つねに問題作を発表し、賛否両論を巻きおこす
ミヒャエル・ハネケ監督の最新作。
現代のブルジョワ家庭にひそむ心理と
情動の暗い裏面を抉(えぐ)っている。
『愛、アムール』には老夫婦の愛情があった。
一方、本作の大家族には愛はおろか
感情の交流もほとんど存在しない。
その人間性を失った虫のような人々の生態を
ハネケは距離を置いて淡々と描きだす。
そこから、黒いユーモアがじわじわと湧いてくる。
その冷たい悪意がいかにもハネケらしい見どころだ。
日本経済新聞(NIKKEI STYLE) 映画コラム
「シネマ万華鏡」 2018.3.2.夕刊より
( 映画評論家 中条省平 )