妄想小説






〜2−6沈黙〜





アルカナイカ刑務所


事前に刑務所内を、日頃と違う所が無いか

看守達に細かくチェックさせていたエドガー


物の配置や、囚人達のコミニティ関連

誰と誰が、いつコンタクトを取ったのか、接点が無かった人達が、急に仲良くなった等など


しかし、これと言って何も無かったが

一つだけ変わった事があった

マーヴィンである


今まで、神父様が訪ねてきても、無視していたマーヴィンであったが

モンゴメリーが入所して以来、話をするようになってたのだ


そこで、モンゴメリーの協力者は

神父様と狙いをつけたエドガー


看守長『……まさか、神父様が………

思い過ごしでは………?』


エドガー『確かに、確証はありませんが

それを待っていては、モンゴメリーを止める事は出来ませんので……

違ったら、神父様に土下座します』


看守長『しかし、いくら協力者が居るとは言え、

この刑務所から脱獄なんて不可能ですよ?

実際、このシステム、設備になって80年……

パタスモンキー

一匹たりとも脱走した事無いですし……』


エドガー『気持ちは分かりますが……

この80年間……、モンゴメリーはアルカナイカ刑務所に居なかったので……

世の中に、絶対や完璧は存在しません

今まで脱獄した人がいなかった…、だけです

今年や来年、10年後などに、脱獄成功する人が現れる可能性は、十分にありますから』


看守長『……なんだか、イラッとするが……

言われてみれば……、そうですね……』


エドガーのことを、少し嫌いになりそうな看守長なのであった



一方のクロードはというと

マルモワ州、FBU支局に拘留した長官と会っていた


クロード『どういうつもりだ!!!

極秘なのは分かるが

何故、潜入捜査だと言わなかった!!!?』


長官『いいや……、私は言ったぞ?

手を引けと!

それを無視したのは君だ!

君の落ち度だ!責任は大きいぞ?』


クロード『……俺の責任だと……?

違うな……!捜査協力しなかったのは、アンタの判断ミスだ!


イソノ『……クロード主任

今は、責任の押し付けしてる場合じゃないかと……』


クロード『………そうだな……

緊急事態だ、潜入捜査官との接触方法はどうすればいい!!?』


長官『……はぁ〜……

なんたらかんたら、した後は

〇〇カラオケ館の喫煙所へ行けばいい』


潜入捜査官を保護するため

急ぎ、カラオケ館へ向かった



その車内


長官『いいのか?

私まで連れて行って……』


クロード『それはそうでしょう

俺達は潜入捜査官の顔も名前もまだ知らない

向こうも俺達のことを知らない

貴方が居なければ、ややこしくなりますから』


長官『それもそうだな……

そこだ!そこのカラオケ館だ!』



カラオケ館の個室


無事に潜入捜査官と合流

事の経緯を告げた


潜入捜査官『そんな事が……

しかし、組織からは、まだ何も知らされていません

組織もまだしらないんじゃ……?』


長官『それか、君を疑っていて

泳がせてるか……

これ以上の潜入は危険だ!

ここで手を引こう、君を保護プログラムする

今すぐ、母親と共に出発だ!』


潜入捜査官『……待ってください!

組織が私を疑って泳がせてるなら

きっと情報が欲しいからです

情報を得られるまでは、私の命は、まだ保証されてる……!』


クロード『このまま潜入を続けるつもりか?』


潜入捜査官『そうです!

今まで不明だった

組織のボスに、素顔で面会出来たんです

写真もあります!名前は、ピンカーソン2世!

組織を、親から引き継ぎ

二代目のボスです!

ここまで入り込めた捜査官は居ませんでした!

それに、潜入した時点で、

既に危険と隣り合わせ!

今更、逃げるつもりはありません!』


長官『しかしだな……』


クロード『長官!

それ程、彼は優秀な捜査官ということです!

多少の危険は乗り越えられるはず!

