http://www.bosai.go.jp/news/press_release/20111031_01.pdf
プレス発表資料
平成23年10月31日
独立行政法人 防災科学技術研究所
房総半島沖で「スロー地震」再来
1.内容:別紙資料による.
2.本件配布先:文部科学記者会,科学記者会,筑波研究学園都市記者会
【連絡先】
独立行政法人防災科学技術研究所
社会防災システム研究領域
アウトリーチ・国際研究推進センター
アウトリーチグループ
佐竹、松宮
電 話::0298637783>029-863-7783
FAX::0298511622>029-851-1622
【内容に関するお問い合わせ】
独立行政法人防災科学技術研究所
地震・火山防災研究ユニット主任研究員
廣瀬仁・木村尚紀
電 話::0298637833>029-863-7833
独立行政法人 防災科学技術研究所(理事長: 岡田義光,以下防災科研) は、房
総半島沖において平均約6年間隔で繰り返してきた「スロー地震」が,これまで
の30年間の観測の中で最も短い約4年間隔で再来したことを明らかにしました.
前回は2007年8月に発生しており,この間,2011年3月11日に東北地方太平洋沖
地震が発生したことから,その影響により発生が早まった可能性も考えられます.
防災科研では気象庁等と協力し、注意深く観測を継続していきます.
2
独立行政法人 防災科学技術研究所(理事長: 岡田義光,以下防災科研) は、房総半島沖に
おいて平均約6年間隔で繰り返してきた「スロー地震」が,これまでの 30年間の観測の中で
最も短い約4年間隔で再来したことを明らかにしました.
前回は 2007年 8月に発生しており,この間,2011年 3月 11日に東北地方太平洋沖地震が
発生したことから,その影響により発生が早まった可能性も考えられます.防災科研では気
象庁等と協力し、注意深く観測を継続していきます.
■背景■
関東地方ではフィリピン海プレートと呼ばれるプレートが,相模トラフより,日本列島の
下に年間約3センチメートルの速度で沈み込んでいます.この沈み込むプレートと,その上
側の陸側プレートの境界は,20km程度の深さまでしっかりと固着しており,プレートの沈み
込みに伴う歪が限界に達すると,固着がはがれ巨大地震が発生します.
防災科研では,1995 年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を契機として,
全国に高感度地震観測網(Hi-net)を整備し 2000 年より運用を開始しました(補足資料※1参
照).Hi-netに併設された高感度加速度計により,2007年 8月に房総半島沖の「スロー地震」
(以下,房総沖スロー地震)による地殻変動がとらえられました.この房総沖スロー地震は沈
み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界が約 1週間かけて 10cm程度ずれ動く現象
で、これ自体は地震波を出さないため地震計で記録されることはありません。しかし前回
(2007年 8月)の房総沖スロー地震に伴って最大マグニチュード 5.3,また最大震度 5弱と
なる地震を含む群発地震活動が発生しており,これらは房総沖スロー地震によって誘発され
ていると考えられます。
防災科研では,これ以前にも,1979年より首都圏および想定東海地震の発生域を対象とし
て高感度地震観測網(関東東海地殻活動観測網※2)の運用をおこなっています. これらの長
年の観測の結果、2007年 8月の房総沖スロー地震と類似した群発地震活動および傾斜変動が
過去 30年間に 5-7年間隔で繰り返し発生してきたことが明らかとなっています(図 1).
房総沖スロー地震はプレート境界に沿って固着域のやや深い側で発生し,固着域と、その
深部で歪の蓄積を伴わずに定常的にずれが進行している領域との間の、遷移的なすべり現象
と考えられています.このことから、その発生が固着域に歪をさらに蓄積すると予想される
ため、巨大地震の準備過程を知る上で鍵となる現象として注目されています。
なお、相模トラフでは 1923 年 9 月 1 日にマグニチュード 7.9 の大正関東地震が発生し,
首都圏を含む関東地方に甚大な被害をもたらしました(図 2).また,ほぼ同じ場所で 1703年
には元禄関東地震が発生したことが知られています.
