妄想小説






〜3−1摩天楼〜





とある山道


その崖と崖を結ぶ、高さ100m程の橋

泣き叫ぶ悲鳴が、木霊していた


リクルート幹部『うぅわぁぁぁ〜〜〜!!!!!』


簡易的で、古くなったゴムロープだけで

バンジージャンプさせられているリクルート幹部


数日前に、本家リクルートと分家リクルートの

イザコザで捕まえた、本家の幹部だ


つまり、マーヴィン·ステラの部下である


そして、拷問のように

橋から突き落とし、バンジーさせているのは

レベッカとデレクだ


リクルート幹部『……ハァ!……ハァ!

お前ら頭おかしいんじゃねーか!?

こんな事して問題になるぞ!?』


何言ってんだ?

みたいな顔で、目を合わせるレベッカとデレク


デレク『俺達はSSKだ

特別活動権限で許される

そうじゃなくても

お前が、逃走を企てて、橋から飛び降りました

と、報告すればいいだけ』


レベッカ『それもそうね……

それより、このロープの痛み具合から見て……

あと、2,3回で切れそうだわ』


デレク『ふ〜ん、そうか……』


それと同時に、トン……

と躊躇なく突き落とすデレク


リクルート幹部『うぅわぁぁぁ〜〜〜!!!!』


そして、引き上げられる



リクルート幹部『ま……待て……!

ハァ……!ハァ……!月本国だ!モンゴメリーのダンナは月本国に送って行った!』


デレク『ほ〜〜ん……、何しに?』


リクルート幹部『ハァ……、ハァ……、詳しくは分からねぇ!

……ただ、プンカっていう、バイクも一緒に届けたぐらいしか知らねー!

ハァ……、それが数週間前……

今も月本国に居るかどうか……』


デレク『ふ〜ん、そうか……

じゃあ、マーヴィンなら詳しく知ってるか?

マーヴィンは何処にいる?』


リクルート幹部『……そ、それも知らねぇ……』


レベッカ『あら、そうなの?』


トン、と躊躇なく突き落とす


リクルート幹部『うぅわぁぁぁ〜〜〜!!!!』


そして、引き上げられる


リクルート幹部『おぉぉい!

もうよせ!止めてくれ!

もう、ロープが切れちまう!

知ってる事は全部、話すから……!!!』


ここで、ネタばらしをすると

実は、このゴムロープ

頑丈で、切れることのない新品なのだ


外張りを、古く加工した素材を巻き付けてるだけ

だから、二人とも

躊躇なく突き落としているのだ


それを知らない、リクルート幹部は

ちょっと可哀想だ


リクルート幹部『そもそも俺は、幹部と言っても

新人の教育に箔をつける為のもの!

肩書きだけで、下っ端と変わらないよ!

だから、重要な事は、何も知らされてないんだ!

現在のダンナの行方も、ボスの居場所も

本当に分からないんだ!

知ってたら、今頃、組織に暗殺されてるか襲撃されてる!』


デレク『……だよな〜……

イソノ、状況は?』


無線で連絡をとるデレク


実は、特殊部隊と共に、生い茂る木々に身を隠し

口封じの暗殺部隊が来るのではと

待ち構えていたイソノ


イソノ『問題無しが問題ですな

仮に、撃ち合いになっても、全く動こうとしないであろう、ナマケモノがいるくらいです』


今回、作戦の本命はそっちで、拷問は囮

リクルート幹部から、情報を聞き出すのは

ついでに程度だったが、当てが外れた


近くの山道で、エドガーも様子を見ていた


エドガー『う〜〜ん……

以前より、警戒心が強くなったのか………

リクルート幹部は、特殊部隊さんに監獄まで

お任せして、私達はオフィスに戻りましょう

無いとは思いますが、襲撃にも気をつけて』



それから、何事もなく

リクルート幹部は、監獄へ送られ

SSKオフィスへと戻った



マルモワ州、FBU支局

SSKオフィス


クロード『……そうか、手掛かりは

パンドラが月本国に行ったくらいか……』


エドガー『いえ、それだけではないです

プンカは、上華国にある

都市伝説的な幻のバイクです

それを盗み、月本国に持って行ったとなると

仮説ができました……』


クロード『う〜〜ん………

ダメだ、さっぱり分からん』


エドガー『……噂ですが

まだ、私が月本国に居た頃

ノザワという議員が、その幻のプンカを欲しがってる事を聞いたことあります』


デレク『そういや、月本国は

エドガーの故郷だったな

危険度を下げる為に

今は、偽名でエドガーと名乗ってるんだった』


レベッカ『じゃあ、パンドラは、そのノザワに

プンカをプレゼントして

何かをするつもりかしら?』


エドガー『えぇ、そうですね

……この仮説だと、新たな問題が出てきます

仮説が正しければ、ノザワ氏は

これから、犯罪に手を染めるか、既に染まってる

事になります

しかも、我々SSKの特別活動権限は

あくまでも、カメリア国内での事で……

そもそも、国外での捜査活動は

どの国でも、国際問題になります

唯一、許されてるのは

エンターホールだけです』


ジェシー『ふぅほわ!

