を探っているような


確固たる重みと緊張感を含んだ静けさに満ちていた。