カクテル創作に必要不可欠なグラスには、さまざまな形や素材、模様などが用いられています。

「オールドファッションドグラス」は、背が低くて、円筒形の小形タンブラーで、容量は180~300mlです。古くから、そのデザインが酒器として使用されてきたものなので、「オールドファッションドグラス」と呼ばれています。口径が広くて、大きな氷も入るので、ウイスキーなどを、オン・ザ・ロックスにして飲むときに使用されます。

「カクテルグラス」は、カクテル用のグラスです。逆三角形のものが一般的ですが、ソーサー型のシャンパングラスのような、丸みのあるものもあります。脚の付いたラッパ状のものは、グラスを傾けずに飲めるので、「ショート・グラス」と呼ばれます。多くのカクテルは、このグラスを用いて飲まれます。容量は90mlが標準サイズで、材料60ml分で作ったカクテルを、これに注ぐとちょうどよい量になります。

「ゴブレット」は、一般的にコップと呼ばれているタンブラーに、脚の付いたグラスのことです。ソフトドリンクやビール、氷を多めに使用したロング・ドリンクに用いられます。容量は、240~300mlが標準です。

「コリンズグラス」は、背の高い、円筒形の大形グラスです。コリンズスタイルや発泡性のカクテルに用いられます。容量は300~360mlで、「トール・グラス(背高グラス)」、「チムニー・グラス(煙突型グラス)」と呼ばれこともあります。
カクテルには、さまざまなスタイルがあります。

「オン・ザ・ロックス」とは、ロックグラス(正式にはオールドファッションドグラス)に、大きめの氷を入れて作るカクテルです。

「クーラー」は、ベースとなる酒に、柑橘系のジュースとジンジャーエールなどの炭酸飲料を加えたカクテルです。ノン・アルコールのものもあります。

「コリンズ」は、コリンズグラスを用いて、スピリッツにレモンジュース、砂糖、ソーダをたっぷりと加えたカクテルです。フィズと似ていますが、フィズと違うのは、グラスが大きく、量もかなり多い点です。

「サワー」は、好みのスピリッツに、レモンジュースと砂糖を加えて、酸味と甘味を楽しむカクテルです。アメリカでは、原則として、ソーダを使いませんが、その他の国では、シャンパンやソーダなどを加えて満たす場合もあります。

「トディー」は、ベースとなる酒に、砂糖と水やお湯を入れて、レモン・スライスを加えたカクテルです。ホットの場合は、ナツメグやシナモンなどを入れて、香りを楽しみます。

「バック」は、ワインやスピリッツに、レモンの果肉や果汁とジンジャーエールを加えたカクテルです。

「フィズ」は、主にジンをベースとして、レモンジュース、砂糖、ソーダ水を加えて作るカクテルです。

「プーススタイル」は、酒などの比重の違いを利用して、重いものから順に、グラスに静かに注いで、美しい層を楽しむスタイルです。

「フラッペ」は、グラスにクラッシュドアイスを敷き詰めて、その上からリキュールを注いで作るカクテルです。

「CockTail(カクテル)」という言葉が初めて登場したのは、ロンドンで1948年に出版された「ザ・スクァイア/レシピーズ」という小冊子だと言われています。カクテルの語源にはいろいろな説がありますが、有力なのは次の3つの説だそうです。

・メキシコのユカタン半島の町「カンペチュ」にある酒場での出来事です。バーテンダーの少年は、雄鳥の尻尾に似た形をした木の枝で、ミクスト・ドリンクを作っていたそうです。あるイギリス人がそれを見て、「それは何ですか?」と聞きましたが、少年は言葉がわからず、勘違いして「コーラ・デ・カジョ」と枝の呼び方を答えました。そして、これを英語にそのまま訳した「Tail of Cock」が、「CockTail」に変化したそうです。

・アメリカ独立戦争のさなか、ニューヨーク市北にあるイギリス植民地のバーでの出来事です。女主人は、反独立派の大地主が住む邸宅から雄鳥を盗み、それでローストチキンを作って、独立軍の兵士に与えました。その時、ミクストした酒の入っていたビンに、雄鳥の尻尾を差していました。独立軍の兵士は、それを見て、その雄鳥の正体がわかり、「カクテルばんざい」と叫んだことから、ミクストした酒のことを「カクテル」と呼ばれるようになったそうです。

・ニューオーリンズでオープンした薬局の看板商品は、ラムベースの病人用の卵酒でした。そして、フランス人は、その飲み物を「コクチェ」と呼ぶようになりました。その後、病人だけでなく、一般の人のファンも増えていき、混ぜ物をしたコクチェのような飲み物を「コクテール」と呼ぶようになったそうです。

カクテルの技法「スライス/カット」、「スノースタイル」、「スクイーズ」について説明します。

「スライス」とは、薄切りにすることを言います。レモンを薄切りにすることを「レモン・スライス」、オレンジなら、「オレンジ・スライス」と言います。一方、「カット」とは、果物を薄切りにするのではなくて、何分の1かの厚さの縦切りにすることを言います。

