妄想小説






〜4−2リーパー〜





突如として、レベッカが失踪した


エドガーとアシスタントは

ワルモワ州、SSK本部へ戻る機内で

メンソー州に残ってレベッカを探すデレクと

本部にいるクロードと連絡を取り合い

予定時間通り、飛行機は離陸した



エドガー『……こうなってしまっては

次の依頼捜査は、私とアシスタント数名だけでやります

皆さんは、レベッカの捜索に、全力で専念してください!』


クロード『分かった!

機内のパソコンに資料を送る!

飛行機は1台しかないから、入れ違いで俺もメンソー州へ行く!』


デレク『行くって……

アンタは本部に居なきゃ駄目だろ

知事や国のお偉いさん方にバレたら

面倒事になるぜ?』


クロード『知るか!こんな時に!

そうなったら、こう言ってやる!

うるせぇ!……ってな!』


イソノ『ほぉー!カッコつけましたな……

微力ながら、私も力を尽くしますよ』


エドガー『頼みます!

一つだけ思い当たる事が……

デレクはメンソー州の警察署かFBU支局へ向かってください!

そこで、ある人物を訪ねて……』


デレク『あぁ、分かってる

そう思って、既に向かってるよ

クロードなら、その人と連絡取れるはず!』


クロード『何だ!?思い当たる事って!』


エドガー『……昨日の夜

バーで偶然、レベッカの知り合いと会ったんです

FBU捜査官のレイモンドおじさんです!

その方の所へ行っているなら良いのですが……

そうであって欲しいです……』


イソノ『攫われたり、何かの事件に巻き込まれたりしてない方が良いとは思いますが……

レイモンドおじさんの所へ行くなら

連絡は残すはずですよね?』


デレク『それはそうだが……

今は、それしか手掛かりがない……!

だから……』


クロード『ちょっと待て……

今……、誰と言った?』


エドガー『レイモンドおじさんです……


クロード『……たぶん当たりだ……

それで良かったかは別だけどな……

エドガー!今回の捜査依頼とレベッカの捜索……

両立出来るか?』


エドガー『資料を見てみないと

今はなんとも……』


クロード『そうか……

パソコンに届いたはずだ

直ぐに目を通せ!

それと、デレク!

レベッカは、レイモンドと一緒にいる!

無理やり縛り付けてでも連れ帰れ!』


イソノ『穏やかではありませんね……

何をそんなに焦っているのです?』


険悪な面で、落ち着いて話し出すクロード


クロード『………リーパーだ……』


エドガー『……!

たしか、前にレベッカが持ち出してきた

未解決事件の……』


クロード『リーパーの危険性は

前にも話したよな……

だからと言って

何も捜査を打ち切った訳じゃない

リーパーに対抗出来得る人材を集め

専属チームで今も捜査中だ……

そのチームリーダーがレイモンドだ……!』


デレク『なるほどな……

レベッカの体術の強さを考えれば

攫われた可能性より

そっちの方が、遥かに高い……!』


クロード『レベッカの瞬間記憶力なら

資料を持ち出してきた時

一通り内容を見たんだろう……

もしかしたら、捜査の内容を全部覚えているのかもな、お前達に言えば、俺に報告される……

俺が止めに掛かると分かっていたから

何も言わずに行ったんだ……

昔からの、ずる賢さの悪い癖だ!』


イソノ『しかし……、エドガー以外

レベッカさんは勿論、我々も心身共に強いと自負してますが……

それ程、リーパーとは危険な人物なんですか?』


クロード『……………

今まで、捜査の指揮もやり方も

お前達の好きにさせてたが……

今回は、俺の命令で動け!いいな!』


イソノ『…………了承しました』


クロード『エドガー、依頼内容はどうだ?

やっていけそうか?』


エドガー『えぇ、良く出来た資料のおかげで

6通りの可能性に絞り込めました……

後は、調べて欲しい事の結果次第で

犯人を割り出せます』


クロード『よし!

それなら、ジェシーに調べさせろ!

その方が早い!

こっちに着いたら

そのまま捜査担当の警察署へ、イソノと向え!

それと、デレク……!