■成果■
2011年 10月 26日より,房総半島の Hi-net に併設された高感度加速度計により明瞭な傾
斜変動が観測されました.図 3 はその記録を示しており,点線で囲まれた期間で特に明瞭な
3
変動がとらえられています.このようにしてとらえられたデータをもとに震源の場所を推定
したところ,スロー地震は房総半島沖のフィリピン海プレートの上面と調和的な深さで発生
したことが明らかとなりました(図 4左図).2007年 8月(図 4右図)とほぼ同程度の規模のス
ロー地震が発生したことが分かりました.前回からの繰り返し間隔は約 4年(50カ月)とな
ります.
■この成果の意義■
今回約 4 年で房総沖スロー地震が再来したことは,過去 30 年間では最も短い間隔で発生
したことになります.これまでの発生間隔を統計的に見ると、68 ヶ月±16 ヶ月であるため、
通常の間隔の範囲内とも考えられますが、この間,2011 年 3 月 11 日に東北地方太平洋沖地
震が発生していることから,その影響も考えられます.防災科研では観測データを気象庁に
提供するなど関係機関と協力し、今後の推移を注意深く観測していきます.
4
図 1:房総沖の地震の発生時系列.横軸は地震の発震時を,縦軸は地震のマグニチュードを
表す.房総沖スロー地震,繰り返し間隔,および東北地方太平洋沖地震の発生時期をあわせ
て示す.
5
図 2:1923年大正関東地震,1703年元禄関東地震,および房総沖スロー地震の震源域.防災
科研による高感度地震観測点の分布をあわせて示す.
6
図 3:房総半島の観測点による傾斜記録.上方向への変化が北・東下がりの傾斜変動に相当
する.潮汐・気圧成分を除去している.観測点の位置は図 4に示す.点線で示した期間の傾
斜変化ベクトルを図 4に青矢印で示す.同地域での日毎地震発生数・気圧変化および雨量を
あわせて表示する.
7
図 4:推定されたスロー地震の断層モデル.今回のスロー地震を左図に,前回(2007年 8月)
を右図に示す.観測された傾斜変化ベクトル(青矢印),このデータから推定されたスロー地
震の断層モデル(赤矩形・矢印),モデルから計算される傾斜変化ベクトル(白抜き矢印),震
央分布(橙丸)をあわせて示す.今回の解析ではすべり角はプレート相対運動方向に固定して
いる.
8
※1 防災科研 Hi-net 高感度加速度計(傾斜計)による観測
高感度地震観測網(Hi-net)の観測施設は,付図1に示すように様々な計器を備えています.
その中の高感度加速度計は,水平方向の微小な加速度を計測することができる計器で,地震
の波のような比較的速い変化から,地球潮汐のような非常にゆっくりとした地盤の変動もと
らえることができます.ゆっくりとした変化の場合,その記録は地盤の傾きの変化を表すた
め,傾斜計とも呼ばれます.防災科研Hi-net の観測施設では,地面に深さ数 100 メートル
のボーリング孔を掘削し,その孔底に観測計器が設置されています.高感度加速度計は付図
1右下の黄色の部分の内側に位置しています.
[参考URL] http://www.hinet.bosai.go.jp/
※2 防災科研 関東東海観測網
防災科研では関東・東海地域に高感度地震観測網を整備し,1979年より定常運用を開始しま
した.この中には 2000m級の深層観測施設が含まれ,高感度地震計および傾斜計を備え,首
都圏における微小地震の検知能力向上に貢献し,房総スロー地震に伴う地震活動・傾斜変動
が明瞭にとらえられました.関東東海地殻活動観測網は 2003年で運用を終了しましたが,観
測施設は防災科研 Hi-net に引き継がれ観測が継続されています.
http://www.bosai.go.jp/news/press_release/20111031_01.pdf
より転載
プレス発表資料
平成23年10月31日
独立行政法人 防災科学技術研究所
房総半島沖で「スロー地震」再来
1.内容:別紙資料による.