「スノースタイル」は、グラニュー糖をグラスの縁にまぶし付けて、凍りついたような雪のように見せるカクテルの技法です。「スノースタイル」という表現は和製英語で、日本独自の呼び方です。英語では、「rimmed with sugar(salt)」=“砂糖(塩)で縁取る”と表現します。

スノースタイルの手順は、レモンやライムの切り口に、乾燥させたグラスの縁の外側を当てて、1回転させます。グラニュー糖を平らな皿に広げて、そこへグラスを逆さまに当てて、グラニュー糖を付けて引き上げます。砂糖の幅は、なるべく均一になるように付けて、カクテルの美しい見た目と、風味のアクセントとなるようにしましょう。

「スクイーズ」は、「搾る」ことを意味し、果物から果汁を搾ることを言います。オレンジやレモンなどを半分に切って、スクイーザーの中央にある尖った部分に切り口当てて、左右に軽く回して搾ります。余分な果物の果肉や皮に含まれる油まで搾り出してしまわないように、果汁だけを搾るように、優しく回すことがポイントです。

カクテルの技法「デコレーション」と「ピール」について説明します。

「デコレーション」は、カクテルを飾ったり、香りを付けたり、色彩に変化をもたせたりすることで、カクテルの個性を深めます。スタンダードカクテルでは、材料を混ぜ合わせる比率が同じであっても、使用する材料を変えたり、デコレーションをしたりすることにより、カクテルの名前が変わるものも多いです。そのため、デコレーションを行う際は、レシピに記載されている手順に従いましょう。

もちろん、工夫とセンスによって、さまざまなデコレーションが可能なカクテルもあり、これもカクテル創作の楽しみの1つと言えます。いずれにせよ、カクテルの風味や香り、そして彩りの調和をよく考えて、カクテルを楽しみましょう。また、アメリカでは、デコレーションのことを、「ガーニッシュ」と表現します。

「ピール」とは、果物の皮の小さなかけらのことを言います。カクテルレシピにおいては、レモンやライムといった柑橘系類の皮を薄く切り取って、皮に含まれている芳香効果のある油を絞り、カクテルの香り付けをするために用いられます。

ピールは、レモンやライムなどの皮を、直径2、3cmの円形や楕円形に切り取って作ります。皮の白い部分まで切り取ると、苦味が強くなってしまうので、薄く切り取るようにしてください。その手順は、ピールを中指と親指で挟みながら、カクテルの表面に油が広がるように、人差し指の腹で皮を押さえて絞ります。グラスの20cmほど斜め上から、油を軽く飛ばすようにします。

また、指先で皮をひねり、カクテルに果物の皮に含まれる香りを移す技法を「ツイスト」と言います。
カクテルの技法「コーラル・スタイル」、「ダッシュ/ドロップ」、「フィンガー」について説明します。

「コーラル・スタイル」とは、リキュールやシロップを使用し、グラスの縁に、塩や砂糖を幅広くまぶし付ける方法です。手順は、リキュールやシロップを器に入れ、そこへ乾燥させたグラスを垂直に入れて、多めにシロップをグラスの縁に付けます。それを、塩や砂糖を5cm程度入れた平らな器の中に、逆さまにして差し込んで引き上げます。グラスの内側に塩が付いたら、きれいにグラスタオルなどを使って拭き取ってください。

次は、「ダッシュ/ドロップ」についてです。カクテル作りの仕上げに、リキュール類やビターズ(苦味酒)を少し振って、カクテルの味を引き締めます。ビターズボトルの持ち方は、中指と人差し指で、すくうような感じで持ちます。ビターズボトルは、一振りすると1ダッシュ(約1ml)の量が出ます。また、ビンを逆さにして静かに振ると、1ドロップ(約0.2ml)の量が出るようになっています。ビターズボトルは、カクテルのレシピに必ず登場する、ダッシュやドロップを量るために必要な容器です。できるだけ、用意しておきましょう。

「フィンガー」は、薄づくりの8オンスタンブラーの下部に指を当てて、指1本分を注ぐと約30mlとなり「シングル」、指2本では約60mlで「ダブル」に相当します。これを「ワン・フィンガー」、「ツー・フィンガー」と言います。

どんなカクテルを創作するにしても、材料の容量を量ることは同じですが、どのような技法で作るかは異なります。それでは、カクテルの基本技法を紹介します。

「ビルド」は、直接、材料を飲用グラスに注いで提供する技法です。一番簡単な作り方で、すぐに作れるものがほとんどです。炭酸飲料を入れる場合は、かき混ぜ過ぎると炭酸ガスが抜けて、水っぽくなってしまうので、バー・スプーンを使って、1~2回転軽くステアして止めましょう。また、エキス分の高いもの(リキュールなど)を使用する場合は、比重によって、グラスの底にどうしても沈んでしまうので、軽くバー・スプーンを持ち上げるような感じで、2回転程度回して、上下を均一にしてください。

「ブレンド」は、ブレンダー(ミキサー)を使用して、材料をすばやく強力に混ぜ合わせる技法です。この技法を用いるのは、材料にクラッシュドアイスを入れて、シャーベット状にしたフローズン・カクテルを作る場合や、バナナやイチゴなどのフルーツを溶かして、フルーティーなカクテルを作る場合です。

