民主主義は国民主権という虚構によって革命や暴動という社会の破壊リスクを下げ、安定構造をもたらすが壊れるときはある。
ファシズム、ナチス、軍国主義など日本、ドイツ、イタリア、スペインなどそれなりの水準の民主主義が実装されていても破壊的な現象は起こる。
外的圧力、内部圧力、制度の脆弱性の3つの要素で日本のケースを説明してみる。
1.外的圧力 (地政学的緊張、他国の干渉、経済危機)
①地政学的緊張
→夜警国家は不在。安全保障の要求(恐怖)から力のある国は地域覇権国家を目指す。
この時代は帝国主義で安全保障上の恐怖は大きい。
・太平洋を挟んで日本(東アジアの覇権を目指す) VS アメリカ(北米覇権国家)
・日本(東アジアの覇権を目指す)VSソ連(大陸覇権と南下を目指す)
②世界恐慌
→ユースバルジと世界恐慌で大量発生した社会的ポジションを得られない若者
不況で都市部の雇用による人口吸収が不可。若者は農村に留まり農村は困窮。軍拡時に軍隊に入隊(特に陸軍)
③他国からの干渉
→日露戦争における三国干渉、海軍軍縮、満州事変後の国際的批判に対するヘイト、
2.内部圧力 (ユースバルジ、社会分断、抑圧された感情)
①ユースバルジ
→15〜29歳男性が総人口の15〜20%近いと不安定化リスクが上昇するとされる
日本は約14〜15%で中程度のユースバルジ → 世界恐慌で都市就業機会減少 → 若者が農村に滞留農村困窮が政治的不満を増幅 → 満州事変以降、陸軍が拡張し吸収開始 → 陸軍が力を持ち不安定化(血気盛んな若者)
②社会分断
都市部と農村による経済的分断はあったが、天皇制による思想統合は出来ていた。
③抑圧された感情
民主主義は理性的討議を前提にしているところがあるが感情政治が駆動するとそれを吹き飛ばす。
不安定、混乱、不平不満が蓄積していると感情政治が駆動する。
恐怖(安全保障)、怒り・屈辱(他国からの干渉)、経済的不安・不満(世界恐慌とユースバルジ)
3.制度の脆弱性 (日本では軍部による権力掌握)
①民主主義は自動安定装置ではなく、前提条件付き。民主主義が安定化装置として駆動するには
・法の支配と手続きの正当性と実行
・分断を防ぐための中間層、中間団体と少数者保護
・権力分立、分散と監視機構
・自由な言論空間とマスメディアの多様性
・軍の文民統制
等が必要で不安定な混乱期や感情的な局面では、手続き的正当性が無視されることがある。
日本の場合は軍の文民統制と権力分散に脆弱性があった。
②軍が内閣を事実上拒否できる制度的レバー
制度が軍に拒否権を与える構造で、文民統制は混乱時では機能しにくい。
・軍部大臣は現役武官制
・軍は天皇に統帥権で直結
・内閣は軍部大臣を欠くと成立できない
・文民統制を導入するには軍の協力が必要だが協力する理由がない
・天皇の政治的不介入(最終的調停者不在)
③制度上、陸軍も海軍も同じ権限を持っていたが陸軍が権力掌握する構造
地政学的にシーパワー国かつ国際協調よりの海軍がいたが陸軍が権力を掌握する。
・陸軍の方が兵力規模が大きい
・人口が大きい農村・大衆基盤
・大陸問題(ソ連)で主導権を握っていて拡張志向
・陸戦戦力による国内クーデター・暗殺による制圧能力
4まとめ
①外的圧力、内部圧力、制度の脆弱性の3つの要素で民主主義崩壊を説明するとある程度の説得力は持たせられそう。
②外的圧力、内部圧力を制御するのは難しく、制度の脆弱性は制御できるパラメータ。
③軍の文民統制(制度の脆弱性)が実現出来ていれば、崩壊しなかった可能性はあるが現実的に実装できたかどうか懐疑的。
明治維新によって政府が作られたがその設立の経緯は
・薩摩、長州、土佐の下級武士層が、植民地化への防御反応として、武力で内戦起こして、権力奪取して成立
・軍事力こそ国家存立の基礎、中核と認識していただろう
・軍事力で帝国主義、植民地化を推し進めて時代文民統制という概念が希薄
さらに文民統制を導入するには制度改革過程で軍の協力が必要だが協力する理由がない。