皆さん!皆さん!

ノザワさんの事調べたら、すぐに出てきました!

なんと!現在、月本国の総理大臣ですよ!』


クロード『なんてこった……!

ますます、捜査しづらいな』


イソノ『……そうでもありませんよ

私とエドガーのコネを使えば、少しくらい

月本国の警察を動かせる事は出来ます

カメリア国に来る前

エドガーは、月本国で私立探偵をしていて

成り行きで、警察のコンサルタント的な立ち場に居たものなので』


クロード『アテはあるんだな

………よし、エドガーとイソノは月本国へ行け!

人手が要るようなら、数人くらいアシスタントも連れて行っても構わん!

残りは、ここで通常業務だ

今の時期、ここでの仕事を疎かにする訳にはいかんからな!』


レベッカ『……………は?

私達は居残りですか?』


クロード『当たり前だ、俺達は国際警察でもないんだ、そもそもお前……

月本語を話せるのか?』


レベッカ『はぁ〜?

外国語なんて、単語さえ覚えれば何とかなりますよ!

それに、パンドラは国外に逃走したのなら

国際手配になります!

そんな、ブラックリストに載るような重罪人より

下着泥棒を捕まえるのが優先なんですか!?』


クロード『うるさい……!

事件に優先順位なんて無い!

……つーか、お前は

旅行気分で行きたいだけだろ!』


レベッカ『!!!何を〜〜……!!』


デレク『図星か……』


クロード『えぇ〜い!

SSKが立ち上がって、もう半年近くなる!

アルカナイカを除けば、検挙率は100%!

その功績が認められ、マルモワ州たけでなく

国から正式に認められたばっかなんだ!

その証拠に、SSKの本部が建てられる話も来ている!

国外での捜査は認められないから

建前上、月本国には旅行で行く事になる!

そうなれば、国の連中は

俺達が調子に乗ってると思い

本部建設の話は保留になりかねん!

だからこそ下着泥棒なのだ!!』


エドガー『えっ〜と……、えっ〜と……』


また、うろたえるエドガー


デレク『エドガー?

これは喧嘩じゃなく、じゃれ合ってるだけだ』


エドガー『そ……、そうか……』


イソノ『相変わらずの貧弱が……』


レベッカ『エドガー!

相手はパンドラよ!

あなた達二人で立ち打ちできる!!?

この私こそ必要じゃないの!!?』


エドガー『えぇ……?えっ……と……その……』


落ち着く間もなく

急に矛先をむけられたので

なおもオドオドするエドガー


クロード『ええぇぇい!!

もう分かったー!!お前も行ってこいー!!!

もう、お前を止められる自信が無ぇぇ!!!

このままだと

ストライキ起こしてでも行きかねん!!

その代わり、知事への言い訳を考えろ!!

エドガーとイソノだけなら、知人の葬式とかで

収まるが、お前まで行くなら話は別だ!』


レベッカ『はん!!

そんなの簡単じゃない!!!

昔、お世話になった

月本国の警察から、捜査協力を頼まれたって!

そして、私を1人前の捜査官に育てる為

見聞を広め!経験させる為だと!!』


クロード『う〜〜ん!!!

それだー!!!流石のズル賢さ!!!

なら、とっとと行ってこーーい!!!』



というわけで

レベッカ、エドガー、イソノは、アシスタント二人を連れて、いざ!月本国へ!



その道中

飛行機の中で月本語の勉強をしているレベッカ

流行り言葉も載っている事もあり

挟辞苑で勉強した方がよいかと、とイソノにオススメされていた


レベッカ『ねぇ、ねぇ、ちょっとイソノ……!

この、橋と箸と端、文字なら

この漢字……?っていうので区別出来るけど

話してる時は、どう区別するの……!?

意味分からん……!』


イソノ『そうですな……、話の話題や空気感で区別してる……、ってところですかな』


レベッカ『はぁ〜……!!?

なにそれ……!?

頭おかしいんじゃないの……!?

腹立つわ〜……!』


イソノ『おや?流石のレベッカさんでも

難しいですかな?』


レベッカ『ふん……!

単語の意味と文字は覚えたわよ……!

けれど何……!?文脈の並びもデタラメだし

そこ、あそこ、そっち、あっち、向こう、それ、

あれ………、って多すぎ……!

