不幸を売る少女は、ついにおじさんにすべてを託す事を決意しました。

おじさんについていけばすべてうまくいく。そう思えてきたのでした。

少女はおじさんの指示にすべて従い、不幸を売ることを自らの意思で行うようになりました。


そしていつしか、少女はおじさんから自由すら与えられるようになりました。
自由に外に出て、自由に買い物をし、自由に遊び。
そこいらの大人よりよほど贅沢な買い物もできました。

ところがあるひ、少女はおじさんの一言に愕然としました。

「もうお前は自由だ。ここにいなくていい。」

そんなばかな。ここにいてはいけないなんて。
ここにいなくて、いったいどこで何をすれば良いというのか。
おじさんはただただ好きにしていいというだけです。


それがあまりにも怖くて、少女は言いました。
「どうしたらここにいられますか?」

おじさんは言いました。

「もう不幸を売る必要はない。だからお前は自由だ」


少女はもうわけがわからないくらいの怒りと恐怖を感じていました。
これまで散々、いいなりにさせておいて、こちらが従順になったとたんに態度を変える。
今までの仕打ちに対する怒りと、突然の豹変に対する恐怖が少女を襲います。

「なんでもします。なんでもしますから、ここにいさせてください。」

学校にも、社会にも出たことのない少女でも、ここでの生活が、どれだけ豪華で、どれだけ満たされているかがわかります。

少女のそういった恐怖を十分確認したところで、おじさんはニヤリと笑いました。
「体も売るのか?」

これまでしてきたことが、どれだけ他人を苦しめてきたか、その人の顛末を見てきた少女は、あまりにもむごいその一言に絶望しながらも答えました。

「売ります。なんでもします。」

そのとき、少女は知りました。
「誰かが幸福になると、誰かが不幸になる」

これまで自分が不幸を売ることで満たされたのと同様に、ほかの誰かが幸せになるために、自分は体を売るのか。
そのことに妙な納得感を感じながら、少女はおじさんに連れられていきました。

しばらくしたある日、おじさんだけでなく、多くの人々が黒服の男たちに連れられ、屋敷を出て行きます。

「コウアン」と名乗る彼らは、悪い商売をしていた彼らを「タイホ」し、少女を「ホゴ」するといいながら、ある家族の家に彼女を預けました。


その家族とは、彼女に不幸を売らせたおじさんの子供の家族だったのでした。

そして彼女は、自分のために売った不幸の重さを改めて感じるのでした。
しかし慣れとは恐ろしいもので、だんだんと不幸を売ることにも慣れていきました。
少女から不幸を買う度におかしくなる客を見ても、何も感じなくなっていました。

しかし、実際のところ、少女自身の環境も苛酷であったため、
自分自身だけでも精一杯なはず。他人の心配などしている方がおかしいのです。

そして、ある日、おじさんは少女を呼び出し、こういいました。
「今日から違う場所で不幸を売るんだ」

少女にとって、それは既に問題でもなかった。
いや、おじさんなら有無も言わせないだろうと考えていたので、
抵抗することさえ頭にはありませんでした。

しかし、そこで不幸を売り始めてから、少女の環境は激変しました。
豪華な部屋に贅沢な食事。
そして自由。

おじさんは少女の抵抗が無くなったことで、最後のダメ押しに入ったのでした。
「お前がもっと頑張れば、もっといい環境に置いてやる。」

今までとは比較にならないほど満ち足りた環境。
食べる事ができるだけでも幸福。せめて人間らしい心だけは失うまいと
ひたすら耐える日々を過ごしてきた少女にとっては

その満ち足りた日々の方が逆に堪えました。
「おじさんの命令を拒否すれば、またあの生活に戻るのだろう」

それまで、当り前のように過ごしてきた日々だったのに、
急にそれが恐ろしく、まるで地獄のように感じてしまうのでした。

逆に、もっとおじさんに服従すれば、もっと幸せになれるかもしれない。
それが幸せなのかどうか、少女に考える余裕はありませんでした。
「それまでの生活と比べれば、幸せなのは間違いない」
それについては疑う術を持ちませんでした。

続きはまたこんど。おやすみなさい
昔々あるところに

それなりに不幸な少女がいました。

少女はさほど不自由しているわけではないのですが、時々不幸でした。

例えば昨日なんて、鉄板だと思っていた1番人気の馬が落鉄して惨敗。
おかげで2ヵ月分のおこずかいを失いました。

しかしある日、少女にとって、それはそれは重大な不幸が訪れました。



お父さんとお母さんが亡くなったのです。


交通事故でした。少女はおうちでお留守番していたので無事でしたが、
何もかもを失いました。お父さんとお母さんの残してくれたお金は、
親戚のおじさんが親切なふりをしてもっていってしまい、
大好きだったおうちにもくらせなくなってしまいました。

色々な親戚のおうちを点々としていましたが、どこにいても
邪魔者扱いされる少女でしたが、ご飯が食べられること、
寝るところがあることだけでも感謝していました。

おなじおうちに長いこといられなかったため、遂には孤児院へ行くことになりました。
キンダーハイムというやつです。

孤児院では特定の派閥に所属することが面倒だったので
一匹狼を気取っていましたが、それが災いしていじめられました。
それでもごはんが食べられることは幸せでした。

そんなあるひ、少女にも里親が現れました。少女からすべてを奪ったおじさんです。
さすがに少女も平気ではなかったため、受け入れを拒否しました。
それでもおじさんは無理やりマネーぢからで少女を強引に受け入れました。

それからはこの世の地獄のような生活が待っていました。
牢獄のような部屋で、ゴミのような食事。

それは辛い日々でした。

サムデイ 少女に対しておじさんがいいました。
この帽子をかぶってこの粉薬を売ってこいと。
少女が何の薬かを尋ねると、おじさんはニヤリとしながら言いました。

「不幸になる薬だ。お前は不幸を売るんだよ。」

意味が分からなかった少女でしたが、それでも今より良い待遇になるならばと、
おじさんを手伝うことにしました。

駅前の商店街入り口の看板の下で、少女はひたすら不幸を売りました。
買いに来る人の中にはおかしな人が多かったですが、たまに普通に見える人がいました。
凄く優しそうなひともいたので、少女は自分から声をかけて、助けを請いましたが、
おじさんとおなじような事をされたので、すぐ逃げました。

しかし少女は、すぐにおじさんの子飼いのチンピラにつかまって牢獄へと連れ戻されました。
ある程度覚悟をしていた少女でしたが、おじさんからはおとがめなし。
正直ほっとしていましたが、その後の事を考えると奥歯がガタガタしました。

3年後。少女はひたすら不幸を売り続けていました。
ずっと不幸の意味を考ええながら。そして分かりました。
人をダメにする薬なのだと。

その薬を買いに来る人は、みるみるおかしくなるようでした。






ちょっとネタが切れたので続きは今度。