2.本件配布先:文部科学記者会,科学記者会,筑波研究学園都市記者会
【連絡先】
独立行政法人防災科学技術研究所
社会防災システム研究領域
アウトリーチ・国際研究推進センター
アウトリーチグループ
佐竹、松宮
電 話::0298637783>029-863-7783
FAX::0298511622>029-851-1622
【内容に関するお問い合わせ】
独立行政法人防災科学技術研究所
地震・火山防災研究ユニット主任研究員
廣瀬仁・木村尚紀
電 話::0298637833>029-863-7833
独立行政法人 防災科学技術研究所(理事長: 岡田義光,以下防災科研) は、房
総半島沖において平均約6年間隔で繰り返してきた「スロー地震」が,これまで
の30年間の観測の中で最も短い約4年間隔で再来したことを明らかにしました.
前回は2007年8月に発生しており,この間,2011年3月11日に東北地方太平洋沖
地震が発生したことから,その影響により発生が早まった可能性も考えられます.
防災科研では気象庁等と協力し、注意深く観測を継続していきます.
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独立行政法人 防災科学技術研究所(理事長: 岡田義光,以下防災科研) は、房総半島沖に
おいて平均約6年間隔で繰り返してきた「スロー地震」が,これまでの 30年間の観測の中で
最も短い約4年間隔で再来したことを明らかにしました.
前回は 2007年 8月に発生しており,この間,2011年 3月 11日に東北地方太平洋沖地震が
発生したことから,その影響により発生が早まった可能性も考えられます.防災科研では気
象庁等と協力し、注意深く観測を継続していきます.
■背景■
関東地方ではフィリピン海プレートと呼ばれるプレートが,相模トラフより,日本列島の
下に年間約3センチメートルの速度で沈み込んでいます.この沈み込むプレートと,その上
側の陸側プレートの境界は,20km程度の深さまでしっかりと固着しており,プレートの沈み
込みに伴う歪が限界に達すると,固着がはがれ巨大地震が発生します.
防災科研では,1995 年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を契機として,
全国に高感度地震観測網(Hi-net)を整備し 2000 年より運用を開始しました(補足資料※1参
照).Hi-netに併設された高感度加速度計により,2007年 8月に房総半島沖の「スロー地震」
(以下,房総沖スロー地震)による地殻変動がとらえられました.この房総沖スロー地震は沈
み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界が約 1週間かけて 10cm程度ずれ動く現象
で、これ自体は地震波を出さないため地震計で記録されることはありません。しかし前回
(2007年 8月)の房総沖スロー地震に伴って最大マグニチュード 5.3,また最大震度 5弱と
なる地震を含む群発地震活動が発生しており,これらは房総沖スロー地震によって誘発され
ていると考えられます。
防災科研では,これ以前にも,1979年より首都圏および想定東海地震の発生域を対象とし
て高感度地震観測網(関東東海地殻活動観測網※2)の運用をおこなっています. これらの長
年の観測の結果、2007年 8月の房総沖スロー地震と類似した群発地震活動および傾斜変動が
過去 30年間に 5-7年間隔で繰り返し発生してきたことが明らかとなっています(図 1).
房総沖スロー地震はプレート境界に沿って固着域のやや深い側で発生し,固着域と、その
深部で歪の蓄積を伴わずに定常的にずれが進行している領域との間の、遷移的なすべり現象
と考えられています.このことから、その発生が固着域に歪をさらに蓄積すると予想される
ため、巨大地震の準備過程を知る上で鍵となる現象として注目されています。
なお、相模トラフでは 1923 年 9 月 1 日にマグニチュード 7.9 の大正関東地震が発生し,
首都圏を含む関東地方に甚大な被害をもたらしました(図 2).また,ほぼ同じ場所で 1703年
には元禄関東地震が発生したことが知られています.
