妄想小説





〜2−5沈黙〜





テレビの報道番組から

臨時ニュースが流れた


フツカヨイ遊園地にある

プール施設で、集団アレルギー騒動が起こった


SSK捜査官達は間に合わなかったのだ


世間では既に、フツカヨイの悲劇と呼ばれていた



アルカナイカ刑務所


看守室でニュースを見ていたエドガー


エドガー『くっ…………!』


相当、悔しいのか、歯を食いしばっていた


そして、リモートが開かれた


レベッカ『……私の判断ミス……

昨日……、様子見しないで、無理やり家宅捜査してれば………』


デレク『まぁ……、俺も寝ていたから

気持ちは分かるが……

そう言うな……

昨日の時点では、何が起こるか、何と関係してるかなんて、誰にも分からなかっただろ?

それに、令状も取る事も出来なかったんだ

レベッカの判断は間違ってないさ


仮眠から目覚めたと同時に

テレビを見ていたデレク


こんな事態に、呑気に寝ていた自分を責めるのは

後回しにする心構えが出来ていたのだ


クロード『まったくだ……!

未だに新人気分か?

俺が、お前に最初に教えた事を覚えてるか?』


レベッカ『全然覚えてないです』


クロード『おい!

……まぁいいや、もう一度教えてやる

俺達や警察もFBUも、始めから負けてるんだよ!

何だかんだと言って、被害者が出た時点で負けなんだ

そして、事件が起きてからじゃないと、動きようがない……

だから、負けからのスタートしか出来ない……

さらに言えば、俺達に勝ちは存在しない!

俺達にとっての最善は、犯人を逮捕し

引き分けにすること……、分かるか?

負けを嘆いてても、犯人は止まらない……!

俺達に、止まることは許されない!

じゃないと、負け犬で終わってしまうからだ!

理想や夢は、通用しない!

今のお前は負け犬になってるぞ?』


厳しい言葉だと思うが、クロードは知っている

レベッカが負けず嫌いなのを


レベッカ『………チッ!

何を偉そうに……!

長官に手錠を掛けておいて良く言えるわね?』


クロード『……な!!!?なぜ知ってるんだ!!!?

………っは!!!イソノ!!!?』


イソノ『犯人逮捕の為、情報の共有です』


クロード『キサマ!!!』


デレク『ははは!

だったらレベッカ、嫌な上司にもっと文句言えるように、息子を逮捕しに行くか!』


レベッカ『えぇ、そうね』


エドガー『いいですね!

その時は、ボロクソにしてやりましょう!』


クロード『………何で、良いこと言った俺が

嫌な奴になってんだ………?』


エドガー『それしゃあ、始めますか……

そうですね……、息子の作った生物兵器は液状の物で、体内に摂取、または、肌に濡らす事でも

皮膚から体内に侵入し感染するもの……

プールの水に流し込めば被害は甚大する

だからこそ、プール施設を選んだのでしょう

……生き残った3名は

特効薬の性能も証明する為

敢えて、息子が助けたはずです

毒と薬はセットじゃないと売れませんから……

ここで引っ掛かるのは場所です

息子の生活圏の近くにもプール施設はあります

実演する場所として、目星はつけていたんですが

実際は、生活圏から、かなり遠く離れた場所のフツカヨイ遊園地……

怪しまれない為とも考えられますが

それでも遠すぎます……

きっと、買い手に好印象を与えるセールス心で

買い手が拠点にしている場所の近くを選んだと思います』


レベッカ『なるほどね……

って事は、その周辺の港を調べれば

リクルートも買い手も息子も見つけられるってわけね!』


エドガー『そうですね

ジェシーは、ここ数日、フツカヨイ遊園地から近い港で、入港した貨物船、あるいは、一般船を調べてください

その中で、まだ出港してない船があるなら

それが、リクルートの船だと思います』


ジェシー『オーケー!オーケー!

5分で調べるわ〜!

5分以内に終わったら、

誰か投げキッスちょうだ〜い!』


デレク『そんな、おねだりしなくても

いつも俺が愛を渡してるだろう?』


ジェシー『う〜〜ん、

やだ〜、ぬれちゃう〜〜!』


エドガー『それと、ヌードル美術館もリクルートと関わりがあると踏んでいます

贋作を運ぶ際に利用してるのだと……

しかし、FBU長官がストップをかけたのが気になりますね……』


クロード『……長官の元部下として、俺から言えるのは……

長官は、堅物で政治的な事にはデリケートだが

決して、犯罪に手を染めない人って事だ』


エドガー『うーん……、政治的………

証拠が出ない限り、長官に尋問するのは

時間の無駄になりかねません

先ずは、監査の方をお願いします』


クロード『あぁ、もう準備は整った

今から向かう!』



クロードとイソノは、ヌードル美術館へ

ワイルドなスピードで車を走らせた



ジェシー『おお!おおー!!!

見つけた!見つけた!

5分以内に見つけたよー!!!!』


レベッカ『はやっ!場所は!!?』


ジェシー『うんとね!うんとね!

クルーザーでパーティーしてた

一般船は日帰りで1隻だけ

三日前に入港した貨物船が4隻あって

3隻は出港済み!

残る1隻が、ミッカヨイ港に停泊中!』


エドガー『やりましたね!