それに、ここからは

SSKが指揮を取ります、責任は私とスティーブ知事が請け負いますから……!』


長官『どうする気だ?

こうなっては、短期決戦だぞ!?

作戦を立てる時間も少ないぞ!?』


クロード『何とかなりますよ

ウチのエドガー捜査官の、頭の良さなら

きっと直ぐにでも、

良い作戦を思いつくでしょう

ひとまず、SSK本部へ行きましょう!』



その頃、

エドガーは、神父への尋問をしていた


アルカナイカ刑務所、尋問室


エドガー『……つまり

脱獄の成功率が一番高いのは、

協力者の手引きです

そして、貴方が一番怪しまれずに動く事ができ

貴方自身が、人質のフリをすることも可能ですし

看守達の信頼も厚い、貴方のお願いなら、看守達も素直に聞き入れ易いですし……

汚名を晴らす為にも、囚人達と何を話したか

正直に話してもらいます

嘘をつけば、神の冒涜にもなりますよ?』


神父『………本来、迷える子羊達の声には

守秘義務があるのですが……

いいでしょう、お答えします……

ですが、その前に……

貴方は神を信じますか?』


エドガー『……………、目視した事の無い存在を

信じるのは難しいですね』


神父『ふふ……、気を使って頂き、感謝しますよ

しかし、気遣いは無用です

何を隠そう、実は

この私自身、神を信じていませんから』


エドガー『………信じていないから

嘘もつけるって事ですか?』


神父『いいえ……

正確に言えば、私が信じるのは

神ではなく、悪魔の方です……』


エドガー『……では、何故、囚人達に懺悔を?

教会に……、神父でいる必要はないのでは?』


神父『……信仰自体は、心を穏やかにする

それだけは事実ですので……

しかし貴方は、なかなか頭の回る人のようだ

しかし、真実を知らない……

神は人々の救済であり、悪魔は厄災をもたらす

それが、一般的に知られている教えですが……

真実は違う!

神が厄災をもたらし!

悪魔が救済なのです!』


エドガー『……………………』


オカルトや、神秘的な事には信じないエドガーではあるが

神父は元からイカれてる、或いは誰かに洗脳されている

洗脳したのはモンゴメリーなのかと

考えを巡らせた

しかし、それと同時に

この手の話しに、初めて興味を持った


神父『考えてみてください

神が人々の救済と言うなら

何故、苦しみや恐怖、哀しみや怒り

悲劇は無くならないのですか?

答えは……、神は何もしないからです!

どんなに祈りを捧げても

銃弾から!刃物から!狂気から!

理不尽な死から!神は護った事がありますか!!?

それどころか、人々の祈りや願いに、耳を傾けた事など、一度たりともありません!!!

祈りで救われた、と言う人もいますが

それは、たまたま運が良かっただけの事

神の加護などではありません……』


エドガー『それじゃあ……

悪魔なら護ってくれると?』


神父『えぇ、その通りです……

正式に、悪魔の儀式を行えば

どんな人の声にも応えてくれます

願いも叶えてくれます……

しかし……、悪魔は、神によって、力を封じられているので、人の魂などを吸収しなければ

力を発揮出来ないのも事実……

それ故、厄災などと勘違いされても致し方無い』


エドガー『なら、悪魔祓いに、神が力を貸すのは何故です?』


神父『……神にとって、悪魔は敵……

そして、人々の信仰を保つ為の体裁を整えてるだけです、人の為ではない!

