紀伊半島豪雨、熊野那智大社の神職、ボランティアら、神社の復興に動き出す

産経新聞 9月10日(土)0時15分配信

 台風12号による豪雨は、和歌山県那智勝浦町にある世界遺産・熊野那智大社にも大きな被害をもたらした。古代から天皇や貴族も相次いで熊野詣でに訪れ、信仰を集めてきた那智大社。しかし美しい社には今、大量の土砂が流れ込み、無残な姿をさらしている。「那智大社はこのまちの誇り。必ず復活させてみせる」。水害に傷ついたまちのシンボル復興に向け、神職やボランティアたちが動き始めた。

 大社によると、その起源は、古代にさかのぼる。神武天皇が東征の際、「那智の滝」を神として祭ったとされ、後白河法皇や後鳥羽上皇なども参拝。地元住民からも尊崇を集めてきた。

 だが、3日の豪雨で境内は水に漬かり、大量の土砂が流れ込んだ。朝日芳英宮司(78)は「3日夜から4日未明にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨が降った。境内はまるで川のようだった」と振り返る。

 本殿後方の「第五殿」や「八社殿」の間の裏山が崩れ、土砂は高いところでは約2メートルも積み上がった。同社の別宮で、近くにある飛瀧(ひろう)神社でも、那智の滝にかかる大しめ縄が切断された。また那智川の氾濫で、堤防が決壊。道路も寸断され、食料なども思うように手に入らない「陸の孤島」と化した。

 多くの参拝客が訪れた由緒正しい霊場の面影は、今はない。しかし神職のほか、地元のボランティアたちも集まり、境内や参道から泥を掘り出す作業に取り組み始めている。

 町内の写真館に勤務する大石真美さん(36)も、ボランティアに参加した一人だ。普段は観光客とともに那智大社を訪れ、記念写真を撮影する仕事に携わる大石さん。観光客からは「風光明媚(めいび)な南紀に住めていいね」と声をかけられることもあったという。

 「那智大社があるのが当たり前だったから、変わり果てた眺めを見て、ショックだった。一刻も早く、元の景色を取り戻したい」と話す。

 「那智大社が元通りになり、地元の人々の心の支えとしたい。この社はまちの誇り。必ず、蘇らせてみせる」。那智山の風景に魅せられ、今年4月から神職となった須藤茂成さん(22)はそう話すと、汗を滴らせながら再び泥をかき出した。