はるかなる楽園 -5ページ目

はるかなる楽園

それは、何処かのもう一つの世界のもう一つの物語たち・・・・。


このあいだ外で長い間、
剪定(せんてい)のチェーンソーの音が長く続いていた。
途切れ途切れに長く。
あまりにうるさいから、つい、外に出て辺りを確認した。
しかし、それらしい場所は見当たらない。

何だったんだろうと忘れかけた頃にそれは発覚した。

道路を一つはさんだ無理矢理建てた分譲マンションの裏側にある、
雑木林が無残に伐採されていた。
切り株が無残に散らばり、
伐採されたどんぐりの木が規則的にまとめられていた。

微かに、
緑の青い匂いがそよいだ。
植物の放つその匂いは人間の感覚を緩やかに解き解すと、
むかし何かの本で読んだ。
しかし、おれの目の当たりにした、それは、木々から流れ落ちた断末魔の残り香だったんだ。

まるはげになった雑木林は以外にも小さかったけれど、
びっしりと木が生えていた事を物語る。

見晴らしはすっきりとしたが、
ものすごく寂しくて悲しい。

昔話で土の中に埋まった木の実には、
土の中に眠る小さな龍がその木の実にとりついて、
地下水を木の実に呼び込むという話を聞いたことがある。
そして木の実は芽吹き、やがてその木に共に育った龍が宿ると聞いた。

木々は切り倒されて、いずれ根っこも掘り返されるだろう。

そんな悲しい出来事があって、
おれはその道を通れなくなった。

雑木林の入り口にはささやかながら毎年、彼岸花を咲かせていた。

あの彼岸花を、もう見れなくなると悲しい。