佐川さんの思い出

 

佐川さんで思い出すのは昔、若い頃、四丁目で床屋を経営していたそうで、父もよく行ったものだそうです。

 

また、不良青年の屯した(たむろした)場所でもありました。

 

わたしが四・五歳のころだったろうと思いますが佐川さんに頭を丸坊主にされ、誰が作ったのか筒袖の絣(かすり)の着物を着せられ黒い兵児帯(へこおび)を示されてすっかり男の子に仕立てられたと母達から笑い話に聞かされたものです。

 

私自身もうっすらと記憶に残っていてやはり恥ずかしかったのか大きな麦わら帽子をかぶってやはり女の子らしいマリ突きをして遊んでいた姿がかすかながら今でも浮かんできます。

 

他人の娘を丸坊主にして喜んでいる佐川さんと父は嘗て(かつて)はそんな中だったのでした。

 

さて二人とも当選したので近い親戚の女の人が

 

「二人とも当選したのでさぞ満足でしょう」

 

と祝いの言葉を述べました。

 

父はうんとうなずいてご機嫌だったとその女の人は私を慰めてくれました。

 

つづく