ややこしい……!変態の所業だわ……!』


言葉の意味は覚えたが

使い方に苦戦しているようだ



そして、当の月本国はというと

大変な事態が起こっていた



月本国、首都西京

西京警察本部


警官『佐藤警部!

またしても、犯行予告が届きました!』


佐藤警部『何だと!もう来たのか!

これで3件目だ!

至急!暗号班にまわせ!』


それは、爆弾事件であった

犯人は同一人物

毎回、爆弾予告を暗号文で警察に届け

その後に実行する


分かっているのはそれだけ

肝心の暗号は、未だに解読できずにいた



暗号班『警部!前の2件から解読出来たのは

1箇所だけ……!

そこから解読するに、犯行の日時と時間が分かりました!

明日の18時です!』


佐藤警部『クソっ……!

帰宅ラッシュか……!

場所の解析を急げ!』


警官『……こんな時

……あの人が居てくれれば……』


佐藤警部『……そうだな……

間に合わないかもしれんが

イソノと連絡をとるしかない……!

暗号班以外は、イソノとの連絡手段を探せ!

リミットは、明日の正午!

無理なら、都内全域に避難勧告する!』


一同『了解しました!!!』



しかし

結局、イソノとの連絡は出来ず

翌日、都内に緊急避難勧告が下された


そして、爆弾予告の日時通り

小丸百貨店が爆発された


エドガー達が、月本国に到着したのは

その日の夜だった



西京国際空港


レベッカ『やっと着いた……』


エドガー『くう〜わ!久し〜久し〜!

相変わらずジメジメしてんね!』


レベッカ『ホントね……

体がベタベタするわ……』


イソノ『お疲れの様ですな

迎えの車でホテルに行きましょうか』


翌日、レベッカは後悔した

旅行気分で来たはずが、全く楽しめない事になったのである



翌朝、ホテルのエントランス


レベッカ『月本の朝食って面倒くさいわね!

ナットゥーをかき混ぜるわ〜

ノーリを一枚一枚とって

ライスに巻き付けるわ〜

皿も多いわ〜

寝坊した時、どうすんの!?』


エドガー『言われてみればそうだネ〜!

チョー!メンドー!』


イソノ『車が来ましたよ

警察本部へ行きましょうか』


レベッカ『けれど、協力してくれるかしら?』


エドガー『だーいジョブ!だーいジョブ!

佐藤警部を当たれば、手を貸してくれるっテー』


イソノ『しかし、気掛かりなのは

昨日の避難勧告ですな

テレビは爆発事件のニュースばかりでしたし……』


エドガー『それも行けば分かるさー!

ゴー!ゴー!』


一行は警察本部へ向かった



警察本部


警官『佐藤警部!

川袋の署長が、お会いになりたいと

来ておりますが……』


佐藤警部『狩沢署長が……!?

こんな時に……!!

分かった、すぐ行く!』



喫煙室


佐藤警部『狩沢署長、ご無沙汰しております』


狩沢署長『あぁ、久しぶりだね

すまないね、連絡もなしに、急に来て』


佐藤警部『いえ……

ですが、わざわざ来ていただいたところ

申し訳ないんですが……』


狩沢署長『あぁ、分かっているよ

例の爆弾事件だね、あまり時間を取らせんよ』


この人は狩沢署長、川袋警察署の署長である


狩沢署長『この事件の事で、君に承諾して貰いたい話があるんだ』


佐藤警部『……と言うと……?』


狩沢署長『ある何でも屋……、便利屋とも言われる

男がいるんだ……

その彼を、君達の捜査本部に、協力者として加えて貰いたい』


佐藤警部『……一般市民をですか?』


狩沢署長『一般市民かは、グレーゾーンだがね……

今の川袋は、数年前と比べて

著しく、治安が良くなった事は知ってるね?』


佐藤警部『それは

狩沢署長が赴任したからですよね?

お見事ですよ』


狩沢署長『実は、そうでもない……

その何でも屋の彼のお陰だよ……

彼は特殊でね

人を見抜く力と、感の良さだけで

幾つかの事件や、ならず者を落ち着かせるのに

一役買った人でね

それで、川袋は治安が良くなったと言っても過言じゃないくらいに……

まぁ、何でも屋の商売は、申請してないから

違法なんだけどね

必要悪と言うやつさ……』


佐藤警部『………しかし、機密の塊である

警察本部に、怪しげな人物を入れる訳には……』


狩沢署長『大丈夫、彼は信用に足る男だよ

損は無いはずだ

少なくとも、今回の突破口になるのは

間違い無いよ』


佐藤警部『……はぁ……、そうですか……

その彼は何者です?名前は?』


狩沢署長『謎の多い人物だけど

名前は、ミナト君……

私が重宝してる、良き協力者だよ』







つづく〜