レベッカの事を話したの覚えているか?』


デレク『勿論だ……!

悪い方向に行きそうなら

全力で止める!任せてくれ』


クロード『……頼んだぞ!』



皆が緊迫した雰囲気の時

問題の張本人は楽観的だった



メンソー州、事件現場

マンションの一室


レイモンド『もう帰った方がいいって〜

SSKの皆も心配してるよ〜?

今なら、クロードに怒られないで済むかもよ〜?

俺がね……』


乗り込んで来たレベッカをなだめるレイモンド


レベッカ『暫く、おじさんと会ってない間に

強くなったんだよ?

手掛かりが見つかったなら

オッチャンだって、本腰入れて動く!

そしたら、もう事件は解決したも同然!

リーパーを捕まえたくないの?』


レイモンド『そりぁ……、捕まえたいけど……

あ〜〜……!!!クロードに怒られるよ〜〜』


あたふたするレイモンド

そんな姿を初めて見る部下達


幻滅や笑い者にされて

尊厳が失われるかと思いきや

部下達は皆、胸がキュンとしていた



レイモンド『レベッカちゃん?

レベッカちゃん、帰ろうよ?

帰ろ帰ろ、ほら行くよ〜』


レベッカ『フギャーー!!!』


なだめるレイモンドに

飛び掛かる素振りを見せるレベッカ


レイモンド『ひゅっうわ〜〜!!!』


それに驚き、勢い良く後退りするレイモンド


レイモンド『ふぅうわ〜〜……!

ビックリした〜〜!

ダメよ〜!レベッカちゃん

そんないきなりはダメ!』


このやり取りは昔からである


部下A『ボス!

遺体の検査結果から考えるに

今回は、被害者同士の殺し合いだと思われる

このパターンは3回目……

たまたまではなく、リーパーにコントロールされた結果かもしれない……』


レイモンド『そうか……

だが、偶然だろうと意図的だろうと

このパターンに、相手を殺人衝動にさせる

手掛かりがあるはずだ!

この10年程で3件……

失敗事項なのか、リーパーにとっても

被害者同士に殺し合いをさせる事は

かなり難しい工程なのかもしれん!』


部下B『この3件を徹底的に調べましょう!

それと……、もしかして

あの子が、ボスのウザい話に出てくるレベッカちゃんですか?』


部下A『そうそう!

お前も来れば良かったのに

昔話での、ボスのお漏らし事件は傑作だったよ!

しかもあの子、今は噂のSSK捜査官だって

レベッカちゃんと言うより

レベッカ捜査官だな!』


部下B『へぇ〜〜!

あの、やりたい放題出来るSSK!

しかも、ボスのお漏らし事件って何だ!!?

聞かせろ聞かせろ!』


レイモンド『お前等!仕事しろ!!!』


それを横目に、部屋中を払拭するレベッカ

リーパーの手掛かりを探すに夢中だ


それに釣られて、レイモンドも捜査を再開する



レイモンド『っほわ!!!違う!!!

今はレベッカを帰すのが先決だ!!!

お前らも手伝え!

クロードにバレたら大変だ!』


その矢先、レイモンドの携帯が鳴った


レイモンド『……っんげ!!!マジかよ!!!

クロードからだ!

このタイミングでって事は……

やっべーー!!!バレてんのか!!!?

電話出たくねーー!!!

………クソっ!お前ら!

レベッカから目を離すなよ!』


電話に出る為

マンションの外へ向うレイモンド


リーパーとレベッカを接触させない様にしてるのは、クロードとレイモンドだけだった


その事を知らない部下達は

SSK捜査官が介入した事に期待していた

よって、監視ではなく

お手並み拝見の目で見ていた



外へ出たレイモンドは

クロードに怒られていた


レイモンド『わ……分かってるよ……

ゴメンって……

ここに来るなんて思わなかったから…………

………はい、………はい……

今、帰そうと説得してる……

………分かった、デレクが来たら引き渡せばいいんだな……

………あぁ!ちゃんと見張っとくって〜

何かあったら連絡するから〜』


いい歳を重ねたオッサンでも

マジで怒られたらヘコむ


心を落ち着かせ、再度レベッカが居るであろう

現場の部屋へ向うレイモンド


……が、しかし



事件現場の一室


レイモンド『戻ったぞ〜

おーい!レベッカー!どこだー!

