自分の心を言葉にできない。


焦る心と頭が分離していく。


孤立していく。


原点に戻ろう。


全てを失っても、家族だけいてくれたら良い。


どこかにおいてきた心を待とう。


 2月の雪は、いつしか3月の雪になっている。


「ああ、そうか、明日から3月か。 


29日。今年はうるう年か。」


毎日、カレンダーを見ているのに、そんなことも気が付かずにいた。


晴れ渡る空のもと、冷たい風が吹く。


それが心地よい。


「心地よいって思う気持ちがまだあるんだね。」


自分で自分を自嘲する。


薪運びをして、焚付を作る。


大した労働ではないが、ずっと家の中にいるより気分が良い。


夕方、法務局で登記完了の連絡を受けた。


なんとも複雑な気持ちだ。


 快晴の如月の最終日、うたを連れて散歩する。


林の中に狐の足跡がつづく。


足跡は時折道路に出てくる。


その匂いを必死に嗅ぐダルメシアンのうた。


うたに引っ張れて、雪道を歩く。


道路の横の雪山の影に無数のキツネの足跡がある。


よく見ると、キツネの寝床らしい。


「昼寝用かな、それとも昨晩の寝床かな。」


そう考えていると、うたがおしっこをかけまくっている。


ありゃりゃ、これでもうキツネはここで寝ないね。


家の近くのタヌキの寝床もいつしか居なくなったな。