■成果■
2011年 10月 26日より,房総半島の Hi-net に併設された高感度加速度計により明瞭な傾
斜変動が観測されました.図 3 はその記録を示しており,点線で囲まれた期間で特に明瞭な
3
変動がとらえられています.このようにしてとらえられたデータをもとに震源の場所を推定
したところ,スロー地震は房総半島沖のフィリピン海プレートの上面と調和的な深さで発生
したことが明らかとなりました(図 4左図).2007年 8月(図 4右図)とほぼ同程度の規模のス
ロー地震が発生したことが分かりました.前回からの繰り返し間隔は約 4年(50カ月)とな
ります.
■この成果の意義■
今回約 4 年で房総沖スロー地震が再来したことは,過去 30 年間では最も短い間隔で発生
したことになります.これまでの発生間隔を統計的に見ると、68 ヶ月±16 ヶ月であるため、
通常の間隔の範囲内とも考えられますが、この間,2011 年 3 月 11 日に東北地方太平洋沖地
震が発生していることから,その影響も考えられます.防災科研では観測データを気象庁に
提供するなど関係機関と協力し、今後の推移を注意深く観測していきます.
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図 1:房総沖の地震の発生時系列.横軸は地震の発震時を,縦軸は地震のマグニチュードを
表す.房総沖スロー地震,繰り返し間隔,および東北地方太平洋沖地震の発生時期をあわせ
て示す.
5
図 2:1923年大正関東地震,1703年元禄関東地震,および房総沖スロー地震の震源域.防災
科研による高感度地震観測点の分布をあわせて示す.
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図 3:房総半島の観測点による傾斜記録.上方向への変化が北・東下がりの傾斜変動に相当
する.潮汐・気圧成分を除去している.観測点の位置は図 4に示す.点線で示した期間の傾
斜変化ベクトルを図 4に青矢印で示す.同地域での日毎地震発生数・気圧変化および雨量を
あわせて表示する.
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図 4:推定されたスロー地震の断層モデル.今回のスロー地震を左図に,前回(2007年 8月)
を右図に示す.観測された傾斜変化ベクトル(青矢印),このデータから推定されたスロー地
震の断層モデル(赤矩形・矢印),モデルから計算される傾斜変化ベクトル(白抜き矢印),震
央分布(橙丸)をあわせて示す.今回の解析ではすべり角はプレート相対運動方向に固定して
いる.
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※1 防災科研 Hi-net 高感度加速度計(傾斜計)による観測
高感度地震観測網(Hi-net)の観測施設は,付図1に示すように様々な計器を備えています.
その中の高感度加速度計は,水平方向の微小な加速度を計測することができる計器で,地震
の波のような比較的速い変化から,地球潮汐のような非常にゆっくりとした地盤の変動もと
らえることができます.ゆっくりとした変化の場合,その記録は地盤の傾きの変化を表すた
め,傾斜計とも呼ばれます.防災科研Hi-net の観測施設では,地面に深さ数 100 メートル
のボーリング孔を掘削し,その孔底に観測計器が設置されています.高感度加速度計は付図
1右下の黄色の部分の内側に位置しています.
[参考URL] http://www.hinet.bosai.go.jp/
※2 防災科研 関東東海観測網
防災科研では関東・東海地域に高感度地震観測網を整備し,1979年より定常運用を開始しま
した.この中には 2000m級の深層観測施設が含まれ,高感度地震計および傾斜計を備え,首
都圏における微小地震の検知能力向上に貢献し,房総スロー地震に伴う地震活動・傾斜変動
が明瞭にとらえられました.関東東海地殻活動観測網は 2003年で運用を終了しましたが,観
測施設は防災科研 Hi-net に引き継がれ観測が継続されています.
http://www.bosai.go.jp/news/press_release/20111031_01.pdf
より転載