クロードにバレてたぞー!

さすがSSKだな〜

デレクが迎えに来るから〜〜!』


部下B『ボス〜〜!!!

凄いですよ!!!凄い事になりましたよ!!!!』


レイモンド『何だよ?

その前に、レベッカはどこだ?』


部下B『それがですね!

現場検証していたレベッカ捜査官が!

何かに気づいた様子で!

確かめる事があるからと

そのまま外へ駆け出しましたー!!!

コレって!リーパーの手掛かりを見つけたって事ですよね!!?

す……!凄いです!

これがSSK捜査官の実力!

調べが終わったら、ボスに連絡するそうです!』


レイモンド『……………な…………?

なんだってーーー!!!!!?』


何かあったら連絡すると

クロードとの通話終了から約5分後に

連絡せねばならぬ

レイモンドの心境は、計りかねない


それから暫くして

事件現場へと到着したデレクは

電話しながら土下座するレイモンドを目撃した


デレク『………?

レイモンド?』


レイモンド『………!

ま……待て……!デレクが来た……』


デレク『レベッカを迎えに来た

どこに居る?』


レイモンド『あ〜〜……、デレク〜……

クロードに話してたとこなんだけど………

レベッカは………、何処かへ行っちゃった……』


デレク『………マジかよ……!心当たりは?』


部下B『おやおや?

もしかして!あなたもSSK捜査官ですか!!?』


デレク『……あぁ、デレクだ

レベッカを迎えに来たんだが……』


部下B『そーですか〜〜!!!あなたも!!!

僕は今!感激してます!!!

この8年間……

行き詰まっていたリーパーの正体を!

数十分!現場を見ただけで

手掛かりを見つけたレベッカ捜査官!

感動で胸がいっぱいです!!!』


部下A『アホか!お前は!

ボスを見てみろ!

あんな情けなくたじろいでるボスを見たら

何か、深刻な事態だと気づかねーのか!?』


デレク『お!昨日の夜、バーで会った……!』


部下A『あぁ、そうだ!

昨日は楽しかったな!

それはそうと……、レベッカ捜査官なんだが

コイツも言ってたが

手掛かりを見つけたらしく

それを調べる為に、勢い良く飛び出しちまった

手掛かりが何なのか、何処へ行くかも告げられて無くてな……

調べが終わったら、ボスに連絡するとだけ……』


デレク『俺にも現場を見せてくれ!』


レイモンド『それなら、ノートパソコンで

ビデオ通話にしよう!

クロード!レベッカの足取りを追う!

追う為には、俺達も

リーパーの手掛かりを見つけるしかない!

お前達のブレーンはエドガーだったよな!?

今は何処に居るんだ!?』


エドガーはまだ、ワルモワ州へ戻る飛行機の中


捜査依頼の事件を担当している捜査官とジェシーとのやり取りの中で、6通りあった可能性を

4通りにまで絞り込んでいた


その只中、現場検証を始めたデレクと

ビデオ通話が繋がり

同時進行で事を進めるエドガー



エドガー『……ジェシー!

被害者の奥さんは

バツ3で、それぞれの種違いの娘さんが三人……

次女のボーイフレンドとも一緒に暮らしていたとあります……

その前の旦那さんの時は、長女のボーイフレンドとも暮らしていた……

どちらのボーイフレンドも、孤児院等の施設に入っていたか調べられますか?』


ジェシー『まって〜……、音速で調べるから〜……

………ビンゴーー!!!二人とも、施設で育ってる!

どちらも、交際が始まった時から

バツ3お母さんが、一時的に引き取ってる!

前のボーイフレンドは、前の旦那さんが事故死した後、長女との交際が破局し、家を出た……』


エドガー『そうですか……、これで

事件のシナリオは、2通りに絞れました……

黒幕はバツ3お母さんです!

担当捜査官さんは、SSKの効力を持って

今すぐ、お母さんを逮捕してください!

