妄想小説




〜街風〜




其の十五




アカミ町、春菜原

喫茶店近くの路地裏


外はすっかり暗くなっていた

ここで熱き想いの男と

頼りない鎧を身に纏う女

未経験者同士の激戦が繰り広げられていた


貞彦『ナナさん!!

僕はナナさんとやりたいんです!!!!!』


炎のブレスが女を襲う!


ナナ『だから!そんなにガツガツされたら、怖いんだって!!』


すかさず盾を構え、炎を防ぐ女

しかし、盾はこの攻撃で焼け崩れ壊れた


貞彦『ナナさんだって、やった事ないなら僕の想いは分かるはずなのに!!

どうして拒むんですかーー!!!!?

この前、僕の卒業式のパートナーになってもいいと、約束したじゃないですかーー!!!!』


鋭い爪の連撃が女に飛び掛かる!


ナナ『貞彦の気持ちは分からなくはないけど!

だからって、すぐに受け入れるなんて出来ないよー!!』


なんとか、剣で攻撃を受けたが、剣はボロボロに刃こぼれし、今にでも折れそうだ


ナナ『確かに約束したけど、それは貞彦がカッコいい男になったらってこと!

今の貞彦はカッコよくないよ〜〜!!』


貞彦『何がカッコよくて、何がカッコ悪いのかが分かんねぇーーって言ってるんですよーー!!!』


剣が折れた


ナナ『う〜〜どうしよう……』


女は迷っていた

諸君らは覚えているか、“HOS“の存在を!

護衛チームを呼べば、この場から逃げ去るのは容易い

しかし、本当はいい子である童貞男に、護衛チームによって、トラウマを植え付けてしまうのではないかと、HHのボタンを押せずにいた


ナナ『……あのね貞彦、別に童貞だからって悪い事じゃないよ?

私も処女だけど、焦ったり、恥ずかしがったり、自分を下げずんだりなんかしてないよ?

私達より年上の未経験者だって、たくさんいるんだから、負け犬みたいに思わないで!!』


貞彦『…………違う……!

………何を言ってるんですか……!!

童貞と処女を一緒にするなぁぁーーーー!!!!!!!!!』


数多の雷が女に降り注ぐ!


女のヨロイは粉々に砕け散り、

とうとう残ったのは、兜と小手のみ!


貞彦『いいですか!!!?

処女はプラチナ付きのプレミアもの!!!!

喉から手が出る程の超高級品!!!

童貞は売れ残りのボロ雑巾!!!!

見るも耐えずに棄てられる粗悪品!!!!

それを同じだと……?

ふざけたことを言うなぁぁーーーー!!!!!!!!!

勘違いするなぁぁーーーー!!!!!!!!!!!』


ナナ『うわーーー!!!!』


兜は消滅してしまった

小手だけで戦わなければ!


それでもHOSは呼ばずに、何とかこの場を凌ごうとする女


すると、


『うへへ……聞いちゃったよ〜、君は処女なんだって〜』


突如現れた気色悪い男


貞彦『誰だテメェ〜〜!!!?』


ナナ『…!!、まずい!!

この変態エナジーは性犯罪の色!!!』


『ぼ、僕も混ぜて三人プレイ〜〜』


前方の童貞!後方の性犯罪!

女の装備は小手のみ!


絶体絶命の中、女は決断した!

今こそ最終兵器“HH“の本領発揮!

HOS要請発信!

いでよ!護衛チーム、黒薔薇の乙女達!!!



護衛チーム詰所


チーム員『HOS要請確認!!

GPS捕捉!!

場所は、ここから北3ブロックの路地裏です!!!』


チームリーダー『近いわね!!走って行った方が速いわ!!

総員出動よ〜〜!!!!』


彼?彼女?らが護衛チームの一角、通称“黒薔薇の乙女“



貞彦『??なんだ?地震か?』



凄まじい地響きで駆け走る乙女!

数十秒で現場に推参!!


乙女達『あらやだ〜〜!!!

ここに、いい男がいるわ〜〜!!!

うっふ〜〜ん、食べちゃおっか〜〜!!!』


黒薔薇の乙女の正体とは、

中年男性のオカマ集団である!!


ナナ『乙女の皆さん!!標的はあの男です!!』


乙女達が一斉に性犯罪男を見つめる


『な、なんだね、この集団は!?』


乙女達『いや〜ん、私好みかも!

いいわね〜、私達で分け合いましょ!』


『ひぃ、ひぃぃ〜〜!!く、来るな〜〜!!!!』


乙女達が一斉に飛び掛かる!


乙女達『チューしちゃう、チューーー!!!

あなただけズルいわ!チューーー!!!

私もベロベロ〜〜〜〜!!!!』


性犯罪男は乙女達に、亀甲縛りで拘束された



『ナナ!平気かしら!?』


ナナ『あ!岩子さん!!』


本名“釜田岩男“(かまた·いわお)

心は女性なので、皆からは“岩子“(いわこ)と呼ばれている

彼…彼女……、この人が護衛チーム、黒薔薇の乙女のリーダーである


ナナ『ありがとうございます!!助かりました!!』


岩子『まったく…、あんたって子は……、

あれ?あの子は?……童貞臭そうね』


突然の出来事に、訳が分からず、へたれこむ貞彦

これも大人の世界の一つなのかと、恐怖で動けないでいる


貞彦の元へ駆け寄る女

少し心配していた、この出来事がトラウマになってしまわないかと


ナナ『貞彦、大丈夫?』


貞彦『……ナナさん、この人達は?』


護衛チームの事、黒薔薇の乙女の事、

オカマであってホモではない事、護衛の為に先程の事をした事、女は丁寧に説明した


説明を聞きながら童貞男は思った

何故、自分は亀甲縛りされてないのか、

何故、自分が攻めてる時に乙女達を呼ばなかったのか、

何故、装備が小手のみになっていても、自分と向き合い、真っ向勝負をしていたのか、

それは、女の思いやりだと気づき、後悔する


貞彦『……ナナさん……、ごめんなさい!!

僕は、また自分のことで……!』


ナナ『うん、そうだね

でも、貞彦はちゃんと分かってるから、

少しずつ、一段一段焦らず大人の階段上がって行こう!』


岩子『………なるほどね、

また、この子の悪い癖が出たのね……、

良い癖でもあるけど、今回は、それが仇にならなきゃいいけど……』


岩子は、この二人の関係性を理解した



このあと、それぞれ無事に帰宅した


岩子は、女の泊まるホテルで説教していた

変態調査は、あくまで対象の日常の外から観察すべきであって、日常の中に入る事は御法度だと



長い四日目が終わった




つづく〜