神自身の為だけです!』


エドガー『なるほど、そうですか

ってことは、神話に出てくる聖戦で

本来、救済となる悪魔の存在は

厄災となる神の存在との戦いに敗れたわけですね

そして、悪魔は、闇に封じられたと』


神父『まさに、その通りです

さらに言えば、今は極一部の地域だけですが

何百年前までは、世界中の至る所で

神の怒りを鎮める為の

生け贄の儀式がありました

しかし、それを続けていれば

信仰は薄れ、失うと考えた神は

あらゆる人の身体を使って、生け贄と云う風習を無くす事に成功し、現代に至っている

という事も、神が厄災である証拠になり得る!!』


エドガー『……とても面白い話です……

その教えは、誰から教わりました?』


神父『勿論……、

ジェームズ·モンゴメリー氏ですよ』


誇らしげな笑みを浮かべた神父


そして

それは、神父がモンゴメリーの協力者である

自白も意味していた


エドガー『そうですか……、

けれど、貴方は、教わっただけで凶悪犯に手を貸す様には見えません

ひょっとすると、モンゴメリーは……』


神父『そうですよ、お察しの通り

あの御方は……、悪魔の申し子なのです!

……救済の為に、この地に現れたのですが

神によって、この鉄檻に閉じ込めらてしまった』


エドガー『だから、救世主となる

モンゴメリーを解放するのが

貴方の使命であると……?』


神父『……ふふ、理解して頂き、感謝します

………それはそうと、貴方の質問にまだ答えていませんでしたね

私は、あの御方に仕えると誓いました

故に、私の、これまでの行いは全て

あの御方に対する忠誠心でやった事……

後悔などではなく、誇りです!』


エドガー『……それは理解しました、認めます……

それで、囚人達とは何を話したのです?』


神父『………情報です

刑務所内外で、あの御方が欲する情報を報告するのが、私に与えられた役目、そして……

手紙の受け渡しもしました……

まずは、マーヴィン·ステラとの架け橋……

この鉄檻から解き放たれる為には

彼の協力も必要だと仰言ったので……

そして、情報の内容は、外で起こっている

リクルートの末路です

実は、看守の中に、とても仲良しにしている人がいて、彼から情報を聞き出し

その後、御二人に私が情報を横流しする

というものです

……あぁ、仲良しの看守の彼には罪はありません

誰にでも、人の役に立ちたいと思う気持ちはあります

その気持ちを、私が利用し、踏みにじっただけですので』


エドガー『そうですか……

ま、その彼の事はいいでしょう

それで?

情報をモンゴメリーとマーヴィンに伝えた時の

一言一句まで、教えて頂けますか?』


神父との会話の中で、脱獄計画の内容、

或いは、何かしらのヒントが得られると

期待していたエドガー


しかし、虚しくも

会話の内容は、リクルートに関する事だけで

ヒントすら得られなかった


エドガー『………参りましたね

貴方だけが、脱獄計画の手掛かりだったのてすが………

けれど、質問を変えます……

情報以外に、手紙の受け渡しもしていたと

言いましたね?

手紙の内容は見ましたか?』


神父『いいえ、あの御方の指示で

決して見てはいけないと、釘を差されましたから

………しかし、そうですね

貴方の言う、脱獄計画は、あの手紙に示されていた事でしょう……』


エドガー『その手紙は、今は何処に?』


神父『……残念ですが

あの手紙の紙は、特殊でして……

トイレットペーパーの様に、水に溶けやすい素材で出来た物ですので……

既に、トイレに流したか、胃に飲み込んだか……

もう、無くなっているでしょうね』


エドガー『なら、手紙は何処で作られ

そして、手紙を書いたのは誰です?