本来、材料をカップに入れる順序は、レシピに記載されている順ですが、ブレンドで作る場合は、先にクラッシュドアイスを入れても構いません。また、フルーツを入れる場合は、先にフルーツを入れて、その上にクラッシュドアイスを加えると、フルーツが酸化して変色してしまうのを防ぐ効果があります。クラッシュドアイスの量によって、液状のカクテルにしたり、シャーベット状のカクテルにしたりできるので、好みにより加減してください。

カクテルの基本技法の1つである、「ステア」について紹介します。

「ステア」とは、ミキシング・グラスに材料と氷を入れて、バー・スプーンを使って、早くかき混ぜて作る技法です。混合させる酒の比重が同じくらいの場合や、ドライな風味のカクテルを味わいたい場合、また、シェイクすると濁ってしまう場合に用いられます。

それでは、ステアの手順(右利きの場合)を説明します。

1、バー・スプーンを使ってステアする場合は、ミキシング・グラスの下部を、もう片方の手で押さえます。少量の材料を用いて、カクテル1杯分を作る時は、小指をミキシング・グラスの下に入れて、混ぜやすくする方法もあります。ステアしてすぐに注げるように、あらかじめグラスの注ぎ口は、左側に向けておいてください。

2、材料と氷をミキシング・グラスに注ぎ入れて、バー・スプーンを、ミキシング・グラスの内側を沿らせるようにして、すばやく回転させます。15~20回くらい回転させるのが目安ですが、時間をあまりかけると氷が溶け出て、水っぽいカクテルになってしまうので、加減に気をつけてください。

3、ステアし終わったら、バー・スプーンを置いて、ミキシング・グラスにストレナーをはめ、グラスに注ぎます。注ぐ時は、人差し指でミキシング・グラスの突起を押さえて、グラスからストレナーが外れないようにします。

4、左手をグラスの下部に添えて、グラスを支えるように注ぎます。

左利きの人は、手を左右逆にしてください。

カクテルの基本技法の1つ「シェイク」について紹介します。

「シェイク」は、シェーカーに材料と氷を入れて、強く振って混ぜ合わせる技法です。シェイクすることによって、アルコール度の高いお酒を飲みやすくしたり、混ぜ合わせにくい材料を、すばやく混合させたりするのに効果的です。

まず、材料と氷を、シェーカーのボディーの8~9分目ぐらいまで入れて、ストレナーとトップをかぶせていきます。シェイクしているうちに、中に入れた材料が染み出ないように、真っ直ぐにはめてください。好みの冷たさに早くなるように、すばやくシェーカーを振りましょう。

シェーカーの持ち方(右利きの場合)を説明します。

手前にトップを持ち、右手の親指で押さえて、ボディーを薬指と小指の間に挟みます。中指と人差し指はボディーに添えて支えます。左手は、中指と薬指の第一関節まで、ボディーの底にまわします。親指は、ストレナーを押さえて、ボディーを人差し指と薬指で軽く挟みます。必要以上に、手をシェーカーに密着させると、シェーカーに手の熱が伝わって、氷を溶けやすくしてしまうので注意してください。

シェーカーは、胸と肩の中間辺りの、身体の正面よりやや左側の位置で、真横から見ると水平になるように持ちます。そして、15~16回前後にシェイクします。ただし、生クリームや卵などの、混ぜにくい材料を使用する場合は、30回ほどシェイクしてください。シェーカーを持つ指先が冷たくなって、シェーカーの表面に霜のようなものが付いたら、トップを外して、ストレナーを人差し指で押さえながら、グラスに注ぎます。

左利きの場合は、手を左右逆にしてください。

酒類に何も混ぜずに、そのまま飲む飲み方を「ストレート」と言うのに対して、酒や飲料などを数種類混ぜ合わせて作るミクスト・ドリンクを総称して「カクテル」と言います。カクテルは、3000~5000種類もあるそうです。チューハイやサワーもカクテルの一種です。

カクテルの歴史は、酒類が誕生したのと同時期にまでさかのぼります。

古代ローマでは、ワインに混ぜ物を加えて飲んでいたそうです。また、古代エジプトでは、ビールの中に、ショウガやハチミツを混ぜ合わせて飲んでいたそうです。12~17世紀の中世ヨーロッパでは、スピリッツ類やワインなどに、薬草などを加えて、ホットドリンクとして暖めて飲むのが流行していました。そして、蒸溜酒技術の普及につれて、レシピが増えていき、社交界でもカクテルが飲まれるようになりましたが、この頃カクテルに使用していた氷は、湖や川などに張ったものを使っていました。

器具を使用して、氷で冷やして作る現代式のミクスト・ドリンクのカクテルとなったのは、製氷機が発明された1879年以来です。カクテルが最初に開花したのはアメリカで、第一次世界大戦とともに、アメリカ人が世界に普及させ、第二次世界大戦が終わる頃には、ヨーロッパでも飛躍的に発展していきました。

日本に入ってきたのは明治初期のことで、「カクテル」という名前が、東京の人々に知られるようになったのは、大正元年に、バーが下町に出現するようになってからです。