事件の全貌と証拠は、今回と前のボーイフレンドの二人が持っています!

そして、デレク……!聞こえますか?

リーパーはこれまで、タロットカード以外の証拠は残していません!

レベッカは、捜査資料を全て記憶していると思われます!

だとすれば、証拠となり得る手掛かりを見つけたのではなく、これまでの被害者同士の共通点を見つけたのかもしれません!

なので、資料と現場を照らし合わせ

その中の共通点を探してください!

私も手伝います!

こっちにも資料を送ってください!』


デレク『……つっても多すぎだ

何か、絞り込めないか?』


レイモンド『それは、こっちでも散々調べた

勤め先や交流、旅行や共通の知り合い……

どれも何も無かった

住んでる建物のオーナーや管理会社もバラバラ

病院や歯医者も……、ペットも居る居ないだ』


皆が焦りはじめていたが


クロード『落ち着け!

ゆっくり考えろ!

レベッカがリーパーに捕まったりしたとしても

奴は直接的な殺しはしない!

先輩が追い詰めた時でさえ、奴は相手を殺人衝動にさせていた!

自分が不利な立場になっても

そこは一貫していた!

先輩がおかしくなったのは、手掛かりを見つけ

リーパーに近づいた日から2日後……

少なくとも、丸一日は時間がある!』


レイモンド『そうか……!そうだな……!

手分けするぞ!

見つけられなかった俺達が現場にいても期待出来ない、現場はSSKに任せて

俺達は警察署へ行き、何時でも動ける様に待機!

補足情報があれば報告だ!』


クロード『分かった!

デレクはプロファイラーとして現場検証!

それと、誰かに撮影を頼みたい!

現場の隅々まで録画を頼む!

引き出しの中や衣服のポケットの中等

ゴミ箱の中まで全部だ!』


部下A『それなら、俺がやりますよ』


クロード『よし、頼んだ!

エドガーは、その録画が届くまでは

依頼捜査に専念しろ!

ひとまず警察署へ行け、リーパーの資料も

アシスタントに持って越させる』


エドガー『……分かりました』



それから一時間後

マルモワ州に着いたエドガーは

イソノと共に警察署へ


飛行機の燃料補給後

クロードはメンソー州へ


撮影を終えた部下Aは、メンソー州の警察署へ


リーパーのプロファイル分析を終えたデレクは

現場から皆に結果を共有した


内容は、40代前半から半ばの男性

生真面目で几帳面

普段は、賢さを保ってはいるが

犯行時は、興奮を抑えきれない衝動的な行動も見せる


そして、殺人を擬似セックスと捉えたシリアルキラーである


遺体から、体液が検出されない点と

犯行時は、興奮している為

ゴムを着けている可能性は低い事から

性器に障害があり

殺人によって、脳内でオーガズムを得ていると推測


リーパーにとって、殺人よりセックスを目的としている為

犯行前は、ターゲットを口説き

前戯も丁寧に慎重になる事

犯行後は、賢者タイムになり

何時もの賢さが戻り、証拠隠滅を几帳面にする


それ故、手掛かりとなる物が見つからないのだ



マルモワ州、警察署


捜査官『それじゃあ、バツ3お母さんが

娘のボーイフレンドに夫を殺害するよう依頼したんですか!?』


エドガー『夫の保険に身寄りの無いボーイフレンド、二件とも犯行後にボーイフレンドとは縁を切っています

偶然にしては出来過ぎですので……

ただし、状況証拠の憶測でしかありませんので

拘束期間内に物的証拠か、ボーイフレンドの証言が無ければ釈放されて、国外に逃げられてしまう可能性があります』


捜査官『そうか!

二度も多額の保険金を手に入れたから

国外逃亡も容易いと……

そこまで読んでいたから

無理やり逮捕させたのか!』


ところが、肝心な証拠とボーイフレンドが見つけられず、捜査は難航した



そして、問題児のレベッカはというと

ある企業会社のビルに来ていた


目をつけた部門の部長に、手掛かりとなる物を調べてもらっていた


部長の名は、ジェイソン·クルーガー


レベッカは、まだ気付いていないが……


彼こそが、リーパーだ……