梅雨入り

気象庁は中国地方と北陸地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。

中国地方は平年より16日遅く、昨年より24日も遅い梅雨入りとなるそうです。

 

あの日の事

 

記憶の中で色褪せることのない、2018年7月の大水害。

私たちの拠点では、正面の道路から最高3m90cmのところまで濁水が押し寄せました。

「いちご一会」の拠点である倉敷市真備町は壊滅的なダメージを受け、50名を超える尊い命が奪われ、私たちの向かいにある大きな病院の屋上からボートで多くの人が救出される様子は、テレビで繰り返し流されました。

 

 

その写真を見ると、「あの場所か」と思いだされる方も少なくないでしょう。

あの日の光景は、今でも胸に刻み込まれています。事務所前の道路に押し寄せる濁流、パニックに陥りながら、ノートパソコンをナイロン袋に入れ、体に巻き付けて駆け上がった3階からも、水位がどんどん上昇していくのが目に入りました。

 

 

目の前の駐車場では、みるみる間に複数の乗用車が濁水の中に沈んでいきます。

 

 

私たちの拠点は3階建てであるため、水はそこまでは届きませんでした。そして、やがてやってきた自衛隊の救助ボートに乗った時、救助隊の方から優しい言葉で励まされた時の思いが、今でも鮮明に心に浮かびます。

 

水が引いた数日後、足を運ぶと、事務所も周囲も、がれきと泥の山と化していました。「こんな状況ではとてもこのNPO法人を継続することはできない。」前に進む希望を失いかけてしまいました。

 

次に、運営する畑へと向かいました。ここは障害のある利用者さんが、世話をしている場所です。「すべての作物は泥に埋もれて全滅だろう。」そう思いながら、ひどく埃の舞う道を進み畑に着くと目を疑いました。

 

ひときわ輝く紫の実が目に飛び込んできたのです。ガーデンハックルベリーは、力強く生きて輝いていました。

 

その時のガーデンハックルベリーの様子

 

その姿に、私は背中を押されました。「まだあきらめるな、やれる」

ほんの小さな命が、あの惨状の中で可能性を信じて前を向いていることに、勇気づけられました。私たちにも、一緒に這い上がろうというエールを送っているように思えました。

 

前へ進むことを決めた後も、町は大変な状況が続きました。

カエルの鳴かない初夏、ひどい量の土埃が舞う中、町の家々は1階の窓ガラスを外し、床板を外し、その家々から送風機の音があちこちで聞こえます。

 

 

真夏になり、真っ暗な町の夜は星が輝き、秋が近づいても虫の音は聞こえません。

送風機の騒音の昼間と、夜の異様な暗さ、静けさが、瀕死の町を感じさせました。

 

 

それから5年が過ぎ、街並みや人々の暮らしも、新たな歩みを始めています。

ガーデンハックルベリーも実を付け、私たちの健康的な食卓を支えてくれます。

 

小さな命の力強さを支えに、これからも地域に寄り添った活動を続けていきたい、そして苦境にある人にも、希望の一片をお届けできたらと思っています。