獄中で手紙を書くには、必ず看守が見ています

そんな中で、いくらモンゴメリーでも

隠れて手紙を書くのは無理ですから』


神父『作られた場所は知りません

手紙を書いたのは、あの御方です

数ヶ月前に、教会へお越しになった

あの御方が私に預けたのです

預かった手紙をマーヴィン氏に届けただけです』


エドガー『まだ渡していない、残ってる手紙はありますか?』


神父『全て渡しましたので……』


エドガー『……………そうですか』


手掛かりとなる物が見つけられず

行き詰まってしまった


エドガー『とにかく、機密漏洩、共犯者として

貴方を逮捕します

よろしいですか?』


神父『構いません、私が人間である限り

人間のルールによって裁かれる事に恐怖はありません……

それに、私の役目は終わりましたので……』


と、ここで

クロード達から連絡が来たと、看守に呼び出されるエドガー

一旦、席を外し

看守室へ戻り、潜入捜査官の事について

緊急作戦会議が開かれた



エドガー『状況は分かりました

本部に戻る時に、尾行などはありましたか?』


クロード『それは無いな……

同じ所をグルグル回ったり、青信号で停まったりしたが、問題は無かった』


ジェシー『あのさ、あのさ

青信号で停まったら、何で尾行してるか分かるの?』


長官『普通なら、クラクションを鳴らすが

尾行してる時は、悟られない様

大人しくしたい心理が働く

クラクションを鳴らさない車があれば

それは尾行されてる可能性が高いからだ』


ジェシー『なるほどですね!』


イソノ『それに、尾行の上手い人でも

バレない為に普通を装う事によって

こちらが何もせずとも、相手が勝手に離れてくれる事も、利点ですので』


ジェシー『ホッホー!』


潜入捜査官『これは、一般人でも使えるテクニックだから

ストーカー予防にもなるよ

だからと言って、普段から、そんな運転してたら

ただの迷惑運転になるから

気をつけないとね』


ジェシー『あらぁ、やだ〜〜!

殿方が皆、私に夢中になちゃって……

私って、罪深い女みたい!』


長官『今のは自白と捉えていいんだな?

クロード、逮捕しろ!』


クロード『……堅物さん、これは冗談ですよ?』


長官『………そうか、冗談か………

難しいものだな』


潜入捜査官『……この人、マジで逮捕しようとしたのか……!!?』


長官に冗談は通じない

過去、同僚が冗談で友達に

この泥棒野郎、と言ったら

長官は、その友達に手錠を掛け

トラブルを起こした事例がある


それに似たような事が

複数回あったという



エドガー『では、作戦を練る前に

贋作組織の構造、制度、ルール等

教えて頂けますか?

それと、ボスである

ピンカーソン2世の人物像も知りたいですね』


潜入捜査官『え〜と……

基本は、ボスのワンマン制度

何をするにしても、ボスの判断で動き

命令は絶対的、新人が入る時も

ボスが直々に、覆面で面接……

その際、銃を突きつけられながらの対話

気に入らなければ、その場で射殺されます……

警戒心の塊で、ボスの居場所を知っているのは

幹部の人達だけ、居住に至っては

組織のナンバー2と3しか知りません

ナンバー2のポストは後継者……

家族にしか跡継ぎをしないので

実質、組織で知るのは、ナンバー3、ただ一人になりますね』


エドガー『そうですか、

どうやって、ボスと素顔で面会したのですか?』


潜入捜査官『………私の上司に当たる

組織の幹部の一人が、ヘマをしてしまって……

その穴埋めを、私が収めたところに

ボスのピンカーソン2世が来たんです……

そして、ヘマをした幹部の処分を

私に命令し、それを実行しました……

その後も、食事会に呼ばれた流れです』


エドガー『なるほど、正に命懸けですね……

良く生きていられましたね

それ程、貴方が優秀だと言う事ですね!』


潜入捜査官『我が身可愛さで奔走しているだけですよ……

それから、ボスの人物像は………って

作戦練るのに必要ですか?』


エドガー『私は、相手を罠にハメるとき

相手の性格や思考パターンを知るのが

最も重要だと思っています

生い立ちやトラウマ等もあれば

相手の動きを、より読みやすくなりますから』


ピンカーソン2世の性格、好きな物、嫌いな物

知る限りの情報を話す潜入捜査官


それを聞き終わったエドガーは

暫く黙ったまま考え込んでいた



エドガー『………………………分かりました

幸い、似たような人を知っています』


クロード『本当か!?

それじゃあ………!』


エドガー『えぇ!

作戦が決まりました

ここは、ピンカーソンに潜入捜査官だと

正直に告白しましょう!』


長官『な……!なんだと!!!?』






つづく〜