レベッカとデレクは、警察と共に向かってください!』


ジェシー『あ〜〜ん、デレク〜〜?』


デレク『あぁ、流石だな!

愛して……』


レベッカ『ジェシー!!

愛してるわ!!!あなたサイコー!!!!』


ジェシー『は〜〜〜!

思わぬ愛が……、嬉しい……!』


デレク『はは!浮気すんなよ』


レベッカ『現地で合流しましょう!』



そして、読みは的中

ミッカヨイ港で、ギリギリ取り引き中の

息子と買い手を確保した


貨物船で待機していたリクルートのメンバーも逮捕し、大手柄であった


レベッカ『ふ〜ん……

プールで生物兵器を使った様子をビデオカメラで撮ってたのね

あなたが自ら特効薬を注射して、生き残った人達の様子も写ってる……

しかも、ドサクサに紛れて、ついでに盗撮までしてやがった!!!

キモチワルイ!!!』


息子『……………』


悪びれる様子もなく

どうでもいい、と言わんばかりな息子


デレク『大学の教授であり、研究者でもある

アンタが、何故こんな事を?』


息子『ふん……!

真面目に生きてても報われないからだよ!

生徒は私の授業を聞かない

人の為と始めた研究も、早々に見限られた!

それでも、研究費用は自腹でやってきたけど……

相手にもされなかった……

親は、知っての通り、あんな状態……

裕福に生活してる奴らの半分は犯罪者

バカバカしいと思わないか?』


デレク『確かにそうだな

理不尽で世知辛い世の中だよな

俺も真面目に生きるのはバカらしいと思うよ……

俺だって、真面目には生きたくない……

だけど……、

俺は、自分の信念で生きてる!』


息子『……………ふん』


デレク『連れて行ってくれ』


息子と買い手の身柄を警察に任せ

リクルートの身柄はSSKが引き取った



マルモワ州、FBU支局


リクルートの尋問が行われ、新たな事実が浮かび上がった


それを、エドガーに報告するレベッカ


エドガー『息子が予約したリクルートと

爆弾犯が予約したリクルートの関係性は無かったと?』


レベッカ『しかも、リクルートは

正確に言えば、跡目問題で、弱体化ではなくて、分裂していたらしいわ』


エドガー『分裂……、

そうか……、そういう事ですか……!』


レベッカ『何よ?一人だけ分かった顔して!

腹立つから教えなさいよ!』


エドガー『すいません……

パンドラは、最低二人以上で脱獄を考えてます

そのもう一人は、マーヴィン·ステラ

リクルートの元ボスです』


レベッカ『……ん?

でも、リクルートは今や、簡単に逮捕出来そうだけど?

マーヴィンと、新しく組織を作るって事?』


エドガー『いいえ

それなら、わざわざリクルートをどうこうする必要はありません

ほっとくのが一番です……』


レベッカ『それじゃあ………

……わからん!つまり?』


エドガー『つまり、

正式なリクルートの復活です!

しかし、今のリクルートは、跡目争いの末

それぞれが、リクルートの名を使って

ボスと名乗り、小者組織になってしまった、と言いましたね?』


レベッカ『そうか!その小者が邪魔になってるから、私達に排除させてるんだ!』


エドガー『そうです、復活しても

同じ名前の組織がヘマしたら、マーヴィンにも悪影響が出るからです

犯罪組織とはいっても、結局は信用ありきです

その為、組織の名前も簡単に変える事も出来ませんから、マーヴィンにとって、足枷にしかなりません

その手伝いと脱獄、加えて、組織復活の手助けまでしようものなら

マーヴィン……、リクルート側からしたら

パンドラは、大恩ある人物に成り上がるんです

それ故、予約を取らなくても、最優先される事になります

或いは、それが条件で結ばれてるかです』


レベッカ『……あれ?

パンドラがリクルートの一員になる可能性は?』


エドガー『それは無いでしょう……

パンドラは、一匹狼に美学を感じてます

自分以外の者は、価値のある使える道具か、価値の無いガラクタ者か、でしか見てません

利用するだけで、徒党は組まないなずです』


レベッカ『自惚れたクズ野郎ね!

んで、肝心要の脱獄はどうするつもりなの?』


エドガー『………まだ分かりません……

けれど、手掛かりは、幾つかあります

レベッカとデレクは、待機しててください

何かあったら、柔軟に動いてもらいます』


レベッカ『分かったわ』


電話を切り、一息ついたところで

ノートを取り出し、勢いよく何かを書き始めた


デレク『なに書いてんだ?

事件の全貌か?』


レベッカ『フッフッフ……、これよ!!!』


デレク『こ……!これは……!!』


それには、後にクロードへ浴びせる罵声が書いていた


レベッカ『覚悟しなさいよ主任……!』


デレク『……何もする事が無くなった途端にこれか……、順応性が高いと言うか何というか……


この時デレクは、心底レベッカの上司じゃなくて

と安堵し、心の中でクロードを労った



そんなクロードが率いる監査チームに

トラブルが発生した


ヌードル美術館は、FBUに協力していた事が判明

贋作組織の壊滅の為、敢えて、贋作を取り扱っていたのだ


そして、潜入捜査官の命を危険に晒せてしまった



エドガーの方は、脱獄方法を二つに絞り

動きだした







つづく〜